私は、読者の一人として、このオンライン・バージョンだけでなく、紙面の週刊STも愛読しています。12月7日号では、伊藤サムさんの『英語人生相談』の新連載やベン・ウッドワードさんの『辞書なしで読む日本の古典』の新シリーズ「源氏物語」を、特に興味深く読みました。
第1回の『英語人生相談』では、「エアロビクスをしながらBGMの歌詞を聞き取れるようになりたい」という英語に関する相談が取り上げられていました。確かに英語のlyrics (歌詞)と言えば、集中して聞いているときでも、しっかり聞き取るのは至難のわざ。分からない単語や表現がたくさん出てくる上に、エアロビクスをしながらだと歌詞ばかりに集中してはいられないし…。
でも、記事の中でサムさんがおっしゃるように、歌詞には、ネイティブでも聞き取れない単語やフレーズがあると思います。初めて聞く日本語の曲のすべてはなかなか聞き取れない、というのと似ています。それに、歌詞というのは詩に近いので、必ずしも正しい英語の文法どおりでなかったりするし、比ゆ的な表現も多いものです。以前は、よく知っている曲の歌詞カードを読んでみると、自分が思っていた内容とまったく違っていた…なんていうこともしばしばありました。
そこで、サムさんはアドバイスの一つとして、「推測して補完する」ということを提案しつつ「英語にたくさん触れれば触れるほど、理解力・推測力は高まります」と記事の中で励ましてくれています。このことは自分の英語学習体験から「確かになぁ」と納得させられたのですが、リスニングにしてもリーディングにしても、量をたくさんこなしていくと、guess (推測)する力が付いてくるものです。
私も、アメリカに留学したてのころ、英語のテキストを読むときや、授業で先生のお話を聞いているとき、a や the の冠詞や主語以外は何一つ理解できず、ほとんど空白の穴埋め問題にチャレンジしているような気分でした(苦笑)。
"I couldn't even begin to guess!" (もう、ぜんぜん推測できない。)
といったところでしょうか?
ところが不思議なことに、毎日英語のシャワーを浴びているうちに少しずつ空白が埋まってきて…。最初は10単語のうち9つぐらいは「?」という状態でも、だんだん分かる単語が増えてきますし、分からない単語が1つか2つになると、だいぶ理解力・推測力がアップしてきて、easy-to-guess (推測しやすい) になってきます。
また「前回この単語が登場してきたのは、こういう場面だったな」と、文脈や会話の流れ、話し手の表情などと一緒に記憶しておくと、さらに効果的です。
ただ、そうはいっても、留学して4年以上も経ったある日、大学付属の語学学校で、先生がTracy Chapman の曲の歌詞を使って穴埋め問題を出してきたときは、ほとんど空白を埋められませんでした。これは、African-American(アフリカ系アメリカ人)独特の発音やスペリングを勉強するための練習だったのですが、突然「民謡」を聞かされたような気分でした。
このように「英語の歌詞」、と一言で言っても、国や地域、人種によっていろいろなアクセントの英語を使うので、突然歌詞を聞かされて、一度で全てを理解せよ、と言われても、そんなに簡単にはいかないでしょう。
さらには日本でもインストラクターによってかける曲が異なるように、アメリカだと地域ごとにもエアロビのクラスでかかる曲が違ってくるようです。マンハッタンのクラスとLAのクラスでは集まる人の音楽のtaste (し好)も異なってくるという理由からです。例えば、それぞれの地域で人気がある曲や、地元出身の歌手の有名な曲を、エアロビクスできるようにアレンジし直したものをかける、といったような工夫がされているというわけです。
先日、ペンシルベニア州からジョージア州に引っ越した、高校のときのルームメイト・エレイナちゃんと電話で話しをしていたら、「このあたりのエアロビのクラスではね、賛美歌をポップ風にアレンジしてかけるのよ。だからJesus(イエス様)とかいう名前が歌詞に出てくるんだから!」とか言っていましたが、いつもexaggerate (大げさにものを言う)する彼女のことなので、本当かどうか…(苦笑)。
いずれにしても、エレイナちゃんのエアロビのクラスでかかる音楽の歌詞も、聞き取るのが難しそうだな、と思ってしまいました。
つづく
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