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2018年6月1日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Springtime superpowers (p. 9)

春の不思議な力

北海道の春は日本のどこよりも遅くやってくる。4月は当てにならない月で、庭に何か植えても大丈夫だろうと思った後で雪や霜が降ることも多い。しかし、5月ならだいたい大丈夫だ。5月は本当に春である。遅くやってくるが、驚くべき急な変化をもたらす。このおかげで、私たちは不思議な力を明確に観察することができる。

きっと思い浮かぶのは、植物の新たな成長だろう。たんぽぽなどの野草は1年のこの時期に最も栄養が豊富になり、エネルギーと粘り強さに満ちていると言われている。冬の雪の重さで固くなった土を割って出てくる。レンガやコンクリートのすき間を押し上げて出てくることさえある。

しかし、私が話している不思議な力とは、もっと個人的なレベルでのことだ。春は、1年のうち5〜6ヵ月も雪や氷に囲まれて暮らしている私のような人たちに不思議な力をもたらす。雪がついになくなると、私は分厚いコートを脱いで、重いスノーブーツを軽いローファーに交換する。突然、私は羽が生えたような感覚になる。空を飛べるような感じがする。

もう冷たい手を分厚いウールの手袋で守らなくてもいい。ワラビのふわふわしたところや、たんぽぽの茎を折ると出てくる粘り気のある乳液、桜の木のざらざらした樹皮を触って感じることができる。土の豊かさ、何千もの伸びゆくものたちの香りをかぐことができる。強まった触覚と嗅覚が私の不思議な力になっている。

世界は突然にぎやかになる。窓をよく開けるようになるためだけではなく、冬の間ずっとすべての音を消していた深い雪がないからだ。聴覚も強まり、私はブナの木の奥を樹液が流れる音を聞くことができる。

白とグレーのモノトーンの冬の後、突然あちらこちらが色鮮やかになる。強まった視覚は、川の土手や牧草地の食べられる野草に近づく。敏感になった舌は、ふきのとうのかすかな苦味、タラの芽のクリーミーな味わいに喜ぶ。確かに、私の聴覚、視覚、味覚は、不思議な力に満ちている!

私の関節炎を患っている関節は、温暖な気温で緩む。このおかげで私は動きやすくなる。お城の壁を登ったり、木の枝から木の枝へと飛び移ったりできるくらい、機敏で頑丈になった感じがする。いつもなりたいと思っていたように、忍者になれるかもしれない! 自分自身の感覚へのこの畏敬の念は数週間で薄れていき、私の「不思議な力」は普通の日常の一部のように思えてくるだろう。しかし、北海道の短い春は、1年中、私の芸術にひらめきを与えるのに十分なくらい私の感覚を刺激する。

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