このところ急に涼しくなり、秋の気配を感じるようになりました。世間では夏休みもいよいよ最終週。体育会式英語塾の夏合宿も今回が最終回です。
夏合宿ではこれまで3回にわたって仮定法や基本5文型など文法を中心に勉強してきました。今回は合宿の集大成として、今まで培った知識を実際の文章読解に応用してみます。どんな知識も持っているだけでは宝の持ち腐れ。使ってみて初めて知恵として役立つものです。
最終回の今回はこれまでの英語塾で使用したスクリプトの文章を引用しながら、文章読解では頭がどのように働くべきなのかを解説します。
例文@
| A young lady spotted you, kindly offered you a seat at the counter and successfully talked you into booking a four-night stay on Ishigakijima. (第5回英語塾『Impromptu vacation』より)
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英語の基本5文型の応用です。基本5文型で大切なことは、ひとつの文章の中に主語や動詞は原則的にひとつずつしかないということです。もっと詳しく言えば、ひとつの文章の中に動詞が2つ以上ある文は原則的に間違いなのです。これは文章読解をする上で重要なヒントになります。
例文@には動詞が3つもあります(spotted, offered, talked)。このようにひとつの文章に複数の動詞がある場合、「その文章が間違いでない」理由として次のパターンが考えられます。1)関係代名詞が省略されている 2)節を作るthatが省略されている 3)動詞が助動詞的に使われている(例:help) 4)複数の動詞がandで結ばれている、などです。
さて、例文@をもう一度よく読んでみましょう。(successfully) talkedという3番目の動詞の前にandが使われています。これで例文@は4)のパターンだと判断することができます。
英語ではandでふたつ以上のものを結びつけることができます。ふたつの場合はA and Bとし、それ以上の場合はA,B,C,とカンマで区切ったあと最後にand D.と続けるのがルールです。@はまさにこのルールどおりに動詞が並んでいる例ですね(spotted, offered and talked)。
andで結ばれたものはそれが動詞であれ、名詞であれ、文章であれすべてが同列、つまり文章の中で果たす役割が同じであるのが原則です。@で使われている3つの動詞もどれかが最も強調されているということはなく、すべてが同じ程度の意味合いで使われています。そして、この3つの動詞の主語はいずれもa young ladyです。andで結ばれた複数の動詞に対する主語がそれぞれに異なるということは英語では絶対にありません。
そして、offerという単語に出会ったときにこれが第IV文型を作ることのできる動詞だと気づけばしめたものです。第IV文型を作れる動詞は意外に多くないということは夏合宿の第3回で述べました。offerがそのひとつだと気づけばそのあとにyouとa seatというふたつの名詞が連続していることも納得がいくはずです。
それでは、@を文法的に分解してみましょう。主語はa young lady、述語となる動詞は3つあってspotted, (kindly) offered, (successfully talked)がそれです。 和訳をするときにはどれが主語で、それに対する述語はどれかということを意識しながら日本語を充てましょう(訳はこちらを参照してください)。
次は夏合宿第1回目で扱った仮定法の実例です。Ifは使われていませんが、wouldが動詞の前についていることで仮定法の用法だと見破ることができます。「わざわざgo out at this time of yearするような人は」という部分にifによってもたらされる仮定のニュアンスが込められています。(訳はこちらを参照してください)。
例文Bにも動詞がふたつあります(guessとyou'reのare)。これは例文@で考えた理由2)のパターンです。つまり、guessとyou'reの間にthatが省略されているのです。なぜそうだとわかるのでしょうか。ここで役立つのが基本5文型の知識です。
後半部分のyou're rightはこれだけで第II文型(主語+動詞+補語)の形をとっており、完全な文章になっています。ところが、その前にもうひと組の主語(I)と述語(guess)があるためにこの文章は「主語(I)+動詞(guess)+主語(you)+動詞(are)+補語(right)」という基本5文型には存在しない形になってしまっています。
