「ST」は紙名を新たに「Alpha」として2018年6月29日より新創刊しました。 Alpha以降の全訳はこちら
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2013年4月19日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Welcome Home! (p. 9)

お帰りなさい!

文化的な違いにもかかわらず、私たちはみな人間である。人間であるということは感情を持つということを意味する。人は友だちといっしょにいてうれしいと感じる。愛する人たちと離れるときに悲しいと感じる。危険に直面するとき、怖いと感じる。そして、不正に対して怒りを感じる。

人種や国籍にかかわらず、私たちはみな喜び、悲しみ、怒り、恐れを感じる。どの国からやってきたとしても、私たちはみな同じ感情を持っている。

感情を持つことと、それを表現することとは、また別のものである。文化が違えば、感情の扱いを違うふうに習う。公然と感情を表す国もあれば、どう感じているかを隠す国もある。

このことを私が初めて感じたのは1979年に遡る。日本に着いたばかりで、神戸で働いていた。ある日、日本人の友人から手紙が届いた。カナダに留学していて、帰国の準備をしているという。彼は私が日本の文化に興味を持っていることを知っていて、彼の家族に一緒に会いに行かないかと誘ってくれた。私は喜んで彼と一緒に行き、日本の家族生活を体験するのを楽しみにしていた。

カナダから長時間のフライトで日本に着いた友人と空港で会った。それから、二人で電車に乗って彼の故郷の町へ向かった。友人は1年以上家族と会っていなかった。私は彼が感じている激しい感情を想像しようとした。

私たちが彼の家に着いたとき、私は、笑いと喜びとうれし泣きの、感情に溢れる再会を目にするものと思っていた。友人が興奮して飛び跳ねるところを想像した。きっと母親は、帰ってきた彼を歓迎してハグとキスをするだろうと思った。そんな感情溢れる場面に立ち会うなんて幸運だと感じていた。

母親がドアを開けたとき、何事も妙に落ち着いていた。友人は「ただいま」と言った。母親は「お帰りなさい」と応えた。それだけだった。ハグもない。キスもない。涙もない。感情もない。私には信じられなかった!

二人の態度が全く理解できなかった。友人は外国に1年住んでいた。それなのに、まるで彼が1時間ほど外出して街角の店から帰ってきたかような振る舞いだった。なぜ何の感情も見せないのかが理解できなかった。彼らはロボットか? お互いのことが気にならないのか?

その後私は、友人に彼らの妙な態度について説明してくれるように頼んだ。彼は、「日本では、おおっぴらに感情を見せないんだ。日本の社会で大人になることは、感情を制御できるようになること、そして感情を心のなかにしまっておけるようになることなんだ。僕たちからすれば、君たち欧米人がおおっぴらに感情を表すのが不思議に見えるよ。小さな子どもみたいに公の場で笑ったり泣いたりするだろう。日本人には理解しがたいよ!」と言った。

文化が異なる人々も心のなかには同じものを持っている。違う振る舞いを習うだけだ。異文化間の理解における課題の一つは、異なる習慣や態度の陰にある共通した人間性を見いだせるようになることだ。

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