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留学日記[高校編]

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Kana Ishiguro / 石黒 加奈

Vol. 16 : 一喜一憂したバレンタインデー

アメリカでは、秋には感謝祭、冬にはクリスマス、春は復活祭と、実に、まあ、いろいろなイベントがあります。

どれも日本とは違ったお祝いの仕方があるので、「ちょびつき筆者」はそのたびに感心させられていたのですが、2月14日のバレンタインデーにも、ふたたび、そういった異質な文化を体験することができました(ちょっと、季節はずれでごめんさない。この日記、時系列に進行しているもので)。

さてバレンタインデーの日、アメリカでは、日本のように好きな男性に女性のほうからチョコレートをあげることはほとんどないようです。

その代わり、どちらかというと好きな女性に男性のほうから赤いバラの花をプレゼントする習慣はあり、また仲良しのお友だち同士がバラを交換しあったりするということもあります。

でも、バラといっても、とくに学生同士の関係だと、ゴージャスな花束なんかではなく、ラッピングのしていないのを1本という程度の、実に質素なものです。

私の通っていた高校では、なんと「バレンタインデー特別委員会」まで設置され、前もって申告して料金を支払っておけば、好きな人や仲のいいお友だちに当日の朝バラを届けてもらえるという仕組みまでありました。

1年目は、寮のお友だちがこの特別委員会について話してくれても、どうもイメージが湧かず、ぼんやりとしか分からなかったのですが、きっと便利でロマンチックなんだろうな〜ということだけは、伝わってきました。

そこで、己を知らない石黒は、

「よっしゃ〜、こりゃいい! 日本のバレンタインデーよりずっといい!」

などとニタニタして、バレンタインデーの前日には、やたら大きな花瓶を調達したり、理由もなく、そわそわして過ごしました。

しかし、バレンタインデーの当日になってみると?

寮でいちばん人気があるレイチェルの部屋の前は、バラの花でいっぱいでドアが開かないくらい。私のドアは、するっとオープン。

おーいっっっ!

「開けゴマ」してないのに、なんでこんな簡単にドア開くの?

"Where is my red rose?"

(あたしのバラはどこ〜?)

前夜、何度もベッドから抜け出して、ドアの外をキョロキョロ(ちょびちょび)見たり、あんなの楽しみにしていたのに、バラの花はどこにも見当たりません。

この日記を読んで同情してくれた会社の同僚が、たとえ来年のバレンタインデーに、オフィスのドアの前にバラを100本置いてくれたとしたって、あのときの心の傷は癒えないよ、きっと。−−と思うほど、がっかりしてしまったのでした(そんな慈悲に溢れる人は、あたりに見当たらないけど)。

ほら、少女の心ってのはデリケートだからね。「大人になってからの傷は心につくけど、子どものときの傷は魂につく」って言うじゃないですか!

これは、子どものころに『シンデレラ』や『白雪姫』を読んだ女の子が誰でも、一度ははまる、人生の落とし穴とも言えましょう。バレンタインの日にバラを持って現れる白馬の王子さまなどは、この世には存在せず、存在するのは、自分の弟と同じような、パンツとズボンを脱いだまんまの状態で部屋の真中に「放置」するような人種なのです! 

いやいや、自分がバラをもらえないからって、男性を責めるのはやめましょうね。ははは。これは、ヤツアタリですね。

そんなこんなで、なんとか元気を出してクラスへ行ってみると、男の子も女の子も、みんなバラを数本バック・パックのカバンに挿していたり、手に持っていたりで、教室は花畑みたいです。

日本で過剰に包装されたチョコレートや花束を見慣れていた私は、微笑ましく思って、この様子を眺めていると、

"Kana, Happy Valentine's Day"

(いいバレンタインデーになるといいね)

いつも親切にしてくれるクラスメートの幾人かが、ニコニコしてバラを手渡してくれました。朝からずっと持っていたからか、ちょっと萎れかかっているのですが、下のほうには小さなリ赤いリボンがついています。

その後、びっくりした顔の私を見て、アメリカ人らしく次々に腰をかがめて私の小さい肩をHug (抱擁)してくれました。

落ち込みも激しいけど立ち直りも速い石黒は、お陰で朝の悲劇をすっかり忘れて元気を回復したものです。

ところが、一難去ってまた一難。

せっかくお友だちからバラをもらったのに、自分のほうはバラを全然用意していません。いつも英語ができないとき、忍耐強く助けてくれるお友だちに、こんなときこそ、お礼をしなければいけないのに、なんというもの知らずで気のきかない私! 一喜一憂しているだけでなく、ちゃんとお友だちへのお礼も考えないとなと、反省をしました。

かくして、アメリカでの初めてのバレンタインデーを、ジェットコースターのような感情の浮き沈みと共に存分に楽しんだ(?)私は、その晩、寮に入っているセントラルヒーティングの暖かさと、前日の睡眠不足のお陰で、心地よい眠りに就いたのでした。窓ぎわに置かれた、大きな花瓶の中には、数本のバラが元気に咲いていました。

つづく。

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