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記者ほど素敵な商売はない

By Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

ジャパンタイムズ運動部記者、アメリカンフットボールライター、TV解説者のさまざまな顔を持つ生沢浩が15年間の記者生活のなかで見聞きしたこと、思ったことなどを紹介するコラムです。
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Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

Vol. 80 : やっぱり記者ほど素敵な商売はない

 今の仕事についていなかったら、自分はどんな職業をしているのだろうと考えることがあります。僕が新聞記者兼アメリカンフットボールライターという仕事をしているのは学生時代のアメフトとアメリカ留学の経験があるからです。そのどちらが欠けていても今の僕はあり得ません。

 僕の学生時代(80年代後半)は日本がバブル期に突入しようとする時期でした。就職活動をする4年生のときはまさにバブルの真っ只中。チームメートたちは銀行や証券、商社を就職先として選ぶ人が多かったのです。また、体育会に所属していれば先輩の推薦でこういった職種への就職が有利になるといった時代でもありました。僕も留学をしていなければ銀行マンになっていたかもしれません。

 でも、このコラムでもいつか書きましたが、僕は翻訳家になりたいと考えていたので、卒業する前にアメリカに留学することになりました。留学先のペンシルベニア州ピッツバーグで出会ったある先輩から英字新聞の記者になることを勧められたのでした。

 入社して運動部に配属された僕は、たまたま取材先で出会ったアメフトの専門誌の編集者から声をかけられて、その雑誌に毎月寄稿するようになりました。これがフットボールライターとしての第一歩でした。1998年にテレビ局から声がかかるようになり、以来テレビでNFLの試合解説もしています。

 今までいろんなメディアで仕事をしてきました。本業である新聞はもちろん、テレビ、ラジオ、インターネット、映画のパンフレットなどなど。書籍は共著を含めて3冊手がけました。来年には僕がライナーノーツを記したNFLのDVDが発売される予定です。

 この仕事の魅力の一つは自分の書いたものが形になることです。そして、それを読んでくださった(テレビの場合は見てくださった)人からの反応を得ることができるのも貴重な経験です。僕は3年ほど前にある事情からアメフト雑誌への寄稿を辞めたことがありました。自分の書いたものの発表の場はジャパンタイムズと自分のホームページのみとなったのです。そんな時、ある読者から手紙をもらいました。その方は僕が雑誌に書く記事を丹念に読んでくださっており、毎月楽しみにしてくれていたそうです。しかし、僕が寄稿を止めてしまったために読むことができず、また、インターネットの環境も整っていないのでとても残念だと言ってくださいました。この手紙をきっかけに、僕はまた雑誌への寄稿を再開したのでした。

 人に感動を伝えることができるのも記者の大切な仕事の一つです。スポーツは人を感動させます。僕たちスポーツ記者はその感動を伝えるために記事を書きます。記事を読んでくださった人が試合の感動を共感してくれれば、記者にとってこれほどうれしいことはありません。「生沢さんの記事を読んで涙が出ました」と言われたときのうれしさは、おそらく一生忘れないでしょう。

 文章を書くという作業は決して楽なものではありません。このコラムで幾度となく触れてきたように、プロならば正しい英語や日本語を使わなければいけないし、そのためには勉強も必要です。たくさんのことを知らなければならないし、知識を正確にかつ面白く伝えるだけのテクニックも必要です。

 でも、「この試合をどのように書こうか」とか「この感動をどう表現したら一番伝わるだろうか」と考える時間というのはとても楽しいものなのです。僕が一番好きなのは、文章の出だし(冒頭部分)の文章を考えているときです。「この題材をどう生かそうか」と頭をひねるのは、いい食材を目の前にした料理人の気質に似たものがあるかもしれません。自分の持っている知識やテクニックを総動員してあれこれと悩むのは、文章を書く人間に与えられた至福のときなのだと僕は思います。

 こう考えると僕は銀行や商社には向かなかったんだろうなと思います。やっぱり、新聞記者ほど素敵な商売はない、そう思うのです。

 80回もの長期連載となったこのコラムも今回で最終回です。以前に執筆した「スポーツ名場面」、「日常生活に見るスポーツ英語」、「スポーツ名言集」を含めると足掛け4年ほどSTオンラインにコラムを書いてきました。ちょっとこのあたりでお休みを頂きたいと思います。

 とは言え、これでお別れではありません。すでに編集者と新しい企画を練っているところです。年が変わるころに新しいコラムでまたお会いすることになるでしょう。それまでどうぞ皆さん、お元気で。長い間のご愛読、本当にありがとうございました。

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