続けて第2パラグラフ。要約すると「1938年の11月9日から10日にかけて起こった水晶の夜事件の犠牲者を追悼する(pay tribute)ために、(ドイツの)メルケル首相やユダヤ教の指導者がベルリンにあるドイツ最大のシナゴーグに集まった」ということ。
ちなみに、ここに出てきた tribute がQ1(2) の答えでした。「賛辞」「尊敬」という意味を持っていて、pay tribute to 〜で「〜に敬意を表する」。ここでは死者に対する敬意なので「〜を追悼する」という意味になります。ここで気をつけてほしいのは、動詞は pay が使われるということ。日本語でも「敬意を払う」と言いますね。ほかにも pay を使った表現をまとめておきましょう。
Vocabulary Pocket
pay attention to 〜:「〜に注意を払う」
pay homage to 〜:「〜に敬意を表する」
pay honor to 〜:「〜に敬意を表する」
pay notice to 〜:「〜に注目する」
pay a compliment to 〜:「〜にお世辞を言う」
pay a visit to 〜:「〜を訪問する」
すべてpay + A + to 〜という形ですね。「Aを〜に向ける」というニュアンスでとらえておくと分かりやすいと思います。
続けて第3パラグラフ。このパラグラフは難しいので、細かく区切って見ていきましょうね。まず主語が長いですが、要約すると「ユダヤ教の指導者の Knobloch さんは言った」ということ。では、Knobloch さんの言った内容をじっくり解説しましょう。
she hoped「彼女は望む(←何を?)」、a reminder of「〜を思い出すことは(←何を思い出す?)」、the atrocities「その残虐行為を」、would rekindle「再び火をつける(←何に火をつける?)」、Germans' commitment to「ドイツ人の〜に対する強い姿勢に(←何に対する姿勢?)」、tolerance「片寄らない物の見方」、in the face of「〜に直面したときに(←何に直面?)」、resurgent far right「再びよみがえる極右に」
: 文の構造は分かったけど、まだ何が言いたいのか分かりません!
ここは補足説明が必要ですね。far right「極右」とは、この場合「ナチス」や「ファシズム」を指します。「その残虐行為(水晶の夜事件など)を思い出すことは、極右の台頭の際に片寄らない見方をするというドイツ人の姿勢に火をつける」とは、簡単に言うと「水晶の夜事件のことを忘れずに教訓としていれば、たとえ将来ナチスのような極右が台頭してきても、(盲目的に支持したりせず)ドイツ国民が片寄らない見方ができることを望む」ということです。文の構造だけでなく、書かれている内容も難しいパラグラフでしたね。
続けて第4パラグラフ。まずは4行目の some 1,200 people に注目。これは前回扱いました。数字の前に置かれた some は「約〜」という意味でしたね。本文では some 1,200 people なので「約1,200人の人々」ということ。全体を要約すると「『(水晶の夜事件の)記憶を残していくことは私たちの義務(responsibility)です』と、自身は6歳のときにミュンヘンで水晶の夜事件を目撃した Knobloch さんは、ベルリンの Rykestrasse シナゴーグに集まった約1,200人の人々に語った」。
: 先生、2行目の who の前にカンマが付いていますよね。普通の who とカンマが付いた who はどう違うんですか?
なるほど。大切な質問なので、いったん本文を離れてじっくり解説しましょう。まず who や which を難しい言葉で「関係代名詞」といいます。ただ「関係代名詞」という名前だけ見ても、何だかさっぱり分かりませんね。最初に名前を付けた人のセンスを疑います。分かりやすく言うと、「文章が名詞を修飾するときに使われるもの」と覚えておきましょう。例えば「女性」という名詞を、何か言葉を使って修飾してください。
: 「きれいな女性」とか「背の高い女性」とか…
そうですね。そのように形容詞で修飾する場合、修飾語は a beautiful woman や a tall woman のように前に置きます。それに対して「隣に住んでいる女性」や「私が愛した女性」のように、文章が「女性」という名詞を修飾する場合に使われるのが関係代名詞です。
The woman who lives next door has a cat.(隣に住んでいる女性は猫を飼っている)
ここまではOKですか?では、続けてカンマが付いた場合を考えていきましょう。まとめると、以下のような違いがあります。
@カンマのない関係代名詞:直前の名詞を修飾する
Aカンマのある関係代名詞:直前の名詞に後ろから情報を加える
上記の通り、カンマが付いた場合(A)は、直前の名詞に後ろから何らかの情報を加えるはたらきがあると覚えておきましょう。
This is Emily, who lives next door.(こちらはエミリーさんで、私の隣に住んでいます)
さて、勘のよい人は気づいたと思いますが、結局@もAも、広い意味では直前の名詞を説明するものなので、大差はありません。よってどちらの場合でも、関係代名詞を見つけたら「直前の名詞の説明が始まるな」と予測して、左から右に読んでいけばOKです。ただし、以下のようなケースだけには気をつけてください。
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固有名詞の後では、 基本的にカンマ付きの関係代名詞を用いる
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@のようなカンマなしの関係代名詞は直前の名詞を修飾します。修飾するということは、言い方を変えると「限定する」ことです。例えば Emily who lives next door とすると、「(他にも何人もエミリーがいる状況で、その中でも)隣に住んでいるエミリー」と限定する意味になってしまいます。もちろん、そういう意味で使う場合はよいのですが、これは特殊なケースですね。細かい例外を挙げればきりがないですが、基本的には固有名詞の後ではカンマ付きの関係代名詞を使うと覚えておきましょう。本文でもそうなっていますね。
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