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記者ほど素敵な商売はない

By Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

ジャパンタイムズ運動部記者、アメリカンフットボールライター、TV解説者のさまざまな顔を持つ生沢浩が15年間の記者生活のなかで見聞きしたこと、思ったことなどを紹介するコラムです。
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Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

Vol. 29 : 記者になったきっかけ

 僕は新聞記者をして今年で16年目になります。ところが、始めから新聞記者を目指していたわけではありません。むしろ、マスコミにはいい印象を持っておらず、なりたくない職業の一つだったのです。そんな僕が新聞記者を目指すようになったのは大学のときに経験したアメリカ留学がきっかけでした。

 僕の学生時代はいわゆるバブル景気の真っただ中で、就職活動は完全な「売り手市場」でした。企業の求める社員数に対して学生数が圧倒的に足りず、一人の学生がいくつもの会社から内定をもらい、その中から最も条件のいい企業を選ぶことのできる時代でした。

 僕のように大学で体育会に所属してスポーツをしていた学生は特に人気が高く、銀行や証券会社などからは引く手あまたでした。そんななかで僕が就きたかった職業は「翻訳家」だったのです。

 文章を書くのが好きだった僕は、得意だった英語を生かしてものを書く仕事がしたいと思っていました。その答えが翻訳家でした。翻訳家の書く日本語が好きになれず、「自分ならもっとうまい日本語で書いてみせる」という思い上がった考え方があったのも事実です。

 翻訳家を目指す以上は本場の英語を勉強しなければならないと考えたのがアメリカ留学を志した理由です。大学3年生を終えたときに休学をしてペンシルバニア州ピッツバーグに行きました。思えば、このときに別の場所に行っていたならば僕は今ごろ、本当に翻訳家になっていたかもしれません。ところが、ピッツバーグで僕の人生を左右する出会いがあったのです。

 仲のよかった日本人グループの中に3つ年上の先輩がいました。その方はある飲料会社を退職して、MBAを取得するために留学していたのです。留学を終えて帰国した後はすぐに就職活動をしなければいけなかった僕は、いつもその先輩に就職の相談をしていました。あるとき、僕が翻訳家になりたいという希望を告げると、その先輩はこう言ったのです。「翻訳というのは他人が書いたものを違う言語で書くことやろ。なんで、自分自身でものを書くことを考えへんの?」

 この一言は当時の僕にとても重くのしかかりました。言われてみればその通り。自分の考えを表現することが文章を書く最大の楽しみであるはずです。翻訳では自分の考えは表現できない。それでも本当に翻訳家になりたいのだろうか、と僕は自問自答しました。

 でも、得意な英語は使いたい。文章も書きたい。どうすればいい?と悩んでいると、先輩は「英字新聞はどうや?あれなら英語も使って、自分の意見も書くことができるで」といってくれたのでした。英字新聞という考えはそれまでの僕の選択肢には全くありませんでした。まさに目からうろこが落ちるような気がしたものです。この瞬間から僕はジャパンタイムズの記者になることを目指したのです。

 このコラムを読んでくださっている読者の中には新聞記者を志している方はいらっしゃるでしょうか?新聞記者になりたいという人からよく、「自分は新聞記者に向いているだろうか」と質問されることがあります。いったい、新聞記者にはどんな人が向いているのでしょう?

 就職活動のマニュアル本などには「好奇心が旺盛であることが必要」などと書かれています。実は、僕はこれをあまり信用しません。僕自身、あまり好奇心が旺盛な方ではないからです。新聞記者である以上は、ある問題を突き詰めて研究する必要が少なからずあります。だからといって好奇心が必要というのは違うでしょう。プロである以上、必要であれば勉強も研究もしなければいけません。プロ意識を持っていれば、好奇心は人並みであれば十分だと僕は考えます。

 ではどんな人が記者に向いているでしょうか。

 まず、文章を書くことが好きでなければいけないでしょう。そして、自分の考えていることを他人に誤解されずに伝える力も必要です。読み手に誤解されない文章を書くというのは意外に難しいものです。自分は分かっていることはつい説明を省いて文を書いてしまいますが、これでは読者には正しく伝わりません。現役の記者でも、独りよがりの文章を書く人は意外に多いものです。他人に正確に理解される文章を書く能力は、たくさんの文章を書くことで身に付きますから、やはり文章を書くのを不得手としている人には向いていないでしょう。

 また、人に会うことが好きな人は記者向きでしょう。僕たちの職業は専門家に意見を求めるケースが多々あります。インタビューもその一つです。人に会って、話すことが好きであればいろんな話題を提供することができ、結果的に専門家の詳しい意見を引き出すことに成功し、インタビュー記事も面白くなります。

 このほかには研究熱心なこと、得意な分野を持っていること、得意な分野を応用する力を持っている人などが記者には向いているといっていいでしょう。でも、一番大切なのは新聞記者になりたいという気持ちです。新聞記者になりたいと思った瞬間に、あなたはもう新聞記者向きなのです。

次回予告:スポーツ記者になっちまった!

 僕は入社以来ずっとスポーツを担当しています。子供のころからスポーツをやってきたこともあってスポーツ記者になることを希望していたと思われがちなのですが、実はこれが大違い。入社後1週間のオリエンテーションを経て、スポーツ部に配属されたのです。このとき、この配属に一番驚いたのが僕でした。

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