今回は、京都府にお住まいの宇垣摩結子(うがきまゆこ)さんに登場していただきます。摩結子さんは、小学校五年生の男の子(ゆきのり君・11歳)のお母さんです。
♣ 英語と子どもたち ♣
摩結子さん
まず、「胎教」についてお聞きしたいのですが、お子さんがお腹にいる時、何かやっていましたか。
胎教といえるかどうかわかりませんが、洋楽、邦楽を問わず、好きな音楽をたくさん聴いていましたよ。 「英語の胎教」はやっていませんでしたけれど。
そうですか。では、英語に関して、お子さんが小さいころに何かお家でやっていたことはありますか。
う〜ん、これも特にないです。ただ、私自身、洋楽が大好きなので、車の中ではいつもCDをかけているんです。それに影響されたのか、最近になって「これはなんて読むの?」とか「この発音でいいの?」とか聞いてくるようになりました。発音は大事だと思うので、「LとRは違うよ」などきちんと教えるようにしています。日本語にはない発音があるということや、発音を子どものころから聞き分けるってとても大事だと思うんです。私は大人になってから苦労したので。
お子さんは、英会話教室には通わせていますか。
いいえ、特に通わせていません。勧誘の人はよく来ますので、そういう教室が増えているんだなぁって気はしますけどね。
♣ 英語とわたし ♣
そうですか。ところで、摩結子さんご自身はどのように英語と接してきたのでしょうか。
小学生の頃、英会話教室に通っていました。当時の私は怖いもの知らずで、特に外国の人と遊んだりすることに興味があったようです。それが変わっていったのは、中学生ぐらいのときです。 きちんと話せないと怒られたり直されたりするようになって、少しずついったん頭でまとめてから話すようになったんです。結果、中学二年生ぐらいまで英語はどちらかというと苦手になってしまいました。なんせ学校英語でよく出てくる文法用語 — 定冠詞や疑問詞や一人称や二人称など — の意味が全然理解できなくって。(ありゃー、これは英語どころではない!国語をちゃんと勉強しておけばよかった!)って反省したのを覚えています。
いわゆる文法用語に苦労されたんですね。それで、結局苦手な英語から脱出することはできたんですか?
ええ、苦手どころか、ある日突然好きになってしまいまして。
そうなんですか。きっかけは?
能動態と受動態です。まず、英語では主語の言い換えができることに驚いてしまいました。日本語とこんなに表現方法が違うんだ!っということに、はっと気づいた時から英語の面白さにハマってしまいました。不思議なことに、その瞬間の景色は、今でも鮮明に覚えているんですよ。中学二年生の二月頃で、外は吹雪だったってことまで(笑)。そうですねぇ、好きな科目となってからの英語は、私にとっては「記号」のような存在になりました。当時はやっていた映画を見たり、音楽を聴いたりして、より身近に英語と接するようになりました。
興味深い話ですね。英語を好きになった瞬間の景色や時期まで覚えているとは、なんだか人に恋する瞬間みたいですね(笑)。
そうですね(笑)。
ゆきのり君
話は変わり、京都という土地柄、外国人観光客が多いと思うのですが、どうですか。そういった意味では英語教育も盛んなのでしょうか。
ん〜、どうでしょうか。外国人観光客が多いからといって、彼らに合わせるというよりも、京都弁で通している人もいますし(笑)。特に英語教育が盛んという風には見受けられませんが。
そうですか。なんとなく、盛んなイメージがあったのですが。では、摩結子さんにとって、理想の小学校英語とは何でしょうか。
まずは、日本語をしっかり勉強してもらわないと。それが出来てから英語でしょう。
英語を教えるんであれば、やっぱり最初は読み・書きなしで「耳」で発音の区別がつくように徹底して教えてほしいです。これができないから、大人になってから、わざわざ高いお金を出して英会話を習うわけで。こんな大人たちの二の舞は踏んでほしくないです。
なるほど。先生についてはどうですか?
ネイティブがいいと思います。何よりヒアリングとスピーキングが大事だと思うので。日本人の先生が教えるにしても、ネイティブの先生と「ペア」を組むのであればいいと思いますよ。
そうですか。読み書きせずに、発音から・・・。でもその反面、歌やお遊び中心の小学校英語から中学校に入って、ガラリと変わる机上中心の勉強法に、おそらく英語嫌いの子どもが増えるのでは?という懸念もありますが。
そうでしょうか。逆に自分が話していることばが文字になるということにびっくりして、これは面白い!というふうにプラスに考えられるんじゃないでしょうか。
なるほど。そういう考え方もできるかもしれませんね。
自分が「読み」「書き」から入った英語の勉強をして、「あれはよくなかったなぁー」とつくづく感じているんです。だから子どもたちには、リスニングやスピーキングから入ってほしい。自分たちの間違ったやり方を繰り返してほしくないんです。
あとがき
洋楽が大好きなお母さん。高校時代は、バンドを組んでベースを担当していらっしゃったそうです。そんなお母さんに、息子さんも影響されることでしょうね。(お話をうかがっていると、もうされているみたいですね?) インタヴューの間、何度も「英語は、まずは耳を使って覚えるべき」「自分たちが習ってきた同じ方法では習わせたくない」ということばが聞かれました。自分の苦い経験を、子どもには繰り返させたくないという親心がよく伝わってきました。
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