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小さな英語教室

By Yuri Kiba / キバ・ユリ

オーストラリア人の夫と結婚し、シドニー在住歴24年の筆者が、学校とは離れた教育の場で、子供たちを見ていて感じたこと、考えさせられたことを紹介するコラムです。
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Yuri Kiba / キバ・ユリ

Vol. 54 : 今日の市場経済 − 企業モラルの低下と教育

 今、アメリカの繁栄に影が見られるとはよく言われますが、私自身アメリカに住んだことはなく、いろいろ言ってもその経済力はいまだ世界一ですから、実感がわかないのが正直なところ。しかし、アメリカ先導の市場経済が行き詰まり、企業のモラルが低下している現象は、最近読んだ数冊の著書を通して「なるほど」と思うところがありました。

 それらの本は、たまたま手元にあった、映画監督Michael Mooreの"Stupid White Man"と、なぜ私の部屋にあるのか分からないノーベル経済学賞受賞者Joseph Stiglitz著"Globalization And Its Discontents"。そして、題名にひかれて最近買った藤原正彦著『国家の品格』です。自分でもすごいコンビネーションだと思い、混乱するのではと懸念しながらも暇を見つけては平行して読んだのですが、底辺に共通するところがあって大変面白いものでした。

大企業のモラルの低下を最も批判しているのはムーアです。ここでは、教育の話に留めますが、大企業が教育機関を、自社商品の販売促進の媒体として利用している話には寒気がし、日本は、将来、真似てほしくないと切に願いました。

私の世代もJISマークとやらを集めて学校へ持って行きましたが、ムーアの話はそんな生やさしいものではありません。あるスープの製造会社がラベル約10万枚でコンピューター1台を寄付するのを受け、生徒たちに商品購入のノルマを課している学校があるそうです。

 また、ソフトドリンクの大手3社は、31州240学区内で、一校につき一社が独占販売する権利を得ました。会社が教育助成金を払う代償として、校内は広告で埋まり、教科書やノートに会社のロゴが入り、自動販売機が校内のいたるところに設置され、授業中飲むことを許可した学校もあるとか。巨額な助成金や寄付に見合う利益を上げるのですから、かなりの量の商品が校内で売れるのでしょう。ムーア曰く。「どおりで近頃肥満児が増えてきたと思わないか?」。教育費不足から企業と提携する地域というのは、あまり裕福でないと思われますが、ハリケーン・カトリーナの、黒人の被害者たちが例外なく異様に太っており、早めに逃げた富裕層がスリムだったと感じたのは私だけだったでしょうか。

 極めつけは、ソフトドリンクの最大手が、子供たちに、商品のディスカウントカードを配布するアイデアを全国規模で競わせ、優勝した学校に1万ドルを寄付するというもの。こうなると、金のためには何でもするというモラルの欠如を子供たちに教えているようなものです。

 学校とソフトドリンク会社提携の草分けであるというコロラド州。その州で、2人の生徒が12人を射殺したコロンバイン高校のある学区では、理科の授業に、提携した会社のソフトドリンク商品を採り入れ、その分析、味見、そして工場見学をさせているとか。

 そのほかにもあ然とする話は続きます。800万人の子供たちが学校で視聴するニュース番組の8割は宣伝であるとか、小学校教科書の計算問題に、チョコレート会社の商品が使用されているとか…。また、高校の「経済」には大手自動車会社が参入し、会社が教科書を作成し、その経営方針を模範的な経営として生徒たちに教えているとか。

 ムーアによれば、この現象は、国の予算を、教育より爆撃機に優先させたブッシュの愚策にあると言うわけですが、確かに繁栄に影が見え始めたころに選ばれた大統領というイメージは拭えません。

 日本が開国後、試行錯誤の上にも発展してきた理由の一つに、寺子屋や藩校などに培われてきた一般の日本人の教育の高さが上げられています。今、ムーアが指摘する、4000万人のアメリカ人が小学校4年以上の読み書きができないというのは、国力衰退を暗示している現象なのでしょうか。

 アメリカで、市場経済の弊害が問われている今、藤原正彦氏の『国家の品格』はタイミングよく、また説得力もあると思います。日本の英語教育に関しても書かれていており、私自身思うところもありますが、それについてはまた後で。スティグリッツの本は、IMFや世界銀行での自分の経験を書いたもの。卓上の経済理論ではなく、事実に対する批判で、貴重であると同時に大変面白い著書です。題名の割には平易な英文ですから、暇があったら読んでみたらいかがでしょう。

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