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2013年5月17日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Fear of Failure (p. 9)

失敗することへの恐れ

学校が直面しなければならない問題の一つに「問題児」がある。問題児とは、変わった、もしくは狂ったことをする児童・生徒のことだ。しかし、私は彼らの気持ちがわかる。なぜかって? 私もかつては問題児だったからだ!

子どものころ、私はいつもたくさん勉強して、テストではよい点を取った。しかし、成功しなければならないという信じられないくらいのプレッシャーがあった。学校が私たち子どもに求めているのは、事実を暗記してテストに合格することだけであるかのように思えた。私たちは成績がよいと褒められた。成功がすべてだった。失敗は、死ぬことよりも悪いことだった。

成長するにつれて、勉強したいから勉強しているのではなくて、親や先生を喜ばせたくで勉強しているということに気がついた。自分自身のためではなくて他人のために生きていた。ビクビクして暮らしていた。テストがあるごとに、「落ちたらどうしよう」とばかり心配していた。

ついに私の恐怖と対峙するときが来た。大学2年生のときだった。私はフランス語専攻で、中間試験のときだった。

その日のことはまるで昨日のことのように覚えている。私たちは机に座っていた。先生がテストを配り、「始めなさい」と言った。

ほかのみんなにとってはいつものテストと変わらなかったが、私にとってはもっと大きな意味があった。自分自身の生き方が問われる瞬間で、転機で、分かれ道だった。私は重大な決断に直面していた―このままビクビクしながら生きていくのか、それとも期待というプレッシャーから自由になるのか。「今こそそのときだ!」と私は思った。「今行動しなかったら、私は残りの人生も怯えて暮らすことになるだろう」。

次の時間はやや超現実的だった。文法の問題で、私は意味を成さない言葉で空欄を埋めた。語彙のセクションでは、間違っているものも含め、選択式問題の答え全部に◯をつけた。ライティングのセクションでは、作文のテーマを無視して、テストの過酷さ、学校の不健康なプレッシャー、恐怖から解放されて勉強する権利について、怒りのエッセイをフランス語で書いた。

答案を提出するとき、私は妙に解放された気分で教室を出た。自分が誇らしかった。人生で初めて、わざと試験に落ちた。自分の恐怖に立ち向かい、自由を手に入れようと反撃に出た!

すぐにフランス語科から試験について緊急の電話がかかってきた。とても気まずい会話だった。「薬物を常用しているのか?」と先生は不安そうにきいた。「死にたいと思う?」と心配してくれるなんて、先生は親切だった。しかし、説明が難しかった! 幸運にも、落第した試験はあとで追加の宿題をすることで挽回することができた。

これはすべて、ずっと昔の出来事だが、この経験のおかげで、学校で心に傷を負った、あるいは期待でがんじがらめになった「問題児」に、今ではより共感できる。

もちろん、試験は人生の一部であり、受け入れなければならない。しかし、生徒にあまりにも多くのプレッシャーを与えるのは健康でない。だれも恐怖のなかで生きていくべきではない。

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