「週刊STオンライン」の読者の皆様、新年あけましておめでとうございます。今年も、気張って執筆活動に励みたいと思いますので、また1年、どうぞよろしくお付き合いくださいませ。
先月、名古屋外国語大学に講演会に行ってきました。私は教室で英語を教えたこともありますし、小さな講習会やレクチャーも何度か経験していますが、今回の講演会は、なんと250名のお客さまがいる大型講演会でした。
こんなたくさんの人の前でスピーチをするのは、母校山梨英和学院中等部の100周年記念卒業会で答辞を読んだとき以来です。
この講演会のお話を頂戴したのは、ほぼ半年前のこと。大学で文学を教えるという夢もあったぐらいなので、嬉しくて2つ返事でお受けしました。ところが…です。頂いた資料をよくよく拝見すると、これまでに講師として名前を連ねているのは、「"字幕の中に人生" 戸田奈津子先生(映画字幕翻訳者)」、「"通訳と異文化コミュニケーション" 新崎隆子先生(同時通訳者)」…と超有名な方ばかり。そして、第9回として「"好きなことをもつという鍵、好きなことをするという力" 石黒加奈先生(ライター)と書かれているではないですか!
「きえ〜、こんな立派な先生方の後に講演会なんて、死んだほうがました〜」と自信を喪失する筆者。だいたい、このタイトルからしてヤバそう。
さっそく家族や友達に心の悩みを打ち明けると、
「あら〜、そうなの?立派な先生ばかりだから、1人ぐらいダメな人を選んだんじゃないかしら〜」
なんて、涼しそうな顔をして言ってのける。本来なら反論したいところですが、今回は私も妙に納得して、
「そうだね〜、やっぱ、選ばれた理由は、それしか考えられないよ〜。そうに違いないよ〜。見世物だ〜。動物園のパンダ(目の上のアイシャドーが白すぎると悪名高い逆パンダ状態の筆者)じゃなくて、子豚役だ〜。え〜ん」
と、嘆いておりました。
とくに新崎先生といえば、ジャパンタイムズで「週刊ST講演会」を拝聴したときの深い感動は、今でも心に残っています。
で、「ぜったい無理だ〜」と、しばらくは毎日あがいていたのですが、講演の日は刻々と迫ってきます。仕方なく、「これは、練習するしかない」と腹をくくりました。
いよいよ講演会当日。私の父は名古屋の出身なので、父の幼なじみの方の美容室で髪をセットしてから会場へ向かうことに。ところが、美容師さんの名古屋弁と私の甲州弁で意思疎通が取れず、出来上がった髪は、なんと『ベルサイユのばら』みたいな縦巻きロール。巨大ヘルメットのようなドライヤーからから出てきて、自分の髪を鏡で見て、
「こんな頭では、大学へ行けないよ〜。今どきの若い学生さんにばかにされるよ〜。え〜ん」
というようになっておりました。
「泣きっ面にハチ」状態で大学に到着すると、さっそく学部長さんや担当教授の方を紹介され、ご挨拶しました。担当の教授は、名刺交換をするなり、
「石黒先生。今日、講演会の前にご紹介させていただくので、先生のWEBサイトを拝見させていただきました。そしたら、ますます、先生をどうやって紹介したらいいのか、分からなくなってしまいました」
と、告白されてしまいました。
「そうそう、僕も見たよ、確かにそうだね」
と、学部長。
「今回は、異例ですが、自己紹介でスタートというのはいかがでしょうか?」
私がもし映画かマンガの主人公であったら、椿三十朗か矢吹ジョーのように
「アキチも、自分がわからねぇ…」
と、決め台詞をはく場面なのでしょうが、
「いや、教授!そこをなんとか、お願いします!」
と懇願した筆者なのでした(苦笑)。
一時はどうなることかと思いましたが、私の話を熱心に聞いてくださった学生の皆さんのお陰で、とても素晴らしい講演会になりました。貴重な経験をさせていただきありがとうございました。大学生ってほんとうにいいですね。私も大学に戻りたいと思った1日でした。
つづく
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