|
「英語好きな少年でした」と自身の中学、高校時代を振り返るのは、NHK 解説委員長の藤澤秀敏さん。「NHK ニュース9」「BS23」「ニュースウオッチ9」などの番組に計8年あまりキャスターとして出演していたので、見覚えのある読者も多いだろう。
キャスターとしてのイメージが強いかもしれないが、藤澤さんは延べ15年ほど海外特派員を務めた経歴を持つ。
英語で話してみて「世界」を実感
徳島県出身の藤澤さんの少年時代には小学校での英語クラスや塾もなく、また外国人も周りにいなかったが、英語に興味を持ったのは地元で起きた非日常的な出来事がきっかけだった。
「吉野川の河川敷に米軍飛行機が不時着したことがありました。兵士たちが仮設の滑走路を作って再び飛び立たせるまでの間、中学で習い始めた英語が彼らに通じるか試してみたんです」
「英語ニュースは最適な教材」と話す藤澤秀敏・NHK解説委員長 (写真いずれも三浦義昭)
あいさつや簡単な表現ではあったが、実際に言葉を交わしたことで、世界には言葉も違う、さまざまな人がいることを実感。さらに、「英語なら世界の人たちと話ができる」と思ったという。
加えて中学校に英語を教えにきていた神父が立派で温厚な人柄だったことも、英語への興味をさらに駆り立てた。
地元の高校では、3年次にAFS 交換留学制度でアメリカへ1年間留学。英語が好きだったことと、「自分の住んでいるところとは違う、外の世界を見てみたい」との好奇心が藤澤さんを留学に踏み切らせたのだ。
藤澤さんは当時、学校や家での勉強以外にも、中学・高校時代に帰り道で実践していたことがあるという。
「教科書を覚えて、声に出していましたね」
ラジオ英語講座なども聞いていたそうだが、こうした日ごろの積み重ねが、後に海外で現場に携わる際の基礎体力につながったのではないだろうか。
英語をしゃべらざるを得ない環境
留学のため初めて乗った飛行機では、機内食で出たアメリカの食事が日本食とまったく違っていたため今後の生活に不安を覚え、現地に着いてからは国土の広さと豊かさに驚いたという。
ホームステイ先はアイオワ州のとうもろこし農家で、近くの高校に通った。初の東洋人を迎えた町では、「1年を通じて頻繁に『うちにもきてくれ』と多くの家庭から招待があった」ほどの歓迎ぶり。ホストファミリーも面倒見がよく、「英語をしゃべらないと生活できない環境」だったという。
「初めの3ヵ月は相手の言っていることも分からず、日本で勉強してきたことが通じなかったのですが、その後急に英語の環境に溶け込めるようになった気がします」
これまで国際ニュースを扱う部門で働いてこられたのも「この1年があったから」で、留学が「人生を変えた」と藤澤さんは話す。
「将来、国際的な分野で働きたいと思っている高校生には、ぜひ留学してみることをお勧めしますね」
高校卒業後、早稲田大学に進学した藤澤さんは、1970年の大阪万博開催に合わせ、通訳案内業の資格を取得。数ヵ月にわたり、海外からの旅行客を日本各地へ案内したという。実地で英語を使う訓練を積んだのだ。
「本で覚えた知識だけでは、彼らを引き付けることはできませんでした。先輩ガイドをよく観察し、冗談を交えることを学び、どうすれば楽しませることができるか、技術を磨きました」
そして交換留学で、1年間アメリカのオハイオ州の大学に留学。「見聞を広める」目的から、リベラルアーツ系の大学で、政治を中心に幅広く学んだ。
ニュース英語をBGM で
記者として入局した NHK では、北海道の支局に勤務後、香港、ロサンゼルス、ワシントンの支局、そしてニューヨークにあるアメリカ総局で働いた。
キャスターとしても国際ニュースを扱ってきた藤澤さんは、主に国際畑を歩んできたわけだが、その間、どのように英語に接してきたのだろうか。
「心がけてよく英語のニュースを聞くようにしていました。実益(仕事)と、英語の勉強に役立ちました。これは今でも継続している習慣です」
BGM のようにかけ流しにすることもあるという藤澤さんは、ニュース英語の利点をこう指摘する。
「一番理解しやすいのがニュース英語だと思います。ニュースは分かりやすくなければいけないわけですから。聞き続けることで英語に慣れ、その繰り返しでニュースも分かってくるようになります。そういった意味で、とても適した教材ですね」
NHK では BS の『おはよう世界』『きょうの世界』などの番組や地上波ニュースの副音声だけでなく、NHK World のウェブサイト(http://www.nhk.or.jp/nhkworld/)でも英語ニュースを聞くことができるので活用したい。
仕事柄、国内外の英字新聞にも目を通す藤澤さんだが、何回出てきても覚えられない単語があるという。そうした単語に出合ったときの藤澤流対処法は、誰でもすぐに実践できるものだ。
「ふせん紙に書き込んで、目に入りやすいところに張っておきます。表に英語、裏に日本語を書いているので、いつでも『テスト』ができて便利です」
それでも忘れてしまうこともあるといい、「記憶力は衰えますね」と苦笑いする藤澤さんだが、「忘れては覚え」を繰り返すことが大切だと言う。
「語学学習では『反復』が大事です。年を取り記憶力が衰えることを恐れないでください。それに、さまざまな経験を積んでいる分、若い人に比べ、応用力、類推力が身に付いているのではないでしょうか」
語学学習に「魔法」はない。毎日の積み重ねと繰り返しが「着実に語学力を上げる秘けつ」なのだ。
— 週刊ST編集部 亀田雅彰
|