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『世界の英語教室 (小学校)』
      By Mina Hisada/Illustration by Puri/Photos by Tomoko Sen &Mugdha Yardi


「ムグダ先生へのインタビュー」

前回は、ALTとして活躍しているアラン先生にお話をうかがいました。( こちらをクリック!) ALTというと、アメリカやカナダといったいわゆる英語圏からの先生を思い浮かべがちですが、実は少数ながら、 インドやシンガポールといったアジアの国々からもいらしています。今回は、インドからのALTの選考委員でもあるムグダ先生に インドの英語教育や、先生が受けてきた語学教育についてインタビューをしたいと思います。一クラスの平均人数が60人以上というインドの公立の小学校では、 どんな英語教育が繰り広げられているのでしょうか。また、初等英語教育の歴史が長いインドから 日本の現場の先生へ伝えたいことがあるとしたら、 それはどんなことでしょうか。早速聞いてみましょう。   


小学生の英語
ムグダ先生
■達成感の大切さ

Q: 先生は、小学校のころから英語を習い始めたそうですが、何年生から、どれぐらいの頻度で勉強なさいましたか。また、母語は何語でしょうか?

A: 母語はマラティー語です。英語は小学校一年生からで、週3回ぐらいありました。私が育ったマハラシュート州の公立の小学校で 英語が教科として教えられるようになったのは、実は私が入学した年(1986年)か らなんですよ。既に、学校によっては1983年ごろから教えていたようですが、 全ての小学校で英語を教科として導入するには、10年間ぐらい話し合いが続いたようです。

Q:どんな英語の授業だったんですか?

インドの私立の小学校・校庭
まず言えるのは、達成感のある授業だったということです。ただゲームをしたり  お遊戯をしたりというのではなく、自分が英語で何が言えるようになったとか  書けるようになったとか 子どもなりに「英語でこれが出来る!」 という嬉しさを実感しながら勉強したのを覚えてます。

それから今でも覚えているのは、ディクテーションの友達の回答をチェックしてあげること。 そうすると、相手の出来ばえがわかって、負けず嫌いな気持ちも呼び起こされて(笑) かつ、友達と「共に」勉強してるっていう気になれました。 インドでは一クラスの児童数が多いのですが、その分、先生方もこういった工夫をしてくれていたのだと思います。

Q: ちなみに、一クラス何人ぐらいいたんですか?

A: 65人です。インドの国立の小学校では、これは普通です(笑)。

だから、日本のように英語でゲームっていうわけにはいかないんです。 その代わり、ディクテ−ションをして生徒同士でチェックさせて競争心をかきたてたりとか 先生もよく考えてくださってたなぁって思います。

それと、インドでは、テレビをつけると英語の放送が流れてきます。 どんな貧しい地域にも、テレビが一台はあります。だから、子供のころから英語は耳に入ってくるんです。英語の授業も、そういったテレビなど外から入ってくる英語と関連づけたものだった気がします。

インドでテレビが普及し始めたのは1978年ぐらいからで、 私の家にテレビがきたのも82年のことでした。この70年代終わりから80年代というのは、 最も充実した英語教育だったといわれています。というのも、イギリスの影響がまだ残っており、英語教育に関しても、 小学校から大学まで続いていくことを計算された緻密なシラバス(※)が出来ていたといわれているからです。

※「シラバス」とは、教える総合項目のことです。

Q: 今はどうですか?

教室の壁(ヒンドュー語と英語の詩がある)

A: 時代の流れでしょうか、ちょっと変わってしまいましたね。

Q: そうですか。そのほかに、今のインドの子供たちと先生の小学校時代を比べてみて どんなところが違いますか。

A: 今のインドの子供たちは、大体2歳から3歳ぐらいで英語を始めます。 私が5歳のときに習い始めた内容を、今の2〜3歳の子供たちは既にやっている といった具合です。 (現在のインドの子どもたちに関しては、このコラム下の「関連記事─インドの小学生英語」をご参考に。)

■素朴な疑問

Q:子供の英語を教える上で、大事なことってなんでしょう?

A: いかにストレスを与えないで英語を教えるかっていうのが キーポイントになると思います。例えば、日本の教育の風潮として 、成績をつけたがることが挙げられると思うのですが、成績をつけない英語教育もありではないでしょうか。 それから、英語のまんがを図書館に置いて、一冊読み終わった子には、スタンプを押してあげるとか。 Catch them young(若い頃につかまえて、インプットしろ)という言葉があるのですが、まさにその通りではないでしょうか。 そういう意味でも、私は、日本の小学校で英語を導入することに賛成です。

■日本の大きな問題点

Q:でもね、教える人がいないんですよ。(苦笑)「教員養成」という大きな課題があるんです。

A: そうですよね。でも、それに関しては、色々対策が考えられるんじゃないんですか。 例えば、仕事についていない人たちを再教育して、一時的でもいいから教師にさせるとか。 やる気がない人=フリーターでは決してないと思うんですよ。国は、やる気のある人達には、 いくらでも教育を与えるべきじゃないでしょうか。そういった人的リソースを、日本も考えなければならないと思います。

小学校のイベントの日

Q:ALTは、インドからも派遣しているそうですね?

