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スポーツ名勝負・名場面

By Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

スポーツ記者、生沢浩の13年に及ぶスポーツ記者生活の中で、忘れることのできない名勝負・名場面をピックアップして、それを英文記事でどのように伝えたのかを紹介しています。
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Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

Vol. 3 : 熱闘!西武対ヤクルトの日本シリーズ

ひとつのスポーツを長年取材していると、選手の成長が手に取るように分かる瞬間があります。技術的にも精神的にも選手が一回り大きくなるのを目の当たりにするのは楽しいものです。そして、与えられた舞台が大きければ大きいほど、不思議と成長の「伸びしろ」も大きくなるようです。

 今回の名場面はそういった選手の成長を間近に感じた瞬間、1992年の日本シリーズを取り上げます。

第3位 熱闘!西武対ヤクルトの日本シリーズ
1992年10月18〜26日

NFLは現在32チームで構成され、16チームずつアメリカンカンファレンス(AFC)とナショナルカンファレンス(NFC)に分かれる。各チームは週に1試合を行ない、1週のオフを挟んで17週間かけて全16試合のレギュラーシーズンを戦う。試合数よりもチーム数のほうが多いから、当然1シーズンで全てのチームと対戦するわけではない。

 各カンファレンスからレギュラーシーズンの成績の上位チーム6チームずつがトーナメント方式のプレーオフに進出し、それぞれのカンファレンス優勝チームがNFL王座決定戦を行なう。これがスーパーボウルだ。

 MLB(ワールドシリーズ)、NBA(NBAファイナルズ)、NHL(スタンレーカップ)の王座決定戦は全て7回戦制(英語ではbest of sevenという)で行なわれるが、このスーパーボウルは1回こっきりで勝敗を決する。アメリカンフットボールは消耗の激しいスポーツなので、7試合もやってられないのである。

プロ野球を巡る昨今の最大の話題といえば近鉄とオリックスの合併、1リーグ制への移行問題だ。いろんな報道を見ていると、ファンはどちらかというと現状の2リーグ制を支持する傾向が強いようだ。その理由の一つは日本シリーズではないだろうか。

 入社(91年)してからしばらくは、僕にとって1年で最も重要な取材は日本シリーズだった。7回戦制だから、いつ終わるか分からない。プロ野球で最も重要な試合を毎日取材するプレッシャーは、まだ若手記者の僕には決して小さいものではなかった。それだけに疲労もしたし、充実感も覚えたものだ。

 僕がこれまで取材した日本シリーズで最高のものを一つ挙げるとすれば、92年の西武ライオンズ対ヤクルト・スワローズだ。結論から言うと、西武が4勝3敗でヤクルトを下し、日本シリーズ3連覇を達成した。野村克也監督率いるヤクルトは14年ぶりにリーグ優勝するも、日本一には届かなかった。

  しかし、この日本シリーズでの戦いが後のヤクルトの黄金時代をお膳立てすることになったと僕は思っている。この後ヤクルトは93,95,97,2001年と日本一に輝くセリーグの強豪球団となるのである。

 92年といえばまさに西武の全盛時代だ。82年から91年までの10シーズンで実にリーグ優勝が8回、日本一には7回も輝いている。そんな西武の選手たちにとって優勝はもう珍しいことではなくなっていた。勝ちすぎるとチームは時にマンネリ化し、けん怠感が生じることがあるが、当時の西武がまさにその状態だった。勝つのが当たり前になった雰囲気の中で、「優勝」も「日本一」も新鮮味や喜びが失われていた。

 一方のヤクルトは若手がのびのびと野球を楽しんでいる印象があった。野村監督のID野球の下、古田敦也が成長し、岡林洋一や西村龍次らの投手陣がチームを引っ張った。

 この2チームの対戦はいろんな面で注目された。西武の森祇晶監督と野村監督はともにキャッチャーの出身。頭脳派で知られる二人が、監督してどのような采配を振るうかにも注目された。ジャック・ハウェルとオレステス・デストラーデの大砲対決、古田対伊東勤のキャッチャー対決、豊富な投手陣の投げ合いなどが見所は満載だった。それでも、経験豊富な選手の揃う西武が有利の予想が多く、最も有力な説は4勝2 敗で西武の優勝というものだった。

 第1戦はヤクルトが杉浦亨のサヨナラ満塁ホームランで劇的に勝利したが、その後は西武が試合巧者振りを発揮して3連勝、早くも王手をかけた。西武の選手たちに余裕が見えたのを今でも覚えている。まるで大人と子供の試合だった。

 ヤクルトが意地を見せたのはここからだ。第5,6戦とそれぞれ1点差で逃げ切り、常勝軍団の西武を追い詰め、第7戦に持ち込んだのである。西武の選手の顔色が変わった。第4戦後に見せた余裕の表情は、もはやだれにも見られなかった。

 僕は、0−1で惜敗した第4戦を含め、この3試合のうちにヤクルトの選手が大きく成長したように思う。接戦は大きな緊張感を生む。それが、日本シリーズの舞台ならなおさらだ。そういった試合を戦う中で選手は精神的に大きく鍛えられる。練習ではなく、試合の中の緊張感だからこそなせる業である。

