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未知の世界に飛び込んで、文化的背景の異なる人々と出会い、いつかその人たちのことを書いてみたい——。幼いころからそんな夢を抱いていた著者が、16歳で単身アメリカの高校へ留学。英語がほとんど通じず苦労したり、文化の違いにショックを受けつつも、さまざまな人に助けられながら卒業するまでの3年間をユーモラスにつづった青春記。

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留学日記[高校編]

By Kana Ishiguro / 石黒 加奈

16歳で単身アメリカ留学。わからないことだらけのアメリカでの生活を振り返る石黒加奈の「ちょびつき」留学日記・高校編
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Kana Ishiguro / 石黒 加奈

Vol. 18 : ホームシックとカウンセラー

私は、学校や寮で困ったことがあると、よくアドバイザーのアネット先生に相談しました。

相談の内容は、第17回目の日記でお話しした、洗濯機の使い方のような簡単なことから、進路・人生相談にいたるまで、いろいろです。

アネット先生のお部屋は同じ寮の中にあったのですが、キッチンなどもついた落ち着いた空間でした。先生の部屋にお邪魔すると、ジェイン・エアが優しいテンプル先生にお部屋に呼んでもらったような安堵感を感じました。

16歳から19歳になるまで、この寮で過ごしましたが、英語を学びながら、自分の価値観が確立していった時期だったと思います。英語が、だんだん話せるようになるにつれて、それまで知らなかった自分を見出していくようなプロセスでした。

あるいは、この寮で、石黒加奈から、Kana Ishiguro という別の人間が生まれたと言えるかもしれません。

私が留学していたときは、まだ、インターネットが普及していなかったので、コンピュータもオフラインで使う程度で、日本にいる両親とのコミュニケーションの手段は、おもに郵便ぐらいしかありませんでした。国際電話は通話料が高くて、なかなか、かけられなかったからです。

両親は筆まめだったし、私もいろいろな人にお便りを書いていたので、留学当初は、いつも学校中でいちばんお手紙をもらっていました。でも、お父さんから来る葉書の内容が、なんか、だんだん毎回同じ内容になってきて…。

父は、オリンピック選手でしたから、「参加することに意義がある」じゃないですけど、たとえ内容は同じでも「毎日出すことに意義がある」と信じていたようです(苦笑)。

というわけで、英語の分からない日々が続くと、空に飛行機を見るたび、
「あーあ、日本に帰りたいな」
と思うことが多くなりました。

そんな私を見て、それまでにもたくさん留学生を育ててきたアネット先生は、
How are you doing, Kana? Would you like to stop by at my place later?
(どう、元気にしている? よかったら後で、私のお部屋にいらっしゃいよ)
と声をかけてくれました。

部屋に入れてもらって、最近の学校の様子やルーム・メイトのことを話したりするのですが、ときには、英語では自分の言いたいことが思うように言えないことがあまりにみじめで、ポロポロと涙することもありました。

ホームシックなのかと聞かれて、ホームシックではないけれど、なんだか、とても無気力になったりするんだ、と答えると、最後まで静かに耳を傾けてくれたアネット先生は、冷静な調子で、
You sound a bit depressed. I think you'd better see one of our counselors next week. Let me get an appointment for you.
(あなた、軽い鬱の症状になっているようだから、来週、カウンセラーの先生にお話を聞いてもらったほうがいいようね。私が、予約をしてあげるから)
と言いました。

私は、ちょっと気分が沈んでいるだけだと思っていたので、カウンセラーの先生に会わなければいけないと聞いて、逆にびっくりしてしまいました。

私は、重い精神病にかかってしまったのだろうか? とそのショックで元気になってしまいそうなくらいでした(笑)。

当時eメールなんて日本のお友だちがだれも知らなかったように、中学生のときにカウンセラーの先生に相談している子なんて、ひとりもいませんでしたから、これは大事件だと思い、
「あたしは、どうなってしまうんでしょう?」
と恐る恐る尋ねると、アネット先生はちっとも慌てた様子もなく、来週の予約が取れたら知らせるから、とウインクしました。

そして、翌週の火曜日の朝。

私は、Infirmary と呼ばれる学校の診療所で、カウンセラーのマーガレット先生と会いました。すると、ほかの部屋にもカウンセラーの先生が何人か来ているようで、私と同じように授業に出なくてもいいという許可が書かれた紙切れを持った生徒が数人廊下で座っていました。

マーガレット先生は、なんでも思っていることを話してください、とおっしゃったので、私は、自分がアメリカに来てからのことをたどたどしい英語で話しました。先生は、黙ってうなずくほかには、ほとんどなにもコメントせず、最後に家族のことを少し質問されると
"Are you going home this spring?"
(春休みにお家へ帰るのかしら?)
と聞きました。

私は、1年間は日本に帰らないと決めて渡米したので
No, I am not going home.
(家には、帰りません)
と返事しました。
Why aren't you going home? You have 3 weeks off, don't you?
(あら、どうして帰らないの。お休みは、3週間あるでしょう?)
とマーガレット先生。

I am not going home, because I decided not to go home until next summer.
(来年の夏まで帰らないと決めたから、帰らないんです)
Do you miss home?
(おうちへ帰りたくないの?)
I don't miss home, because I decided not to go home until next summer.
(いいえ、来年の夏まで帰らないと決めているので)
そう答えて、私は、はっと思いました。

私は留学すると決めたときに、1年は帰らないと固く決心していました。日本やおうちのことは心の奥に封じ込めて、1日も早く英語ができるようになることだけを考えようとしていたのです。

でも、自分は帰りたいからこそ、逆に帰らないと「決めた」のであって、日本にいる家族や友だちにほんとうに会いたかったのだということに気づきました。

マーガレット先生は、自分がホームシックだということを素直に認めない私に言いました。
You must go home.
(家に帰らなくちゃ、だめよ)
これは、専門の先生がカウンセリングをしたうえでの決定なので、生徒は逆らうことはできません。

カウンセリングを受けた夜、アネット先生が部屋まで来てくれました。どうだったの? と聞かれたので、カウンセラーの先生に、春休みには日本に帰ったほうがいいと言われた、と伝えました。

すると、アネット先生は私の気持ちをすべて見抜いているような眼差しでみつめると、先生がそうおっしゃるのなら、あなたは帰らないとね、と言いました。

その春、日本に一時帰国した私は、とても元気になってアメリカに戻ることができました。

日本の話を次から次にする私を見てアネット先生は、ほんの少し微笑んだように見えました。

今考えてみると、アネット先生は、私の頑固な性格を知っていて、カウンセラーの先生に会うように言ったのだと思います。カウンセラーの先生に家に帰れと言われない限り、私は意地を張って自分がホームシックだと認めないだろうと・・・。

留学中に自分はホームシックだと言える人は、勇気があるなあ〜と、私はよく思うんです。私は、弱虫で、自分はホームシックだと認められませんでしたから。

それから、アネット先生は、私のことをほんとうによく見ていてくれたなぁ〜と。だって、今でも私は、
「留学していて、ホームシックにかかったことは一度もないよ」
なんて、よく人に話しているぐらいですから。

つづく。

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