A: はい、実は私はその選考委員の一人です。

Q:そうなんですか。年間どれぐらいですか?

A: 今年は、50人です。そのうちの一人からは、日本の子ども達は「不安定だ」「子どもたち自身に、やる気がない」 という話を聞きました。また、日本の先生たちは、クラスコントロールをしていくことで、精一杯だそうです。 これは、英語に限らず他の科目でもいえるようです。英語教育以前に、まずはこういったことを解決すべきではないでしょうか。

■発音について

Q:日本人の先生は、自分の発音の悪さを気にしたりして(子どもに発音の悪さを指摘されたらどうしよう) とか(自分の発音がうつったらどうしよう)とマイナスにとらえている面がありますが、それについてはどうですか。

A: 気にしすぎですね。次から次へと影響を受けて、それを吸収していくのが子どもだと思うんです。 私の当時の先生は、決していい発音ではなかったと思うけれど、そんなこと記憶の片隅にもありません。 逆に、大人になってから習う場合は、先生の発音から受ける影響は大きいと思います。それから、先生に関連したことで 言えば、インドでは、先生がとても尊敬されています。 親の言うことよりも、先生の言うことを聞くのが通常です。 例えば、家で親御さんが「○×ちゃん、〜しなさい!」といっても 子どもは「でも、学校の先生はこういったから、先生の言う通りにする!」 という感じです。それぐらい先生は子どもたちから尊敬されているんです。 だから、「先生を馬鹿にする」っていう発想自体があり得ないですね。

カラフルな教室の壁

Q:そうですか。子ども達は先生のことを何て呼ぶんですか。

A: 私が小学校の頃は「バイ(マラティー語で"先生")」と呼んでいました。 今は、「○×(先生のファーストネーム)ティーチャー(※)」と呼んでいます。

※インドでは、名前をファーストネームで呼び合うのが通常です。

■英会話より大切なもの

Q: 日本の現在の英語教育をみていて、思うことはありますか。

A: 日本のキッズ英語は、英会話に力をいれすぎているような気がします。 インドの初等英語教育は、読み・書きが中心です。この訓練をしていると、中学校にあがった頃には、 自然と会話ができるようになっています。実際、友達と英語で会話はしていませんでしたが、しなさいといわれれば、 できたと思います。私は、中学校からは、ヒンドュー語を習いました。大人になった今、例えば北インドの人と会話する時は 、ヒンドューではなく、英語です。やっぱり、小さい頃から習っていたから、お互い自然とそうなってしまう。 ただ、インドの小学校英語が読み書き中心だからといって、日本の小学校もそうすべきだとは思っていません。 それぞれの環境にあった英語教育があると思うからです。日本の強みは、その多様な教材にあると思うので、 それを用いながら、英会話だけでなく、もっとバランスよく四技能(読む・書く・聞く・話す)を身につけていけばいいのではないかと思います。

■インドの英語教育の問題点

Q: では、現在インドで抱えている問題というのはありますか?

A: はい、あります。英語で教育をする学校に通った生徒は、 母語が出来なくて、市役所にいっても「なんで英語だけで用が済ませないの?(※)」と苦情がでたり・・・。 英語は問題ないけれど、母語が出来ないインド人も増えているのです。 これは、新たな社会問題となっています。(これはブータンが抱えている問題ととてもよく似ています。 ブータンについてはこちらをクリック!→ Click here for "Hello from Bhutan")

※インドの国の方針として、市役所などは、すべてその州の母語と、国の公用語である英語で併記することを挙げています。

それから、最近は、英語ですべてを教える私立の学校が増えているんですが 、そういう学校ってステイタスが高くて人気があるんですよね。そうすると、 その学校に生徒が移ってしまって、母語で教育をしている先生達のモティベーションが下がってしまい、 学校の質が低下してしまったりということがあります。

インドの私立の小学校─その2
■英語は遊びじゃ身につかない

Q:日本でも、公立の小学校での英語教育が、あと2年後に始まろうとしています。現場の先生方に何かアドバイスはありますか?

A: 韓国の英語教育も調べたことがあるのですが、 インドと共通しているのは、達成感のある英語教育を子どもの頃からしているということです。 日本は韓国から学べる点が多々あると思います。(韓国英語に関しては こちらをクリック→( Click here for "South Korean kids English") 私は、英語を「遊び」として勉強したことはありません。教科書を見ながら、日々 単語を覚えたり読み書きを通してベースを作りました。 かといって、つまらなかったという記憶もありません。 それは、先にお話したように「達成感」があったからだと思います。これから英語を教える日本の先生には、 そのことをお伝えしたいです。  


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