「ST」は紙名を新たに「Alpha」として2018年6月29日より新創刊しました。 Alpha以降の全訳はこちら
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2015年10月9日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

The gatecrasher (p. 9)

招かれざる客

あなたは間近に野生の動物がいたことがあるだろうか? 私はある。ビーチで足をタオルで拭いていると、背中に何かが乗ったのを感じた。軽くて―それは確かに―四本足だった!

後ろにあった岩をちらっと振り返って見てみた。何もなかった。おそらく、気のせいだったのだろう。それに、赤ちゃんが砂をスコップですくって口に入れないようにすることに気を取られていた。

自分の仕事に戻ると、すぐにまたその感じがした。今度は間違いなかった。うまく逃げる前にその姿を見た。頬をふっくらと膨らませ、大きなふさふさの尻尾のシマリスだった。

アイルランドにはシマリスがいないので、以前にシマリスを野生で見たことはなかった。カナリア諸島に家族旅行で出掛けていた。カナリア諸島は、アフリカ沿岸沖に浮かぶ列島だが、スペインの領土になっている。この諸島は、ヨーロッパ北部の人々にとって、太陽と砂浜と海に惹かれるお気に入りの旅行先になっている。最高気温は通年20度台が保証されている。この島はスペイン人にも人気で、本土では夏の気温が40度に近づくようになると、クールダウンしに島に向かう。

その島は不毛で火山性の土地で、サボテンと低木以外は育たない。それで小さいシマリスがその辺にいる野生動物のなかでは事実上最も大きい動物となっている。ただし、シマリスはそれほど野性的ではない。人にとても慣れていて、観光客から餌をもらいに集まるほどだ。そしてこのシマリスは、私たち家族のピクニックに乱入しようと決めたようだ。

私には、長野でニホンザルのとりわけ攻撃的な一団に温泉を追い出されたことがあるという友人がいる。彼の話のすべてを信じてはいないが、お湯に浸かることを楽しむニホンザルの写真は見たことがある。温泉の楽しみを初めて発見したのは誰だろうと思うことがある:サルか、それとも猿と近縁である人類か。しかし、英語では、"to ape"(「まねをすること」の意。apeは類人猿という意味の名詞)は、「まねをする」という意味になる。温泉卵をニホンザルも楽しむのかどうか定かでないが、ニホンザルは駐車している車を襲って中の食べ物を得ようとすると聞いたことがある。

アメリカにいる野生のクマも、街をさまようことでゴミ箱をあさるという行動を身につけたという。残念ながら、「問題を起こすクマ」として多くが射殺される。そもそも、クマに餌を与えた人間が、「問題を起こす人間」と描かれることは決してない。

人間との接触は動物の行動を変えることがあり、たいてい動物たちにとってかわいそうな形になる。動物との接触は私の3歳になる息子も変え、彼は自分のポテトチップスを父親よりもシマリスを分ける方がずっとうれしいようだ。餌をあげるのを中断させると、息子は不機嫌になった。今は私は楽しみの邪魔をする人かもしれないが、動物とは安全な距離を保つ方がよいことが多い理由をいつか説明できればと思う。

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