では最後に第9パラグラフを見ていきましょう。ここが一番難しいところですが、内容は分かりましたか?
:文章が複雑すぎて全然分かりませんでした!もう脳みそぐるぐるです。
確かに文の構造が複雑で難しいですね。このような英文は以下のように対処しましょう。
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複雑な構造の英文に出合ったら、
@主語は何か、動詞は何かなど、まずは大きな枠組みをとらえる
A一気に理解しようとせず、細かく区切って解釈する
B右から左に戻るなどの「返り読み」はしない
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では具体的に見ていきましょう。最初の部分はいいですね。「誰もがthat以下のことに同意しているようだ」。複雑なのはthatから先です。ポイントの@〜Bの方法で読み解いていきましょう。まずは@。大きな枠組みは以下のようになります。
(主語)the state schooling system「国の公教育は」
(動詞)falls short of 〜「〜には達していない」
(目的語)providing …「…を提供する」
すなわち、「国の公教育は…を提供するまでには達していない」というのが大枠の意味です。あとは細かい修飾語句がくっついているだけです。では、続けてポイントのA。そうした修飾語も含めて細かく区切って見ていきましょう。
the state schooling system,「国の公教育は(→どんな公教育?)」changed by successive governments「歴代の政府によって変えられた(→どんな政府?)」of different political ideology,「政治的イデオロギーが異なる」
ここまでが主語と主語に付く修飾語。欲張らずにいったんここで立ち止まって意味を考えてみましょう。要するに、韓国の公教育は内閣が変わるたびに(各内閣はそれぞれ政治的イデオロギー、簡単にいうと政策が異なるため)コロコロ変えられてきたというわけです。この辺りの事情は「ゆとり教育」を推進したかと思うと、学力低下の問題が出てきて、急に「ゆとり教育」を撤回してしまう日本の教育と同じですね。では、そんなコロコロ変わって一貫性のない韓国の公教育は、国民にとってどうなのでしょうか?この先に書いてあります。
falls short of providing「(公教育は)…を提供するまでには達していない(→何を提供する?)」the education「教育を(→どんな教育?)」on which South Korean society places such importance.「韓国社会が重視する(教育)」
最後のon which以下がやや難しいですね。place importance on 〜で「〜を重視する」という意味。これがeducationを修飾しています。またここで使われているsuchは単なる強調。すなわち「(コロコロ変わる公教育は)韓国社会が重視するような教育を(国民に)提供してくれるまでには至っていない」要するに「十分満足いくレベルではない」ということです。最後の文は「何をすべきかについて合意があまりない」ということ。
このように細かく区切って考えていくと理解しやすくなります。最後にポイントのBですが、これはAともつながってきます。細かく区切って読む際には、今やったように左から右に、英語の順番どおりに読んで解釈していくことを意識してください。日本語に訳しながら、前へ前へと戻って読んでいく「返り読み」は、時間がかかります。そして何より分かるものも分からなくなってしまいますよ。
:なるほど。複雑な文章はこうやって読んでいけばいいんですね。
最後にこのパラグラフで出てきたfall short of 〜という表現を取り上げます。shortは「短い」という意味のほかに、「(何かが)不足している」という意味もあります。「不足している」のshortが使われた表現を以下にまとめておきます。セットで覚えてしまいましょう。
Vocabulary Pocket
【「不足している」のshort】
be short of 〜:「〜が不足している」
run short of 〜:「〜が不足する」
fall short of 〜:「(基準・期待など)に達しない」
shortage:「不足」※名詞形
以上で今回の講義は終わりです。また来週。
Exercise解答
Q1(1) dawn (2) lack (3) outnumber
Q2 home:(韓国)国内、up:起きている
Q3 公教育は政府が変わるたびに変えられ一貫性がないから。
Q4 I agree English is important for your child's career, but don't you think he/she is studying too hard? Childhood is a very important time for developing emotionally. If your child has less time to play with other children, he/she may not develop good social skills. など
一口コラム @ それってほんとに「熟語」ですか?
英文を読んでいると、いわゆる「熟語」と呼ばれるものに出くわすことがあります。そんなとき「また知らない熟語が出てきた」と思ってあきらめてしまっていませんか?
「熟語」の定義は非常にあいまいで、もちろんbite the bullet「困難な状況に立ち向かう」のように、知らなければ意味の分からないものもあります。しかし本文で出てきたpull downのように、字面から意味を類推できるものがあることも、また事実です。例えばlook back「後ろを見る」から「振り返る」、また文脈によっては「回想する、思い出す」、などは別に意味を暗記していなくても、理解することが可能です。
あまり「知っている・知らない」にとらわれず、「こんな意味かな」と類推していく習慣をつけましょう。もちろん覚えることは大切ですが、全てを暗記することなんて無理です。こうした類推する力をつけることで、暗記しきれない部分を補うことができ、さらに「英語のセンス」ともいえるべきものが徐々に養われてきます。
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