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『世界の英語教室 (小学校)』
      By Mina Hisada/Illustration by Puri/Photos by Yuko Kokan


「日本の側からみてみると・・・」  

前回は、インドで言語教育に携わっているムグダ先生にお話を伺いました。 (こちらをクリック!) 今回は、切り口を変えて、日本で英語教育に携わっている先生にインタビューしたいと思います。 ご協力下さったのは、神奈川県の公立の中学校で英語を教えている古閑結子先生です。  


小学生の英語
古閑先生

■先生と英語、そしてALT観

Q: まず、先生と「英語の出会い」を教えていただけますか?

A: 私はいわゆる「帰国子女」というやつでして。小学校6年生からオーストラリアに3年間滞在したのが英語との出会いでした。教師になってからは英語そのものでの苦労はありませんでしたが、日本語で英語を学習した経験がないのでイメージする教師像や授業がなく、最初は戸惑うことが多かったのを覚えています。

Q:これまで、どこの国のALTの先生方と組んできましたか。また、ALTの先生と接する際に、心がけていることなどはありますか。

A: イギリス、カナダ、オーストラリア、アメリカからのALTの先生と組んだ経験があります。オーストラリアの方が3名、と多いですね。

接する際に心がけていることは、ALTの先生が職場で孤立しないように可能な限りこまめに声をかけてコミュニケーションをとることでしょうか。英語の学習がうんぬん以前に、様々な「日本式暗黙のルール」にのっとって我々生徒や職員は動いているので、戸惑うALTが多いんです。それらを早く理解して馴染んでもらえるように努めています。

Q:ネイティブの先生と接するということは、英語を習う上で、生徒にも何かしらの影響を与えていると思いますか。

A: 思います。なによりも、生徒にとって「ホンモノ」の外国人に自分の英語が通じた、というのは大きな成功体験ですし。とても励みになっていると思います。今のAET(Assistant English Teacher)の先生は、授業外でも廊下で生徒といろいろな話をしたり、昼休みに一緒にバスケをしたり部活動に顔を出してくれたりととても積極的に接してくれているので、生徒もあまり緊張することなく授業に参加できているようです。また、ALTの先生が一生懸命日本語や日本文化に興味をもって学ぼうとしている姿勢が生徒に共感を呼び、刺激になるようです。

Q: バブル経済期に導入されたALTの制度は、特に英語教育の教授法を学んでいなくても、ネイティブであればなれることや、 そのかかる費用(年間約500万)から、この不況には合っていないのではないかという声もあります。また、 それだけの金額をかけるならば、日本人の教員養成のために使ったほうが良いのではという声もあります。 実際、現場で様々なALTの先生と接してきていらっしゃる古閑先生は、どのようにお感じになりますか。

A: 率直に言うと、ALTに「当たり外れ」があるのは事実だと個人的には思っています。何をしにきたんだろう、と思ってしまうような人も中にはいましたから。 また、日本人英語教師がALTの先生を使いこなせず、たとえばテープレコーダー代わりに英文を読んでもらうだけ、 などというもったいない話も聞いたことがあります。そう考えると、無駄は多いのかもしれません。ゼロにしろとは思いませんが、 日本人英語教師の海外研修を促進するほうが長期的にみると得るものは多いと私も思います。AETに使う費用は、基本的に「掛け捨て」ですから。

Q:前回のムグダ先生へのインタビューをお読みになって、何か感想などありますか?

A: インドと日本では状況がESL(※1)とEFL(※2)と大きく違うとは思いますが、それでも達成感の大切さや読み書きの大切さをおっしゃっている部分にはとても共感を覚えました。また、発音を気にしすぎという部分も大いに同感です。様々な国の人々と英語を使っていくわけですから、発音の差異なんて教師はまったく気にする必要ないと思います。逆に、気にするべきではないということを身をもって強く伝えていくべきだと思います。

※1 English as a Second Language (「第二言語としての英語」の略。インドでは、英語が公用語であるため、 外国語としてではなく、第二言語として学んでいる。)

※2 English as a Foreign Language(「外国語として学ぶ英語」の略。)

■日本の英語教育について

Q:日本の英語教育がこうなればいいのに!と思う点はありますか。また、思うけれどなかなか現実的に考えると難しいだろうというジレンマはありますか。

A: 少人数での授業!!これに尽きます。10人〜15人のクラスサイズが理想。 これをTT(※)でできたら・・・想像しただけでよだれが出そう。(笑)

※Team teachingの略。日本人の先生同士、あるいは日本人と外国人の先生が二人一組で教える。

市も推進はしているのですが、しかしたとえばうちの職場は空き教室がほとんどなく、クラスを二つに分けることが物理的に無理という状態。CDやビデオのボリュームや生徒の声を気にせず授業が進められる英語科専用の教室もほしいのですが、夢のまた夢です。

Q:これからは、英語を教える小学校や中学校の先生方の「連携プレー」が大事になるといわれています。これについてはどう思われますか。

A: 私は個人的には今の形のままでの小学校での英語教育には反対なのですが、始まってしまうものはしょうがない(笑)。連携はとても大切になってくると思います。中学校がセンター校となって、学区の小学校の先生と連絡を取り合っていく形になると思うのですが、そのための時間が確保できるよう、計画を立てる際に人的配慮をぜひお願いしたいところです。でも、多分無理なのでとても不安です。

Q:「早期英語教育」については、どう思われますか。

A: 先ほどお答えしたとおり、あまり賛成ではありません。それよりも、母語でもっと豊かな言語教育をしたらいいのにと思います。母語力はその後学んでいくすべての言語の土台になっていくものですから。発音を非常に重視する傾向にあり、それで早期早期と言われていますが、実際に社会に出て使うのは情報を読み取る力、そして正確に伝える力だと思います。つまり、face to faceとは限らない わけです。しっかりとした母語での言語能力がなければ、それらは育てることができません。現場の教師の多くは国語力に課題を抱える生徒が非常に増えていると感じ、英語教育以前のレベルでの危機感を抱いています。外国語教育はその次であるべきではないでしょうか。

Q:2年後、英語が小学校に導入されることになりました。これから小学校で英語を教える日本人の先生方に一言お願いします。

A: どのようなモチベーションを児童に与えるのかが大切になってくると思います。楽しい、だけでは児童生徒はすぐに飽きてしまうもの。どのような形で評価をフィードバックするのかが鍵でしょう。児童が上達していくのを実感できるような工夫をしてあげてください。   


☆★☆編集後記☆★☆

「実際に社会に出て使うのは『情報を読み取る力』や『正確に伝える力』 であり、それはしっかりとした母語での言語能力がなければ、無理というもの」 ─ 小学校英語をスタートさせる前に、もう一度足元を見直してみる必要があるのではないでしょうか。 現場の先生だからこそ見えてくることを、今回はたくさん教えていただいた気がします。 飾らず率直にお話下さった古閑先生、ありがとうございました。

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