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2013年4月26日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Raise your glass (p. 9)

乾杯する

3月に私の昔の上司の夫から突然連絡があった。彼はここ数年の間、3年前に突然私の元上司が亡くなったことを伝えるために、彼女の友人全員に連絡を取ろうとしていたのだ。

私は初め、今では友人となっている元上司と連絡を取っていなかったことに、悪いことをしたと思った。私たちの友情を当たり前のように思って、ありがたみを忘れていたと感じた。彼女はいつもそこにいて、いつでも連絡が取れる状態だと思っていたのだ。しかし実際には、友人を当たり前のように思っているのではなくて、私は「水がまだ半分入っている」と楽観的な見方をしがちなのだ。友人が幸せで健康に暮らしていると楽観的に思っている。それにきっと、ほとんどの人は友人が突然どんな病気にかかるかなどど絶えず考えているわけではない。

しかし、この経験で、私は友人について本人には言ったことのないすばらしいことがとてもたくさんあると気づいた。また、毎日私たちに知らず知らずのうちに笑顔をもたらしてくれている人々がどれだけいるだろうかとも考えさせられた。親切なホテルのフロント係から、コンピューターの困り事を解決してくれるテレフォンオペレーターまで、私は今、彼らが誰かの人生に本当によい変化をもたらしていることを知らないのだろうかと思わずにはいられない。彼らはただ単に仕事をしているだけだと思っているのかもしれないが、私は、彼らが本当に大切であることを私たちはもっと懸命に人々に知らせるべきだと思う。彼らがこの世で尊敬され、必要とされる存在であることを。

赤の他人にこのことを知らせるのは大変だと思うかもしれない。しかし、もし私がある組織のスタッフについて特によいことがあったとしたら、私はただそのスタッフのカスタマーサービス部に連絡をすればいい。実のところ、例えば一緒に働いている相手など何らかの形での知り合いである人に、どれだけ感謝をしているか伝えることの方が難しい。

私たち人生の大部分を仕事に使っているように思う。だから、同僚は一緒に働くのが好きになれる人であるべきだ。しかし、いすをぐるりと回して同僚を抱きしめて最高だよと言うのはやや決まりが悪いように思える。なかには実際にそうできる同僚もいるが、どんな職場でも、訴えられることなくそうできればよいと思う。少なくとも私は、とても幸運な仕事生活を送ってきた。とても才能があり、エネルギッシュで、情熱があり、てきぱきした人々と一緒に働いている。私の同僚は一緒に働いていると励みになり、刺激になり、喜びになる。私は彼らから多くのことを学び、ともにたくさん笑ってきた。私を日々笑顔にする人は常に私の心の中にいる――そして彼らのうち誰かが突然私の人生からいなくなってしまうと、それが同僚であっても、私の一部がどこか壊れたままになってしまう。

人生とはガラスのように壊れやすいものなのだろう。グラスの水が半分も入っていると思おうと、半分しか入っていないと思おうと、私たちは皆もっと努力をしてグラスを掲げ、日々暮らしをよくしてくれている人々を称えるべきだと思う。

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