●英字新聞社ジャパンタイムズによる英語学習サイト。英語のニュース、よみもの、リスニングなどのコンテンツを無料で提供。無料見本紙はこちら
英語学習サイト ジャパンタイムズ 週刊STオンライン
『The Japan Times ST』オンライン版 | UPDATED: Wednesday, May 15, 2013 | 毎週水曜日更新!   
  • 英語のニュース
  • 英語とエンタメ
  • リスニング・発音
  • ことわざ・フレーズ
  • 英語とお仕事
  • キッズ英語
  • クイズ・パズル
  • 留学・海外生活
  • 英語のものがたり
  • 会話・文法
  • 週刊ST購読申し込み
     時事用語検索辞典BuzzWordsの詳しい使い方はこちら!
カスタム検索
 

小さな英語教室

By Yuri Kiba / キバ・ユリ

オーストラリア人の夫と結婚し、シドニー在住歴24年の筆者が、学校とは離れた教育の場で、子供たちを見ていて感じたこと、考えさせられたことを紹介するコラムです。
筆者へお便りを送る

Yuri Kiba / キバ・ユリ

Vol. 25 : 節分と焼きそばと…

 都心に住んで初めて「火の用心」の拍子木を聞いたとき、驚くと同時にいいものだなーと思いました。日の入り間際には、子供たちが「マッチ一本火事のもとー」とすごい声を張り上げ、近所の人たちの笑いを誘います。

 そして、ビジネス街に引っ越し、拍子木が消えた今、妹の主人が撮影し、シドニーに送ってくれた小さな夏祭りのビデオの行方が気がかりになりました。なぜかというと、半被(はっぴ)を着て、公園の屋台で焼きそばを作っている息子が映っているからです。

 大学を終え、一ヵ月ばかり実家に滞在したとき、妹に駆り出されたのでした。「キャベツを入れるよ!」とか「ハイ、ソース」などという近所の人たちの声が背後に聞こえます。屋台は予算上、全部自治体の手作りです。夕方から子供たちが現れ、暗くなると大人たちも来て大盛況。最後はこれまた手作りのしだれ花火で終わりです。

 妹は県庁所在地の中心部に住んでいますが、驚くほど地域活動が活発です。これとは反対に、近接している両親が住む地域は年寄りばかりで、時たまのドブ掃除以外は目ぼしい活動は皆無。これはその地域に有志がいるかどうかの問題なのだろうと思います。妹の主人は自治体青年部の部長を15年間も務めており(ある意味では、なり手がいないのですが)、幾多の行事を毎年手がけています。当然、妹も巻き込まれて、「大変よー」とぼやいていますが、いざ、その日になると、とても楽しいようです。

 今まで妹から聞いた話の中でのハイライトは節分でしょうか。鬼の通る経路を知らせるマイクを備えた車が出て、「今、鬼は○○番地の○○さんのお宅におります。次は、××さんのお宅です」と放送をするのだそうです。「驚かせないように」という配慮よりも、「お布施を用意しておけ」というのが本音だというので笑ってしまいました。

 自治会では鬼のお面だけは本格的なものを購入しました。鬼は例年、妹の主人がなるのですが、彼は子供のころから劇団に入り、ラジオ放送にもレギュラー出演。しかも声の大きさと演技力を買われて県最大の祭りの司会者にもなった人物なので、迫力はすごいのだそうです。妹に言わせると、「プッチーニ(飼い犬)も逃げ出す」ほどだとか。

 ただ、ときには交代する年もあって、近所の理髪店のご主人が鬼になったとき、姑が玄関先で「いつもお世話になっております」とあいさつし、鬼も思わず「こちらこそ」と言って頭を下げたとかで大笑い。鬼を交代する理由は、「鬼だって大変よ。100軒以上の家から豆まかれるんだから…」。

 毎年、各家庭がまく豆の量は多いのですが、自治体が用意する豆は「なるべく節約」という警告を出した年があったそうで、その警告を忠実に守りすぎ、各戸で5〜6粒しかまいてこなかったために豆が大量に余り、「毎日ボリボリかじってるわよ」などとこぼしていたときもありました。

 遠足には、息子が8歳のころ、主人も一緒に参加し、近くの山に登って楽しいときを過ごしましたが、主催者の息子(私の甥)が迷子になり、皆で探し回ったこともあります。こういったコミュニティーの活動はいろいろな思い出を作ってくれます。笑いを生み出す元祖でしょうか。

 妹の話を聞いていると典型的な地方都市の問題や現象が目に見えるようで、興味をそそられます。現在、県庁所在地の中心部はドーナツ現象で(これは私も肌で感じました)、次第に子供の数が少なくなってきています。娘の小学校の始業式に毎年行っていた妹は、「昔は、新入生を迎える拍手なんて延々と続いたんだけど、今なんか1分もかからないもんね」と少し寂しそう。来年は、市の中心にある3つの小学校が統合するそうです。その数少ない子供が一人、最近、郊外の学校に移ったとか。妹によると、「統合前だからクラスには7、8人しかいないんだけど、全部外国人でさ、『僕はお休み時間に日本語をしゃべりたい』って…」。東京に近い割には家賃が安いので、外国人にとっては暮らしやすいのでしょう。地方の、新しい人口構造の変化です。

 シドニーに帰ったら、夏祭りのビデオを掘り起こしてみようと思います。そこから改めて見えてくるものってあるのかもしれません。

英語のニュース |  英語とエンタメ |  リスニング・発音 |  ことわざ・フレーズ |  英語とお仕事 |  キッズ英語 |  クイズ・パズル
留学・海外就職 |  英語のものがたり |  会話・文法 |  執筆者リスト |  読者の声 |  広告掲載
お問い合わせ |  会社概要 |  プライバシーポリシー |  リンクポリシー |  著作権 |  サイトマップ