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2017年5月26日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Citizen diplomacy (p. 9)

市民外交

数年前、私は英語教育の国際会議に出席した。初日の朝、ホテルのレストランで、私は3人の参加者に出会った。彼らはどこか普通でなかった。場違いな感じに見えた。

「どちらからいらしたのですか」と私は尋ねた。「北朝鮮です!」と彼らは返事をした。彼らは平壌から来た英語教師で、北朝鮮を離れる特別許可をもらっていた。彼らにとって初めての外国だった。

一番若かったリーさんは、言語学者だった。一番年上だったパクさんは、シェイクスピアの専門家だった。リーダーのキムさんは、上手な英語話者だった。私たちは仲良くなり、すぐに友だちになった。

その後、私はアメリカ人の同僚と会い、彼に自分のホテルに北朝鮮から来た人がいたことを伝えた。彼は驚いた! 私たちは韓国の人が会議に何人かいたことは知っていた。「これは外交の素晴らしい機会だ」と私たちは思った。「平和構築を少し試みてみよう!」。

私たちの計画は、韓国料理のレストランで会い、一緒に食事を取ることだった。私は北朝鮮の人たちを連れてきた。私の友人は韓国の人たちを連れてきた。

最初、私たちはうまくいかないのではないかと心配だった。当時、今と同じように、北朝鮮と韓国は公式にはまだ戦争状態だった。どちらのグループも、互いが「敵国」だと教わっていた。両国の人が会うことを禁じる法律まであった。

驚くべきことに、その夕食は大成功で、全員が友人になった! これはどのようにして起こったのだろうか? それには4つの要素があった。

1つ目の要素は、私たちには共通のアイデンティティーがあったことだ。私たちはみんな英語教師だった。私たちは同じ職業に属していた。国籍は違っても同僚だった。

2つ目の要素は、好奇心だった。韓国の人々は、北朝鮮のことに関心が高かった。北朝鮮の人々も韓国のことに関心を持っていた。このお互いの好奇心がその夜全体を盛り上げた。

3つ目の要素は、名前が共通していたことだった。キムさんは北朝鮮の人だった。2人の韓国の人もキムさんという名前だった。すぐに彼らは話し始めた。「あなたのバックグラウンドは何ですか? どのキム族に属していますか?」。この質問は即時のつながりをもたらした。

4つ目の要素はお酒だった。朝鮮半島の人たちはみんなお酒を飲むのが好きだった! 私たちはゆっくりと酔ってくるにつれて、政治、イデオロギー、偏見という障壁は消え去っていった。

私たちの会合は音楽と共にお開きになった。韓国のリーさんは立ち上がって、北朝鮮と韓国の両方の人にとって神聖な場所とされている白頭山についての歌を歌った。北朝鮮のパクさんは、朝鮮半島の人々全員の夢である統一についての歌を歌った。彼らはみんな素晴らしい歌い手だった! 私たちは感情のこもったバージョンの『アリラン』を歌って締めくくった。

私たちの平和構築の時間はあっという間に終わった。2日後に、会議が終わり、私たちは家に向かった。私は二度と北朝鮮の同僚たちに再会することはなかった。

世界には、国粋主義や偏見、恐れ、不信の声に対抗するためにもっと市民外交が必要だ。北朝鮮についての恐ろしいメディアのイメージの背景には、ごく普通の人たち ― 主婦、農民、学生、教師 ― がいる。彼らがみんな求めていることは平和な生活だ。私たちと同じように。

注:このエッセイに登場した名前はすべて仮名です。

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