「ST」は紙名を新たに「Alpha」として2018年6月29日より新創刊しました。 Alpha以降の全訳はこちら
「ST」は紙名を新たに「Alpha」として2018年6月29日より新創刊しました。 Alpha以降の全訳はこちら

記事全訳

2013年5月31日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Language and politics in Ireland (p. 9)

アイルランドの言語と政治

妻が乳児の息子を連れて肉親に会うために日本を訪れているので、私は2週間の間、気ままな独身生活を送っている。

リアムは今生後18カ月で、言葉を話し始めた。東京から戻るころには、彼の日本語が私をはるかに上回っているのではないかと恐れている。

望みは―親というものは子どもに対して本人よりもずっと高い望みを持つことが多いが―、息子が二カ国語に堪能になることだ。

リアムにとって問題になるのは、小学校に入るとき、3つめの言語、すなわちアイルランド語を学ぶことになるということだ。

そう、アイルランドは英語圏の一部でありながら、英語は公用語ではない。英国のテレビ番組を見るかもしれないし、英国のサッカーを追っているかもしれないが、アイルランド語を維持することは、我が国よりも大きな隣国と自分たちが文化的に異なるということを思い出させる一つの方法なのだ。

それには歴史が大いに関係している。英国ほど強力な国にこんなに近かったことはアイルランドにとって不運だった。我が国は1169年に侵略され、1921年まで独立させてくれるよう説得することは叶わなかった。北アイルランドは、そう、未だに英国の一部だ。

植民地化されていた長い間に、アイルランド語は繰り返し抑圧された。だからアイルランドでは、言語は政治的に繊細な問題のままになっている。政府は学校でアイルランド語を学ぶことを必修にしている。しかし、日常生活では英語を使うので、公用語はすぐに忘れられてしまうことが多い。

アイルランド人の41%がアイルランド語をすらすらと話すことができると言うが、私から言わせれば、その90%は嘘つきだ。

アイルランドはケルト語派の一部で、ケルト語派にはスコットランド語、ウェールズ語、コーンウォール語、ブルトン語が含まれている。アイルランドのほとんどでは、ウェールズとは違って、日常生活でアイルランド語が使われることはほとんどない。

それでも、アイルランド語は公用語に残っている。これはつまり、教師も警察官もアイルランド語を話さなければならないということだ。そして、道路標識も英語表記の上にアイルランド語版が載っているということで、旅行客が迷いやすいということだ。

旅行客がさらに困るのは、レストランやバーでトイレに行かせてほしいと頼むときだ。トイレのドアにはよく「Fir」(男性)、「Mna」(女性)と書かれたマークがある。なぜこんなに多くの男性が、特に我が国の有名なギネスビールを1-2杯飲んだ後なんかは、「Mna」(女性)を「Man」(男性)と混同して誤った選択をしてしまうのかは、容易に理解できる。

お酒の話題を続けると、アイルランド語の言葉には英語でも使われることになったものもある。おそらく、最も馴染みのある例は「ウィスキー」だろう。ウィスキーの語源はアイルランド語の「uisce beatha」(命の水)から来ている。

poteen(密造ウィスキー、密造酒)とshebeen(もぐりの酒場、違法のバー)もまた、オックスフォード英語辞典に載っているアイルランド語起源の語だ。このことは、ヨーロッパの酔っぱらいというアイルランド人のステレオタイプを振り払う努力にはちっとも貢献していない。

では、そろそろ失礼して、独身生活に戻らないと。乾杯!

Top News
Easy Reading
National News
World News
Essay
  • アイルランドの言語と政治
This week's OMG

サイト内検索

2018年6月29日号    試読・購読   デジタル版
目からウロコの英文ライティング

読者の声投稿フォーム
バックナンバー