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2016年3月25日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

For a limited time only (p. 9)

期間限定

年をとるにつれて、一年が早く過ぎるようになったと感じたことはあるだろうか? 一年が過ぎるスピードは、特にソーシャルメディアがあるので、なお一層速くなっているように見える。あらゆるニュースフィード、ステータスアップデート、コメントや「いいね」が、誰かの成功や、素晴らしい休日、食べたおいしい食べ物についての情報で私たちを溢れさせる。ときに、みんなの人生が電子的に目の前を駆け抜けていき、取り残されたような気になることもある。

こういったすべての経験を目にしたときに、他人の人生のペースについて行かなければというプレッシャーを感じることがある人もいるだろう。社交の機会を失いたくない、珍しいことがしたい、お金を稼いだり、貯めたりしたいと思うだろう。この不安が重症な人が、FOMO ― チャンス喪失恐怖症 ― の人だ。この症状を持つ人たちは、誤った決断をすること、最新のガジェットを持っていないこと、最新の最高の経験を共有していないことを恐れる傾向がある。

最新のものを逃さないようにしようというプレッシャーは、特に日本で顕著な気がする。たくさんの食べ物や飲み物のパッケージに、四字の漢字が並ぶ:「期間限定」だ。多くのレストランでは、また別な四字の漢字があることにも気がつく:「数量限定」だ。私たちは、明日死ぬかもしれないのだから、人生を目いっぱい生きるように、できる限りあらゆる機会をつかむように言われているので、これは客に物を買わせるいい方法だ。

私は、奈良の鹿の群れに遭遇して以来、この機会を絶対に逃さない必要について、新たな見方が生じてきた。臨死体験とまでは言わないが、かなり恐ろしい体験だった。

私は写真を撮るために友人たちからぶらぶらと歩いて離れ、鹿の糞を踏んでいないか靴を確認していると、バンという音がして、雷のとどろきのような音に聞こえた。顔を上げると、鹿の大群が私に向かって全速力でまっすぐに走ってきていた。私は凍りついて思った:「これで一巻の終わりなのか? 私はこうやって死ぬのか? 靴に鹿の糞がついていないか確認している間に、パニックになった奈良の鹿に踏み潰されて? 肉食動物に殺されるのでもなくて? 本当に?」

ありがたいことに、鹿は私よりも賢く、最後の瞬間に方向を変えた。自分の人生も、他人の人生も、目の前を駆け抜けるのを見ることはなかった。その日の大半を友人たちと過ごしてきたことをありがたく感じた。そして、このことで私は、人生はすでにあらゆるもので満たされているので、何も見逃すことはないのだと気がついた。だから、何か新しいものを探そうとするのではなくて、今ある中から楽しめるものに注意を向けるべきだ。そう、人生は期間限定なのだ。しかし、それを満たす方法は? それには限りがない。

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