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2016年4月8日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Learning to clean again (p. 9)

掃除の仕方を学ぶ

私が生徒だったころ、教室の掃除は毎日のスケジュールの一部だった。どの教室にも当番表があり、生徒一人一人に、ほうきで掃く、黒板を拭く、ゴミ箱を空にする、などといった役割が当てられていた。

この習慣は今も続いていると思い込んでいた。なので、教育省が最近、全学校で生徒による毎日の掃除を導入すると発表したときは驚いた。その意図は、「生徒に責任感と良い生活習慣を教えこむこと」だという。同省は、日本と台湾の学校で行なわれている類似の取り組みを見てきた。日本と台湾の学校では、生徒が毎日校内を清掃している。

私は、この取り組みがシンガポールで終わったのはいつだろうと不思議に思った。そもそも、なぜ、学校はこれをやめたのだろう?

もっと驚いたのは、このニュースに対する何人かの親の反応だ。インタビューされた人のほとんどが同省の動きを歓迎していたが、疑問を持つ人もいた。子どもたちは「さらなる」掃除の義務でひどく疲れるのではないか? 掃除のために取られた時間を勉強に「使ったほうがよい」のではないか? (掃除は1日5-10分しかかからないし、生徒はトイレを掃除する必要さえないのだが。)

どうやら、多くのシンガポールの子どもたちは、もはや家事をする必要もないようだ。住み込みのお手伝いさんがいるためだ。お手伝いさんはたいてい、フィリピン、インドネシア、ミャンマーの若い女性だ。教育に携わる私の友人は、スマートフォンには精通しているのにほうきをぎこちなく使う若い人々を目にするという恐ろしい話を共有してくれた。子どものなかには、深皿や平皿を1枚も洗ったことがない子もいる。家で飲み物がほしいとき、何もする必要がない。お手伝いさんが飲み物を注ぎ、靴ひもを結んでくれる場合もある。

私が聞いたなかで一番信じられなかった話の1つは、ボーイスカウトのキャンプを指導している1人の友人から聞いたものだ。最近、ボーイスカウトに参加している10代の1人の少年がしゃれたキャリーバッグで登場したという。その荷物を詰めたのは自分自身ではなく、彼のお手伝いさんがしたのだ。

「最近の若い人たちには活を入れないといけない。あまりにも甘やかされている!」と友人は嘆いていた。

どの年代の人も、自分たちよりも若い世代のことをこんなふうに言うのだと思う。しかし、シンガポールの子どもたちは実に甘やかされすぎているのかもしれないという感覚を拭い去ることができない。おそらく、私たちは学業成績にあまりにもとらわれ、自分で掃除をすることなどもはや不必要に思えるのかもしれない。さらに、住み込みのお手伝いさんの月給はたいてい、シンガポールドルでわずか数百ドル(100シンガポールドル=8280円)なので、多くの家族が払うことのできる値段だ。

「シンガポール人は裕福だね!」と日本から来た元同僚が、シンガポールの学校では清掃員を雇っていて、生徒はトイレを掃除する必要がないと、私が彼女に話したときにそう言った。シンガポール人は本当の意味で裕福だったら ― 清掃員やお手伝いさんにもっとましな賃金を支払い、自分で掃除をするくらい心も精神も裕福だったらと思う。

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