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記者ほど素敵な商売はない

By Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

ジャパンタイムズ運動部記者、アメリカンフットボールライター、TV解説者のさまざまな顔を持つ生沢浩が15年間の記者生活のなかで見聞きしたこと、思ったことなどを紹介するコラムです。
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Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

Vol. 27 : 取材パスがない!

 前回は9月のアメリカ取材旅行でのハプニングを紹介しましたが、実はこれが吹っ飛ぶくらいのハプニングが後半に待ち受けていたのです。これはもう、トラブルといった方が適切かもしれません。そのトラブルが発生したのは二つ目の取材地、ニューヨークでした。

 僕がアメリカで初めて降り立った都市がニューヨークでした。1989年のことです。それから数えて今回のニューヨーク行きは4回目。なぜかニューヨークでは僕はハプニングに巻き込まれてしまうのです。最初に行ったときは現地に住む友人と連絡がとれず、初めての海外でとても心細い思いをしたものです。夜中に街を歩いていて「男の人に」お尻を触られたこともあります。ですから、今回もちょっといやな予感はしていたのです。そして、その予感は大事な試合取材当日に的中してしまいました。

 この日僕はインディアナポリス・コルツ対ニューヨーク・ジャイアンツの試合を取材する予定でした。この両チームの先発QBは兄弟で、NFL史上初の兄弟先発QB対決ということで注目された試合でした。

 試合開始は午後8時15分の予定。アメリカではいつも試合開始の2時間以上前に会場入りすることにしているので、午後6時にはスタジアムに着いていました。すでに駐車場ではファンたちがBBQを始め、テールゲートパーティを楽しんでいました。それを横目に、報道関係者入り口に向かいます。僕は事前にNFLの日本支部であるNFLジャパンを通じて取材申請をしていたので、入り口で身分証明証を見せればパスをもらえるはずでした。

 ところが!身分証明証を見せてもいっこうにパスを発行してくれません。受付が言うには僕の名前では取材申請が出ていないとのこと。申請が出ていない以上、入場を許可するわけにはいかないというのです。NFLは取材規制が厳しいので、事前に申請していないと決して取材を許してはくれません。

 NFLジャパンを通して取材申請しているはずだと言っても、「そんな連絡は受けていない」の一点ばり。「そんなに言うならそのNFLジャパンに電話して聞いてみろ」と言います。電話しろといわれても、ニューヨークの午後6時は日本時間の午前5時。そんな時間に連絡がとれるはずはないだろうといっても、受付は「そんなことは私の知ったことではない」という態度。本当にアメリカの受付嬢は態度が悪い!と、こんなことを愚痴っていてもしょうがない。

 幸い、僕はNFLの本部に務める国際広報担当A氏を知っていました。この人はリーグではとても力を持っている人なので、この人に連絡をとってもらおうとしました。ところが、「そんな人は知らない。電話もしてあげられない」とまたも冷たい態度。Aを知らない?お前はもぐりかと心の中で(口に出したらどんな仕打ちをされるか分かったものではないので)悪態をつきながら、「何とかしてみる。後で戻ってくる」といってとりあえずはその場を去ったのでした。

 何とかするといっても、これといった名案もなく、どうしようかと途方にくれるばかり。このときの僕の連絡手段は携帯電話のみ。パソコンはホテルに置いてあります。NFLジャパンの担当者の携帯電話に電話をするのですが、なぜかうまくつながらない。こうしているうちにも刻々と時間は過ぎていきます。「俺は何のためにニューヨークまで来たんだよ」と思い、情けなくなってきました。「やっぱりニューヨークとは相性が悪いんだな」などという考えまで浮かんできます。

 とにかく今できることを考えて見ました。ダフ屋からチケットを買えばとりあえず入場することはできる。でも、試合後にロッカールームに行って選手にインタビューすることはできません。それでは原稿は書けません。何より、ダフ屋が要求する300ドルなんて大金は持ち合わせていない。

 有効な連絡手段は電子メールしかない、そう考えた僕はホテルに戻ることに決めました。ホテルに帰ればパソコンが使える。メールを出せば何とかなるかもしれない。いや、なんともならないかもしれないけれどスタジアムの外でうろうろしているよりは100倍はまし。すぐに僕はタクシーを拾ってホテルに戻ったのでした(このタクシーでも料金をボッタくられたのですが、この緊急事態ではしょうがない)。

 ホテルに戻ると、すぐにNFLジャパンとNFL本部のA氏にメールを打ちました。待つこと30分。A氏から返信。「試合開始直前の今となっては何が出来るか分からないが、何とかしてみる」との心強い返事をもらいました。そのうちに試合が始まってしまいました。仕方がないのでホテルのテレビでメモを取りながらの観戦。

 さらに待つこと30分。今度はNFLジャパンからの返信。「再度確認が取れたからスタジアムに戻って欲しい」とのこと。急いでタクシーで試合会場に戻りました。今度はすんなりと入れたのですが、試合はすでに第2Q 途中まで進行していたのです。

 後から聞いた話ですが、取材申請は最初からきちんと出されていました。ですからこれはNFLジャパンや僕の落ち度ではありません。しかし、報道受付にまでその連絡が届いておらず、今回のトラブルの原因を作ってしまったらしいのです。ジャイアンツの報道担当部署は過去にもこれに似たような不手際があったとは別の記者から聞いた話。こちらとしてはいい迷惑ですが、それでも何とか試合会場に入れたのでホッと胸をなでおろしました。

 実はもう一人、日本から取材に来ていた人がいて、その人は結局中に入れてもらえなかったそうです。スタジアムとの往復に加えて、取材ができないのではないかという心配で余分な心労を強いられ、心身ともに疲れきった取材でした。記者って大変でしょ?

次回予告:「忙しい」は美徳か?

 普段、何気なく「忙しい」という言葉を使っていませんか。人に会うと「忙しい?」などと挨拶代わりに聞かれることもしばしばです。僕はこの言葉が気になって仕方がありません。現代人は忙しいという言葉をむやみに使いすぎではないでしょうか。忙しいってそんなに素敵なこと?

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