そこで節を作ることのできるthatが省略されていると考えることができるのです。節を作ることのできるthatはそのあとに完全な形の文章がきても、全体の文章の中ではそれを名詞のような役割のものに変えることができます。つまり、that you're rightとすることでthat以下は「君が正しいということ」という名詞的な意味を持つことになるのです。こういった部分を名詞節といいます。節とはthat以下に完全な文章の形を持ったもの。それが名詞のような役割をするので名詞節と呼ばれるのです。
Bの文では(that) you're rightが名詞節となり、guessの目的語としての働きをしています。ですから、Bは基本5文型の第III文型なのです。(訳はこちらを参照してください)。
Cは基本的な仮定法過去の文章ですが、ここで取り上げたいのはそれではありません。問題となるのはsawという単語です。sawの原型であるseeは知覚動詞のひとつで、基本5文型の第V文型(主語+動詞+目的語+補語)を作れる数少ない動詞のひとつです。ですから、この文章でsawを見た瞬間にこの文章が(ifも前述のthatと同じように節を作ることができます。だからyou actually saw a live firework display before=例文C−aはこれで完結したひとつの文章の形をとっています)第V文型である可能性を考えます。
C−aが第V文型だと仮定した場合、目的語はa live fireworkで補語がdisplayとなります。第V文型では目的語と補語に間に主語と述語の関係がありますから、ここにはa live firework(=生の花火)が主語でdisplay(=展示する)が述語の関係が成立しなければなりません。displayという単語は動詞でも名詞でも使えるので、これは一見正しい判断のようです。
ところが、「displayは第V文型の補語で、a live fireworkの動詞としての役割と持つ」と考えると不都合が起きます。displayという動詞は他動詞なので目的語が必要です。形の上では beforeが目的語の位置にきていますが、 beforeは前置詞なので目的語にはなれません。つまり、displayに必要な目的語がないのです。ここで、このdisplayを動詞として考えるには無理があることがわかります。動詞以外のdisplayの用法は名詞です。
displayを名詞と考えて目的語と補語に「a live firework (is) display before」という関係があると形式上は考えられますが、これでは文の意味に無理があります。
こう考えると、この文章でのdisplayは名詞で、a live firework displayでひとつの名詞句を作っているということがわかるのです。C−aは第III文型です。(訳はこちらを参照してください)。
DもCと同じ考え方をします。すなわち、haveという動詞を見たときにhaveの持つ使役動詞としての役割にまで考えが及ぶかどうかが、この文章を正しく読解できるかの鍵になります。使役動詞とは第V文型を作る代表的な動詞です。そう考えると、すでにis gonna(=going to) haveという述語があるのにもかかわらず、またsetという動詞が出てきました。andがないのでis とsetは同列ではありません。ここで初めて、この文章が第V文型であると判断できるのです。
そうすればeverythingとsetの間に主語と述語関係があることがわかります。使われているのがhaveという使役動詞なので、everythingとsetにはeverything is setという受動態の関係が隠れています。訳出するときにはこういった隠れた関係に気をつけながらふさわしい日本語訳を充てていきます。(訳はこちらを参照してください)。
文章読解では英文を形でとらえると分かりやすい場合が多いです。形でとらえるということは基本5文型をヒントに、その文章にはどのような文法的テクニックが使われているかを読み解くことです。そして、形でとらえる文章読解の技術を持っていれば、ひとつふたつ知らない単語が出てきても文章の意味はほぼ正しくとらえることができるようになります。簡単には身につかない技術ですが、必ず役に立つものなので、英語塾夏合宿の4回の講座は何度も繰り返し読んで、理解するように努めてください。1〜2度読んだだけではなかなか理解できないでしょう。むしろ、書いてあることを暗記してしまうくらいに読み込んでください。そうして初めて見えてくるものもあるのです。
『生沢浩の体育会式英語塾特別編 夏合宿』は今回で最終回です。本編は引き続き毎月第3木曜日に更新いたします。
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