今回は、神奈川県横浜市にお住まいのRikaさんに登場していただきます。Rikaさんは、小学校3年生と1年生の女の子のお母さんです。ご一家は、数年前にアメリカから帰国し、お子さんたちはいわゆる「帰国子女」です。
♣ 英語と子どもたち ♣
Rikaさんのお宅のリビングです
まず、「胎教」についてお聞きしたいのですが、英語の胎教についてどう思いますか。
英語の胎教って教育ママの走りみたいな響きがしませんか?私は、母親がリラックスして好きな音楽を聞いたりするのが一番だと思ったので、特に英語の胎教はしませんでした。
そうですか。では、英語に関して、お子さんのために何かお家でやっていることはありますか。例えば、英語の絵本の読み聞かせなどをしていますか。
日本に戻ってきた時は、上の娘がまだ小学校1年生だったので、まずは日本語の方が心配でした。向こうには4年ほどいたのですが、帰国する1年ほど前から、現地でひらがなを教えてくれる個人塾を見つけて通わせていました。 現地にいた頃は、英語を外で覚えてきていたので、「それ、日本語ではなんていうの?」とよく聞かれましたよ。例えば、「"ladder"(はしご)は日本語でなんていうの?」っていう感じで。
環境の力って大きいですね。今は、英会話教室などに通わせていますか。
帰国当初は通っていたのですが、週に1時間程度だと維持どころか忘れる一方で、使わないうちに通う目的がなくなってきました。まずは文法が大切だと思うので、某出版社がやっている英語の通信教育をやらせています。発音がよくても文法がきちんと身についてなければだめだと思うので。向こう(アメリカ)に住んでいた時も、いたんですよ、そういう人が。流暢だけれども、文法がめちゃくちゃで、例えば "She don't 〜" で堂々と話したりしてね。間違った文法で話すのは聞いている方も恥ずかしいけれど、書いたらもっと恥ずかしいじゃないですか。そういう英語を娘には身につけてほしくないので、まずは文法を学ばせています。あとは図書館で簡単な英語の本を借りるくらいです。
そうですか。では、お子さんを英会話学校に通わせたいと思いますか。
今の状態では思いませんね。小学校高学年以上の帰国生なら英語の維持もいいと思うのですが、大半の場合、ただ通っているだけになってしまいがちです。特に帰国生でない幼児の場合、英会話学校って雰囲気を味わいに行くようなものじゃないでしょうか。そこには親の自己満足がかなり入っていて、子どもの意志は入っていないと思うんです。だから、英会話学校高価な割には身につかずにもったいないって思ったりもします。
でも、小さい頃の方がいい発音を身につけやすいという声も多いですよね。
うーん。でも、発音がいくら良くても、中身がなくて文法がめちゃくちゃだったらどうでしょうか。発音は「伝えるべきことがあっての発音」ですから。まずは中身のある英語を話すために、きちんと英語の文法を身につけてることが大切だと思います。例えば、英語を母語としない経済界の大物も、とんでもないクセのある英語を話す人はたくさんいますよね。それでも、立派にやっていらっしゃいます。それは、きちんとした中身のある考えを英語で表現できているからだと思います。色々な国の人が話せば、それぞれ英語にアクセントが出てくるのは当たり前だと思うんです。いわゆるスタンダードな発音(日本の場合はアメリカ英語)にこだわるのは、ナンセンスじゃないかと。
♣ 英語とわたし ♣
なるほど。では、Rikaさんご自身は、英語とどのように接してきたのでしょうか。
私は、中学生からです。社会人になってからは、海外出張へ行ったりすることもありましたが、仕事で使う英語って限られているし、特に細かいことを話す必要はなかったので、その当時、それほど英語で困ったということはありませんでした。むしろ、夫の転勤でアメリカで暮らすことになってからの方が苦労しました。よく、「日常会話程度ならできます」って言う人がいますけど、それってたぶん「旅行程度ならできます」の間違いだと思うんです。「日常会話」って日常の事細かなことですよね?それを母語レベルで話せるってことですよね?かなり苦労しないと身につかないレベルだと思いますよ。
♣ 理想の小学校英語教育とは ♣
そうですよね。いつだったか、通訳の方が「一番難しいのは、日常会話だ」っておっしゃっていたのを聞いたことがあります。では、最後の質問になりますが、2011年に小学校でも英語が必須化となりますが、それについてどう思われますか。
そうですねぇ。一つ言えることは、いくら早く習ったとしても、それを使う機会がないんですよね、今の日本の社会だと。「必要性」がないっていうか。そんなことを感じますね。
なるほどね。お話してみて、つくづく英語教育って社会を映し出す鏡なんだということがわかりました。今日は、お忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。
あとがき
いわゆる「発音」にこだわるママたちが多い中、Rikaさんは、しっかりとご自身の考えをお持ちで、それは、移民大国、アメリカで過ごした経験があるからだろうなぁと感じました。そして「話す」ことより「書く」ことがなおざりにされる風潮にある昨今、その逆をいく英語教育は、何か真髄をついている気がしました。
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