(1) come over here
over、 at、 in、 onなど前置詞と呼ばれる単語は私たち日本人にとってはきちんと理解して使い分けするのが難しいものです。どの前置詞を使えばいいのか迷ったことのある人も多いでしょう。前置詞を理解するには多少の慣れが必要ですが、その単語の持つニュアンスを把握すれば意外とすんなりと正しい使い方が身につきます。いくつか例を紹介しましょう。
onはものに直接接しているものを表す単語です。ですから、「机に物を置く」というような場合にはput ~ on the deskと表現します。接していなければaboveです。壁に何かを掛けるときも、壁に接しているならばonを使います。
atは何かをめがけるという意味合いを持ちます。look at〜(〜を見る)、やthrow・・・ at〜(〜に・・・を投げつける)という熟語を思い浮かべればそのイメージがわくでしょう。場所を示す前置詞ではinは比較的広い範囲、 atは狭い範囲を示すと覚えておけばいいでしょう。
さて、「こちらにおいで」という日本語を英訳するとき、まず思い浮かぶ動詞はcomeです。それではその後につづく前置詞は何でしょう。すぐに思いつくのはonでしょう。本文の例ではcome on hereとしても間違いではありません。では、なぜアンドリューはあえてcome over hereと言ったのでしょう。over には「わざわざ」というニュアンスがあります。ですからcome over hereと言うと、「(ちょっと遠回りをしてでも)こっちにきてごらん」という雰囲気がかもし出されます。離れた場所から来る、テーブルなどをよけて来る、何かの作業を中断して来る、などといったイメージがcome over hereにはあります。おそらくアンドリューはちょっと離れているところにいるミカに声をかけたのでしょう。そこからテレビを見ている自分のところに呼んだために、come over hereと言ったのです。
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(2) I bet those aren't even their houses
I bet〜は「〜に賭ける」というのがもとの意味です。それが転じて、「〜に違いないと思う」という意味で使われるようになりました。I bet〜は決まり文句として、このまま覚えてしまいましょう。
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(3) you've never been to a live fireworks show in Japan, have you
これは付加疑問文と呼ばれる文体ですね。肯定文の形をしていながら、末尾だけで疑問文を表します。前半部分が肯定なら付加疑問文は否定形に、逆に前半が否定形なら付加部分は肯定(本文がその例)の形になります。疑問文と呼ばれていますが、「〜ですか」と相手にものをたずねるというよりは「〜ですよね」と念を押す意味合いで使われるものです。
さて、付加疑問文で難しいのはそれに対する受け答えです。本文ではミカがアンドリューに「花火大会を生で見たことがないでしょう?」とたずねます。もし、あなたがアンドリューで、花火大会を生で見た経験がなかった場合、どう答えますか。多くの人が「うん、見たことがない」と答えるのではないでしょうか。英訳するとYes, I haven't.です。ところが、これはとても矛盾に満ちた英語なのです。なぜなら、Yesとhaven'tが同じ文章内で使われることがありえないからです。
「花火大会を生で見たことがないでしょう?」とたずねられたとき、日本語では相手の聞き方に対して肯定か否定かを決めます。「見たことがないでしょう?」という否定形での聞き方が事実(=見たことがない)と合っているので答は「うん、見たことがない」と肯定になります。「見たことがある?」と肯定形で聞かれれば、聞き方が事実と違うので「いや、みたことはない」となりますよね。設定を逆にしてみましょう。もし、生の花火大会を見たことがあるなら、「見たことがないでしょう」と聞かれれば、相手の聞き方が事実とは違うので「いや、見たことはあるよ」と否定形で答えますし、「見たことがある?」と聞かれれば「うん、あるよ」となるでしょう。
英語ではこうはいきません。英語では相手の聞き方にかかわらず、「生で花火大会を見たことがあるかどうか」という事実のみで肯定か否定かが決まります。経験があるならば相手のたずねかたが肯定形であろうが否定形であろうが、答はYes, I haveです。経験がないならばNo, I haven'tです。Yes, I haven'tという答がありえないということがこれでわかりますね。今回の本文には他にもいくつかの付加疑問文が使われています。それに対する受け答えを確認してみましょう。すべて、事実に基づいてYesかNoかが決まっています。
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(4) if you actually saw a live firework display, you'd be scrambling up on rooftops too.
これは仮定法を使った文章です。仮定法については別の機会に詳しく解説しますのでここでは簡単に触れるだけにします。英文法の勉強の中で仮定法は現在完了と並んで難しいものの代表格です。でも、仮定法は形だけしっかり覚えてしまえばそれほど理解が難しいものではありません。しかも、数学の方程式のように公式があるので、それを理解すれば何もおそれることはありません。
仮定法には「仮定法過去」と「仮定法過去完了」があります。こういった文法用語を覚えなくてはいけないと思うから英語は難しいのです。こんな名前は忘れて結構です。どうせ社会に出たら何の役にも立ちませんから(笑)。ただ、仮定法過去は「現実とは違う希望や予想を表現する」、仮定法過去完了は「過去の事実と違う事柄(ときに後悔の念)を表現する」ことは覚えておきましょう。
そして、それぞれの形だけはしっかりと頭に叩き込みます(これぞ体育会式!)。仮定法過去は「If+主語+動詞過去形, 主語+{would; could; might}+動詞現在形」です。仮定法過去完了は「If+主語+過去完了(had+動詞過去分詞形),主語+{would; could; might}+現在完了(have+動詞過去分詞形)」です。
Cの文は仮定法過去の形をとっていることがわかりますね。ですからこれは現実とは違う予想です。仮定法過去の基本に忠実な文章なので、しっかりと覚えましょう。
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(5) here you go
本文のように、人に物を渡すときなどに使われる便利な言葉です。このまま覚えましょう。同じような用途の表現にHere you areがあります。
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(6) Actually
もともとの意味は「実際に」という意味の単語ですが、口語ではもう少し広い意味で使われるようです。相手の言ったことをやんわりと否定したり、言い訳をしたり・・・・。この本文の場合は、日本語の口語で言う「っていうかぁ」というニュアンスに一番近いかもしれません。
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