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「ちょびつき留学英語日記」好評発売中!
未知の世界に飛び込んで、文化的背景の異なる人々と出会い、いつかその人たちのことを書いてみたい——。幼いころからそんな夢を抱いていた著者が、16歳で単身アメリカの高校へ留学。英語がほとんど通じず苦労したり、文化の違いにショックを受けつつも、さまざまな人に助けられながら卒業するまでの3年間をユーモラスにつづった青春記。

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留学日記[大学編]

By Kana Ishiguro / 石黒 加奈

16歳で単身アメリカ留学後、高校を卒業し、コロンビア大学に入学した筆者がトラブル続きの留学生活を振り返る「ちょびつき」留学日記・大学編
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Kana Ishiguro / 石黒 加奈

Vol. 12 : 「鏡のもっと奥」

NJのいなか(middle of nowhere)から、ボストンのような都会に出てきた私は、目に映るもの何もかもが美しく、楽しく感じられ、ウキウキした生活を送っていました。 そんな中で、嬉しかったことのひとつは、アジア人の髪でも上手に切ってくれる美容院がたくさんあったことです。

高校時代に、モールで髪を切ってすごいことになってしまったことがありましたが(苦笑)、やはり、アジア人の髪質と白人の髪質は、かなり異なっているため、白人の髪を切りなれている美容師さんには、アジア人の髪を切るのは、どうも難しいようです・・・。

けれども、ボストンのような都会になると、私のようなアジア人もたくさん住んでいるので、そういった客相手の美容院もたくさんありました。

そこで、私は、高校時代の日本人の先輩に紹介されて、ボストン市内にある、キレイな美容院に行くことに!

"Hey, my name is Michael."
(今日、担当させていただくマイケルです)
と、挨拶されたのは、髪が黒く真っ白の歯をした台湾出身の美容師さんでした。いつ見ても、シャワーから出てきたばかりのような小ざっぱりしたかっこうをしています。

"How would you like your hair today?"
(今日は、どうなさいますか?)
と、丁寧な口調で尋ね、髪を触りながら、真剣な目で鏡を見ています。

"Well, you know, it looks such a mess… I want to dye it light brown…maybe perm it, too, loosely…?"
(ボサボサだし、あと、明るい茶色にしたいし、えっとそれから、ボディー・パーマもしたいたいし)
と、とりとめのなくリクエストするちょびつき筆者。

美容師マイケルは、おだやかな受けこたえとは、ミスマッチなぐらい素早い手作業で、どんどん私の髪型を進化(?)させていきます。

最後には、びっくりするぐらい、おしゃれに仕上げてくれて、
"Hair salons are the best places in the whole wide world."
(美容院って、世界でいちばんステキな所よね)
と、私は超ご機嫌に。

でも、数日すると、また別の髪型にしたくなるという、昔からの病的な習性が頭をもたげ、また、美容院へ。

そうしているうちに、たった3ヵ月ほどのボストン滞在の間、髪の色は、赤茶色から金まで、ストレートの次はパーマ、ワンレン、シャギー・・・と、ありとあらゆる髪型にトライしました。

そうやって何度も、美容院に行く間、自分の話はいっぱいしたのに、マイケルのことは、彼の趣味がお魚釣りだ、ということぐらいしか聞いてないじゃん…(苦笑)。

そして、ボストンを去ろうというとき、最後にまた、マイケルのいる美容院へ足を運びました。マイケルは、それまでいろいろな髪型をしてきた、大きな鏡の前に座る私を見つめて聞きました。

"Why are you changing your hair so much?"
(どうして、そんなに髪型を変えるのが好きなの?)

美容院は、お客が飽きっぽければ飽きっぽいほど儲かるのですから、ふつう、そんな質問はしないはずです。だから、私は自分の気持ちを見すかされたようで、なぜか、とても悲しくなって、泣きたいような気持ちになりました。

"I want to become anything, but me…"
(自分以外の何かになりたいのよ…。)
私は、鏡の中のマイケルを見て言いました。

カットが終わり、後ろから鏡を見せてくれたときに、マイケルが言いました。
"Miss Kana, one day, you are gonna love your straight black hair. You will, for sure, one day."
(カナさん、いつか、きっと、自分の真っすぐな黒い髪が、好きになれますよ。いつか、きっと)

今、あれから10年経って、やっと、黒い真っすぐの髪のままでいられるようになった、とマイケルに報告できないことに、なんとなくおセンチになってしまう秋の夜…。

つづく。

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