第6戦をサヨナラホームランでものにしたヤクルトには勢いがあるはずだった。しかし、これが限界だった。選手の疲労はピークに達していた。印象的なシーンがある。試合中、ふとヤクルトのベンチを見た。古田がまるで魂の抜けたような顔をして、ボーッとしているのだ。目の焦点すら合っていないようだった。この姿が古田の疲労を如実に物語っていた。日本シリーズで、キャッチャーの打撃成績はよくないのが普通だ。日本シリーズという短期決戦では相手のデータ収集が重要で、キャッチャーは守備に没頭させられるからだ。古田も例外ではなかった。のちに古田は「日本一のキャッチャー」と呼ばれるようになるが、この年の日本シリーズの経験が彼を大きく成

 疲労困ぱいのヤクルトは、目を覚まされた西武の敵ではなかった。最終戦は2−1で西武が勝ち、日本一を手にした。しかし、このシリーズで一回り大きくなったヤクルトは、翌年には日本一を奪回することに成功するのだ。

"I was honestly worried that we would lose 4-0 and I didn't expect us to reach Game 7. The series has been a great experience for my players and I hope this will be a step for the future."

(正直言うと、0勝4敗で負けるのではないかと心配しており、第7戦まで戦えるとは思っていなかった。この日本シリーズは選手にとって素晴しい経験だったし、これが将来に向けてのステップになってくれればいいと思う。)

 確かに野村監督もこの日本シリーズでの戦いぶりに手応えを感じていたのがこれでわかる。そして、彼の「予言」が正しかったことはこの後のヤクルトの戦績を見れば一目瞭然(りょうぜん)である。

 せっかくなのでこの第7戦の展開を追いながら、野球でどんな英語が使われるのかを見てみよう。まず先制したのはヤクルトだ。

The Swallows took a 1-0 lead in the bottom of the fourth inning. After Tetsuya Iida doubled, Yukio Arai attempted a sacrifice bunt to advance Iida to third. But (Seibu pitcher Takehiro) Ishii picked up the ball and his wild throw to first gave up a run.

the bottom of the ~ inning というのは「〜回の裏」の意味。逆に表はthe top of the ~ inningという。doubleとは二塁打を打つこと。単打はsingle、三塁打は tripleを使う。sacrifice buntは犠牲バント。この文の訳は「ヤクルトは4回の裏に 1-0とリードを奪う。飯田哲也が二塁打を放った後、荒井幸雄が送りバントを試みるが、(西武の)石井丈裕投手がそのボールを1塁に悪送球し、点を許してしまった」

 西武が追いついたのは7回の表。DH制のため普段はバットを握ることすらない石井が同点打を放った。

Okabayashi intentionally walked Tsutomu Ito so he could pitch at Ishii, who never bats in the Pacific League because it has a designated hitter system. Ishii, however, batting because this game was being played under Central League rules, hit an RBI single over center fielder Iida to make the score 1-1.

 intentionally walkは敬遠すること。designated hitter systemはDH制。RBI(=run batted in)は打点のこと。訳は「岡林は伊東勤を敬遠し、DH制のためパリーグでは普段打席に立たないピッチャーの石井と対戦することにした。しかし、この試合はセリーグのルールで行われているために、バッティングをしなければならない石井はセンターの飯田の頭上を抜くタイムリーヒットを打ち、同点としたのだった」

 試合は延長に持ち越され、最後に決勝点を挙げたのは秋山幸二だった。

Koji Akiyama drove in the game-winning run on a sacrifice fly to break a 1-1 tie in the top of the 10th inning.

drive in は打点を入れること。訳は「秋山幸二が10回の表に1−1の均衡を破る決勝点を挙げた」となる。

★日本シリーズは今まで何度も取材をしたが、この年が最も感動した。延長にもつれ込んだ試合が3試合もあり、第4戦以降は全て1点差で決着する接戦。好ゲームを見たという感動のあまり、頭が興奮してしまって文章が思いつかない。キーボードを叩く手も震えてタイプミスを繰り返すばかり。いつもより余計に時間をかけて記事を書いたことを覚えている。

 ただ、助かったのはこの当時はまだ日本シリーズがデーゲームだったことだ。試合が終わるのが5時ごろとしても締め切りまで十分に時間がある。ナイトゲームになってしまった今は、寒いし時間に追われるしで僕はあまり好きではない。

 日本シリーズといえばやはり昼間の試合という印象が強い。高校時代、ラジオを学校に持ち込み、授業中に隠れてイヤホンで聞いていたこともあった。バレないようにしていたつもりだったのに、「おい、今、どっちが勝ってる?」なんて先生に聞かれてヒヤリとしたこともあったっけ。怒られなかっただけよかったものだ。

 昨年は僕の大好きな阪神が優勝したので、プライベートで甲子園まで出かけてスタンド観戦してきた。スタンドで日本シリーズを見たのは初めて。ビールを飲みながら (もっとも、寒かったので途中から熱燗にしたけど)の日本シリーズ観戦も悪くない。でも、まさか次の阪神の優勝までまた18年も待たなければいけないなんてこと、ないよね・・・・

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