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参考資料・英語俳句の作り方

 日本語の俳句にルールがあるように、英語俳句にもルールがあります。ここでは、「高校英語俳句選手権」に投句(作品を応募すること)する上で、表現上注意すべき点、または工夫してほしい点について簡単に紹介します。



  • 文頭であっても大文字は用いず、文末にピリオドを打たない
  • 固有名詞や I 以外は、すべて小文字で表記します。また、文末のピリオドは不要です。

  • 3行で書くこと
  • 日本語俳句は1行で書きますが、英語俳句は3行で書きます。

  • 3行それぞれの音節は2−3−2くらいをめどにすること
  • 日本語俳句は「5文字 7文字 5文字」の計17文字で作られますが、英語俳句ではそれぞれの行の音節の数は「2−3−2」くらいがよいとされます。ゆえに音節の少ない、短い単語を使用するのがよいでしょう。

    (音節とは、母音または母音の前後に子音を伴う、音声のひとまとまりこと。辞書ではpen・cilのように、・や - で区切って示される)

  • 一句の中に切れ字を入れること
  • 切れ字とは、日本語俳句に見られる、感動や詠嘆を表す「かな」や「けり」に相当するもので、英語俳句では行末に ――(ダッシュ)や : (コロン)を置いて感動の余韻を表します

  • できるだけ "I" を使わない
  • 英語俳句では何より客観的な描写がよしとされます。作者が作品の中に登場してしまうと、作品世界の広がりが限定的になってしまうからです。同様に、固有名詞も作品のイメージを限定してしまうため、使用を避けた方が無難です。

  • be 動詞、冠詞、前置詞は省略してよい
  • 表現を簡潔にまとめることになり、作品が散文的になるのを防ぐことができます。

  • 時制は現在形を用いる
  • 英語俳句では、「いま、目の前にある情景」を「一枚の写真で切り取った」ような表現を重視します。ゆえに動詞は未来や過去ではなく、現在形を使います。

  • 正確な文法に必ずしもこだわらなくてよい
  • Dと関連しますが、いわゆる文法にこだわっていては、作品が散文的になってしまいます。文法よりも、名詞を中心にした明確なイメージを持つ1行1行を積み重ねていくことを考慮してください。

  • 季節感を盛り込む
  •  季節感を盛り込むために、「高校英語俳句選手権」では大きなお題として「秋」を挙げています。秋を感じさせる風物を句の中に取り込んでください。

 以上の要点をまとめれば、英語俳句を作る上では、
「文法にあまりこだわらず、いま、目の前にある情景を写真でとらえるように、それぞれが短い3行の英文で描写する」ことが大切なのです。

英語俳句の実例

(週刊ST連載「英語で俳句作りにチャレンジ!」金賞作品より。選評は連載筆者の木内徹先生 )
お題は August (8月)
seagulls
near the pleasure boat
down the river in August
[選評]「カモメが/8月の河をいく/遊覧船のそばに」という句意です。まずたたみかけるような語感がいいと思います。
そして、遊覧船の周りを飛び交うカモメが見えて来ます。動詞や形容詞といった用言を一つも使っていません。名詞と前
置詞だけで、有り余る動きを表現できるという好例です。いま、眼前の景を見たまま、作者の意志や感情は一切語られ
ていません。それでいて、作者の姿が彷彿として見えてきます。これぞ英語俳句。
お題は a morning glory (朝顔)
white moon —
cat's tail touching
a morning glory
[選評]「白い月――/猫の尾が触れる/朝顔」という句意です。切れが見事に効いています。スナップ写真のように一
瞬を的確に捉え、朝顔を際立たせています。これは名句、と膝を打ちました。作者は意図的だと信じますが、white moon
にもcatにも不定冠詞が省略されているところがよく、朝顔には不定冠詞がちゃんとついています。つまり、用言や前置
詞や冠詞など、省略できるものは極限まで省略され、物語るものはかくも多いのです。
お題は a tomato (トマト)
from the crack
in the ripe tomato
an ant creeping out
[選評]「熟したトマトの/割れ目から/蟻が這い出る」という句意です。蟻は夏を表しますが、この場合に季節の言葉が
重なってもほとんど気になりません。完熟したトマトには割れ目ができますが、そこから小さな蟻が這い出てくるところが
目に浮かんでくるような句です。最初に割れ目といって、3行目で蟻が出てきてはっとする、英語俳句という詩型を十分
に生かした見本のような句だと言っていいでしょう。
お題は an electric fan (扇風機)
a black fan
by the gramophone
New Orleans jazz
[選評]「黒い扇風機/蓄音機の横に/ニューオリンズジャズ」という句意です。名詞のみでできていて、歴史を感じさせ
る蓄音機がいいですし、黒い扇風機が黒人のジャズバンドを連想させて、小さな音で「聖者の行進」を奏でるサッチモの
トランペットの音が聞こえてくるようです。それでいて非常に客観性があります。余計なことは何一つ言わず、静止したよ
うな世界観を現出せしめています。fanが扇に解釈される恐れがありますね。
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