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「ちょびつき留学英語日記」好評発売中!
未知の世界に飛び込んで、文化的背景の異なる人々と出会い、いつかその人たちのことを書いてみたい——。幼いころからそんな夢を抱いていた著者が、16歳で単身アメリカの高校へ留学。英語がほとんど通じず苦労したり、文化の違いにショックを受けつつも、さまざまな人に助けられながら卒業するまでの3年間をユーモラスにつづった青春記。

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留学日記[大学編]

By Kana Ishiguro / 石黒 加奈

16歳で単身アメリカ留学後、高校を卒業し、コロンビア大学に入学した筆者がトラブル続きの留学生活を振り返る「ちょびつき」留学日記・大学編
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Kana Ishiguro / 石黒 加奈

Vol. 14 : そうだ、マンハッタンへ行こう!

「運命とは、不思議だなぁ」と30歳になって今までの留学生活を振り返って思いました。
ペンシルベニアの高校に入学した年に、大好きなESLの先生のクリスティンが、私たち生徒をVan(ミニバス)でNY見学に連れて行ってくれたときのことです。コロンビア大学がそのときのコースに入っていました。

"Kana, you can major in Comparative Literature either at my college (Princeton) or here at Columbia."
(ねえ、カナ、あなた文学好きだし、私の大学か、ここコロンビアで比較文学を専攻したら、どう?)

そのときは、比較文学ってなにやるんだろうな〜、ぐらいのことしか考えなかった私が、そのコロンビア大学で比較文学を専攻することになったことが、今でも、不思議でたまりません。

ボストンでのひと夏を過ごしたあと、私はNYで俳優をしているTT(ティーティー)という友だちに電話しました。このTTは、父の大学の馬術部の後輩で、私がまだ小学生の頃、高校生だった彼が、父の乗馬クラブに合宿に来ていたときからの古い知り合いです。
父は16歳の娘が、ひとりでアメリカに行くのを、とても心配して、
「なにかあったら、娘を頼むぞ」
と、ことあるごとに、NY在住のTTに、お願いしていました。

お願いされた方のTTは、それ以後、たいへんな迷惑をこうむることになるのですが(爆笑)、まず、その第1弾がこのNYへの引っ越し事件でした。

「ねえ、TT、あたし、NYの大学に行くことにしたのね、それで、マンハッタンの学校全部受験するからさ。それで、今、ボストンなんだけど、すごい荷物なんだよ、だから来週、迎えに来てくれる? うん、そうそう、車で」

と、私に突然呼び出され、しぶしぶ、鬼のような量の荷物を車に積んで、私をボストンからNYの家まで連れて行ってくれました。

マドンナじゃないですが、スターになる人たちは、たいていボストンバッグひとつと数ドルを手にニューヨークにやってくるものですが(笑)、このときの私の荷物の量ときたら!?

NYに着いたものの、マンハッタンのどの大学に行けばいいかをゆっくり検討する余裕もなく、かたっぱしから願書を送り、面接を受けるという日々。

そんなある日、TTが言いました。 「よー、加奈ちゃん、さっきコロンビア大学に電話したんだけどさ、まだ願書受け付けてくれるっていうんだよ。マンハッタンの大学なら、コロンビアがいちばん充実してそうだし、コロンビア受けてみなよ」

いや〜、コロンビア大学で文学を勉強したい気持ちは山々だけど、いくらなんでも、コロンビアはIVリーグ、無理でしょう。 ——―とは、思いましたが、TTは超楽観的タイプで、
「この宇宙の力をすべて集めて、受けてみるんだよ」
とか、意味不明なことを言い出し、私は思い切って願書を出してみることにしました。

それまでにマンハッタンにある相当数の大学で面接を受けていた甲斐があり、コロンビアの面接は、比較的うまくできました。落ち着いて自分のことを話することができたし、ハーバードやボストン大学での勉強の成果もあり、書類審査はまずまずの結果でした。

そして、最後に待っていたのが英語の試験でした。コロンビアは、学部ではTOEFL600点ラインを合格の条件にしていますが、独自の方法で学生の英語力を徹底的にチェックします。

試験の朝、マンハッタンのミッドタウンにあるTTの家から、アップタウンのコロンビアに向かおうとすると、最初はまったく諦めていたコロンビア入学だけれど、ここまで進めたことを思うと、恐怖が心をよぎりました。
"What if I fail…? "
(失敗したらどうしよう?)

TTは、真剣なときだけに見せる、落ち着いた表情で、
「今日は、コロンビアまで行ってやるよ」
と、付き添ってくれました。

手が小刻みに震えるのが分かるほど、緊張と恐怖心の入り混じった気持ちで地下鉄に乗っていた私。116丁目で地下鉄を降り、由緒あるコロンビアの門をくぐって並木道を歩いているときTTが言いました。

「試験に受かっても落ちても、加奈ちゃんという人間の価値は、なにも変わらないんだよ」

30年の人生の中で、あれほど思いやりに溢れた言葉をかけてもらったことは、後にも先にも、なかったと思います。TTのひとことで私の身体の震えは止まり、無心で試験に臨むことができました。

その日の英語の試験は、「今までこんな試験はなかったよ、とほほ」というほど難しかったのですが、文法などの技術的なことのみならず、本物らしき大学の講義が音声で流れて、それをまずノートにメモし、後から、その内容について論文形式で答えるといったような、実践力が問われている試験でした。

その講義の内容が、たまたま自分の関心のあるアメリカの黒人の歴史についてだったので、なんとか論文も書けました。(今でも信じられないのですが)講義はほぼ100%聞き取ることができ、キツネにつつまれたような心境でした。

それで、実際コロンビアから合格の通知をいただいたときは、奇跡だと思いました。もう日本に帰ろうとまで、思っていた自分ですが、
「ああ、また、ここで、1から、やり直そう! もういちど、頑張ってみよう」
という気持ちでいっぱいになりました。

そして、その日から、血は繋がっていないけれど、TTを自分のほんとうの兄だと思って大切にしよう決意しました。そのわりには「恩? いいよ、別に。でもさ、せめて仇だけは返すなよな!」というTTの要望を(?)、100%裏切って、引き続きたいへんご迷惑をおかけてしております。はい。

そう言えば、先週、国際電話をもらった時に、「NYからCOOL(かっこいい)なジョギング用のTシャツ送っちくり〜」と無理に頼んだし。その上、私の血の繋がっているほうの弟が、お友だちとNYに遊びに行ったときには、散々、お寿司奢らされたらしーし。きっと石黒家とは縁切りたがっているよね、TT?(笑)

つづく。

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