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未知の世界に飛び込んで、文化的背景の異なる人々と出会い、いつかその人たちのことを書いてみたい——。幼いころからそんな夢を抱いていた著者が、16歳で単身アメリカの高校へ留学。英語がほとんど通じず苦労したり、文化の違いにショックを受けつつも、さまざまな人に助けられながら卒業するまでの3年間をユーモラスにつづった青春記。

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留学日記[高校編]

By Kana Ishiguro / 石黒 加奈

16歳で単身アメリカ留学。わからないことだらけのアメリカでの生活を振り返る石黒加奈の「ちょびつき」留学日記・高校編
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Kana Ishiguro / 石黒 加奈

Vol. 24 : 大学受験

高校3年生になって、いよいよ卒業後の進路について考えなければならないときがやってきました。
ジョージ・スクールでは、最後の1年間は「大学受験のためのアドバイザー」が、生徒1人ひとりに付いてくださることになっています。私の進路指導をしてくださったのは、ペギー先生という白人の女性でした。

1回目の面談でペギー先生は、私の趣味や、得意なこと(あまりなかったんですが)、興味のある教科などについて、細かく質問されて、ノートにまとめてくださいました。

そんなふうに、何度も先生と話しあって、自分に合った大学を見つける作業が進められていきます。このプロセスは、7年間の留学の中で、もっとも素敵で、そしてもっとも難しかったことのひとつでした。

まず、どんなことが、素敵だったかというと、アメリカでの大学受験は、あくまでも通常の高校生活の延長線上にあるものだという点です。それは、アメリカ社会の根底にある価値観と関わってくるのかもしれませんが、「難易度の高い大学」へ進学することより「自分に合った大学」を見つけて、進むことにポイントが絞られているのです。

夏休みを利用して、SATの集中コースを受けるなどをして「受験勉強」をする人もいましたが、全体からみれば、それは、とても稀でした。大学進学率が、ほぼ100パーセントに近い進学校だったのにも、かかわらずです。普段の授業を受けて、勉強をする以外に特別なことをしない、つまり受験勉強というものがないに等しいのです。

アメリカでの大学選びが、こういった傾向にあるもうひとつの理由は、大学側の選考基準も関係していると思います。

例えば、いろいろな大学の願書を見てみると、ほとんどのものが、放課後のスポーツについて、ボランティアの経験について、アートや音楽に携わる活動についてなど、多方面の質問を含んでいます。これは、試験の点数を重視する日本の受験制度しか知らなかった当時の私にとって、衝撃的でした。大事なのは、人としての全体のバランスで、とくに学科の成績だけを取り上げて見るわけではない、という大学側の姿勢が感じられました。

いよいよ、自分も願書を書くという段になったときペギー先生は、私の英語の力を危惧して、ひとつだけ書けば、どの大学にでも提出できる便利な application form (願書のシート)をくださいました。

"Here, you can put that you were captain for the 3rd and 4th hockey team. And say that you were on the varsity lacrosse team, too."
(ほら、ここには、フィールドホッケー、チームのキャプテンだったって書けるわよ。それから、ラクロスのチームでは、1軍でプレーしたじゃない)
と、ペギー先生に指導されるままに、願書をうめていきました。

"Peggy, I don't want to brag about me being captain."
(ペギー先生、でも、あたし、キャプテンだったとか、あまり自慢たらしいことは…)
と、私が、ためらっていると、

"No, no, this is not bragging. Just be honest and say what you have really accomplished."
(これは、自慢するってことじゃないのよ。正直に、自分の成し遂げたことを書くことは大事よ)
とアドバイスしてくれました。

でも、いくら、そう言われても、日本で謙遜を美徳として育った大和撫子(だれ?)としては、どうも、この自分をアピールするというアメリカ文化になじめません。 芸術面の欄になると、
"You can write that you are a pianist. You played in front of the whole school so many times."
(あたなが、ピアニストっていうのも書けるわ。学校中の前で何度も弾いたし) いや〜、私の感覚では、ピアニストっていうのは、中村紘子さんみたいな人を想像してまうんですが…と、またまたためらいがちな私。

ペギー先生は"accomplishment"と、言うけれど、オリンピックでメダルでも取れば、 「自分で自分を褒めてあげたくなる」のかもしれませんが、アメリカの大学へ行くことを決心した理由を書く欄には、「高校生の3年間で英語力があまりに伸びなかったから」なんて正直に書きそうになってしまうぐらいの気分でした。

けれども後から出来上がった願書を眺めてみると、アドバイザーのアネット先生に泣きついてフィールドホッケーやラクロスを習ったこと、「はめられた!」と思いながらもアセンブリでピアノを弾いたことなどが、ずらっと並んでいて、指導くださった先生方が、私の大学進学のことまで考えていてくれたことがよく分かりました。

しかし、この時点で、私はもっとも難しい決断をしなければなりませんでした。

ペギー先生と何度も話しあって、大学に求めるものを割り出していったのですが、当時の私は自分自身のことについて理解が乏しく、自分がほんとうはどうしたいのか、とか、自分の可能性はどこにあるのかなど、分からないことだらけでした。

そんな悩みをルームメイトのエレイナにすると
「ほんとうに自分がやりたいことを知ろうとするとき、恐怖心や、怠けグセが邪魔をするときだってあるんだよ」とアドバイスしてくれたり、
"Kana, let's say, you can be anything you want, and money weren't an issue. Now think hard and tell me what you want to be!"
(それじゃあ、もし、なんの努力もしなくてよくて、お金もいくらでも持っているとしたら、何になりたいの?)
と、一緒に将来について考えてくれたものです。

でも広いアメリカ、東西南北、どの大学を受けるかを絞るだけでも、何日もかかってしまいました。ニューヨーク州にするのか、カリフォルニア州がいいのか、このままペンシルバニア州に残りたいのか、などといった具合です。

こうした紆余曲折のあと、94年の9月から大学生活を始めるのですが、そのお話は、またいつか、別の場所でお聞かせできるチャンスがあれば…と思っています。

つづく。

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