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2014年11月21日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Invisible threads (p. 9)

見えない糸

日本に初めて来たとき、日本人の友人が「赤い糸」と呼ばれる神秘的な赤い糸について話しているのを聞いた。「それは何?」と聞くと、「知らないの?」と答えた。「運命の糸だよ!」

日本の伝統的な文化では、各男性と女性は、生まれた時から見えない赤い糸で本当の恋人に結ばれているという考えがある。この見えない糸は小指に結ばれている。その糸を見つけて端までたどっていけば、あなただけのために生まれてきた特別な人に会える。なんてロマンチックなんだ!

私たちをロマンチックなソウルメート(魂の伴侶)と結んでいるこの見えない運命の糸のことをだれもが知っている。しかし、ほとんどの人は別の見えない糸のことを知らない―広い世界に私たちを結んでいる世界の糸だ。

これらの世界の糸の中には、外国に私たちを結んでいるものもある。例えば、朝食に食べたバナナはフィリピンとあなたをつないでいる。昨日遊んだサッカーボールのゴムはマレーシアやインドネシアとあなたをつないでいる。今日の午後に食べたたこ焼きのタコはモロッコやモーリタニアとあなたをつないでいる。昨日の晩ご飯のエビフライのエビはタイやベトナムとあなたをつないでいる。

毎日使っている言葉の中にも世界の糸は見つけられる。例えば、日本語の「パン」はポルトガル語の“pao”に由来している。日本語の「アルバイト」はドイツ語の“arbait”に由来している。日本語の「アンケート」はフランス語の“enquete”に由来する。

世界の糸は他にも、私たちを人々とつないでいる。私たちが飲むコーヒーはエチオピアやブラジルのコーヒープランテーションで働く田舎の農家と私たちを結んでいる。身に着けている服は、バングラデシュや中国の縫製工場で働いているアジアの女性たちと私たちをつないでいる。そして、ポケットの中の10円玉は、中国、ペルーの銅山で働く南アフリカ人の労働者と私たちを結んでいる。お金にさえも世界の糸がある!

さらに、別の糸は世界問題と私たちをつなぐ。例えば、テレビやコンピューターで消費する電力は、地球温暖化や原子力と私たちをつないでいる。車のガソリンは大気汚染や中東の石油の駆け引きと私たちをつないでいる。携帯電話のレアメタル(希少金属)はアフリカの民族紛争や第三世界での有害廃棄物と私たちをつないでいるかもしれない。

私たちはさまざまな見えない糸で世界とつながっている。これらの糸は、私たちが食べる食べ物、使う言葉、着ている服、使っている機械などに見つかる。地球市民になる重要な一歩は、これらの見えない糸と、これらの糸が世界の人々や国々、問題と私たちをどのように結んでいるのかを意識するようになることだ。

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