●英字新聞社ジャパンタイムズによる英語学習サイト。英語のニュース、よみもの、リスニングなどのコンテンツを無料で提供。無料見本紙はこちら
英語学習サイト ジャパンタイムズ 週刊STオンライン
『The Japan Times ST』オンライン版 | UPDATED: Wednesday, May 15, 2013 | 毎週水曜日更新!   
  • 英語のニュース
  • 英語とエンタメ
  • リスニング・発音
  • ことわざ・フレーズ
  • 英語とお仕事
  • キッズ英語
  • クイズ・パズル
  • 留学・海外生活
  • 英語のものがたり
  • 会話・文法
  • 週刊ST購読申し込み
     時事用語検索辞典BuzzWordsの詳しい使い方はこちら!
カスタム検索
 

記者ほど素敵な商売はない

By Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

ジャパンタイムズ運動部記者、アメリカンフットボールライター、TV解説者のさまざまな顔を持つ生沢浩が15年間の記者生活のなかで見聞きしたこと、思ったことなどを紹介するコラムです。
筆者へお便りを送る

Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

Vol. 75 : 文章の推敲 その2

 書き上げた文章の推敲をする練習の2回目です。前回はメモ1)を文章化したものを推敲しました。

 メモ2)以下の文章を推敲する前に、推敲の目的や気を付けなければいけない点について触れておきましょう。

 推敲の第1の目的は文中の間違いを見つけて訂正することです。文章を書いているときには知らずに誤字や脱字といったミスを犯しがちです。とくにワープロソフトで文章を起こすことの多い最近では変換ミスに気を付けましょう。前回のコラムで推敲した文章の中にもメモリの「容量」とするべきところが「要領」となっていました。

 2番目の目的は主語述語のつながりに不自然なところがないかを確認することです。この間違いは意外に多く、メールやネットの掲示板などでもよく見かけます。

 たとえば、「私の仕事はフットボールの試合を見て、それについての分析や解説をします。」という文章を考えて見ましょう。なるほど、意味は分かります。しかし、「(私の)仕事は」という主語と「(分析や解説を)します」という述語が正確に対応していません。この分は「私の仕事はフットボールの試合を見て、それについての分析や解説をすることです。」としなければなりません。こうすれば、「私の仕事は」という主語と「(分析や解説を)することです」という述語がきちんとつながります。文が長くなるほどこの間違いは多くなるので気を付けましょう。

 ここまでは「推敲」というよりはむしろ間違いを訂正する「校正」だといえるでしょう。推敲とはもう一歩進んで、文章をよりよくするための作業です。推敲の語源は、唐時代の賈島(かとう)という詩人のエピソードに由来しています。「僧は推(お)す月下の門」という詩句について、「推す」の部分を「敲(たた)く」とすべきかどうか迷い、韓愈(かんゆ)という別の詩人に相談したところ、「敲」の字に改めたという故事からきているのです。この故事からもわかるように、よりよい文章にするために語句や言い回しを工夫することが推敲の最も大事な部分です。

 一般に私たちは文章を書く力よりも読解力のほうが高いものです。日常生活で文章を書く機会よりも読む量のほうが圧倒的に多いからです。推敲は自分が書いた文章を自身の読解力によって客観的に評価する作業でもあります。ですから、気になる個所は徹底的に直しましょう。

 前置きが長くなりました。2)の文章の推敲に取り掛かりましょう。

 メモ2)の文章

 「今まで携帯電話の会社を換えるなどということを考えてもいなかった僕は、早速Softbankの携帯電話の情報を集めることにした。まず、携帯電話を扱っているショップに行って機種を物色。最新の機種がDocomoで買い換えるよりも安い値段で入手できるので、新しいもの好きの僕はほとんど『買い換えモード』に1.入ってしまったのだった。でも、気になるのは月々に支払う料金。そこで、パンフレットを入手して料金のシミュレーション2.をすることになった。

 1では「のだった」という終わり方がちょっと大げさすぎます。単に「入ってしまった」とするだけでいいでしょう。2の「することになった」という部分はまるで料金シミュレーションをすることが必然的のような言い回しで、「他人事」のような印象を与えます。自分の意思でシミュレーションをするのですから、ここは「することにした」が適当です。

 まず、現在の自分が支払っている携帯電話の料金を調べてみた。月々に僕が支払っている料金は約4,000円(税抜き。以下同様)。僕が使っているプランの基本料金は4,600円だが、10年以上Docomoを使用しているために複数の3.割引プランを利用して実際に払っているのは半額の2,300円。残りの1,700円が通話・パケット料金、および留守番電話などのサービス料金ということになる。

 3は実際に払っている料金が割引が適用された額である理由を述べている個所です。理由のニュアンスを明確に出すために「割引プランを利用しているから」としたいのですが、直前に「Docomoを使用しているために」という個所があります。一つの文章の中に理由を表す表現が2個所以上あるのは好ましくありません。ここは3を「割引プランが適用されて」と書き換えます。

 Softbankとの比較をするためにひと月の通話時間とパケット使用量を算出する必要がある。料金から逆算するとひと月の通話時間は約80分、パケットは2000バイトということが判った。利用しているプランの通話料金は1分につき36円だが、こちらも割引が適用されて実質的には1分18円相当の計算になっていた。

 これをSoftbankの料金体系に当てはめてみる。基本料金が月980円のホワイトプランを利用すると仮定する。同プランでは4.同じSoftbankの電話同士なら午前1時から午後9時までは無料。それ以外の時間帯は1分40円という設定になっている。Softbank以外の携帯電話とは終日1分40円である。5.ホワイトプランなので長期利用の割引はない。

 4では意味の重複が起こっています。「同じ」と「電話同士」です。「同じ」はとってしまいましょう。5は「ホワイトプランなので」が問題です。「ホワイトプランに長期利用の割引はない」という事実を必ずしも読者が知っているとは限りません。それを「ホワイトプランなので」という言い方をしてしまうと周知の事実という印象を与えてしまいます。いわば独りよがりの文です。自分の分かっていることを話題にする際に陥りがちな間違いです。ここは「ホワイトプランでは長期利用の割引はない」とすればきちんと説明している文章となります。

 僕の周りではSoftbankユーザーはそれほどいないので、一律1分40円でシミュレーション6.することにする。パケット料金は1パケットにつき0.2円で7.計算する。そうすると、僕の月々の通話料とパケット料金の合計額は40円×80分+0,2円×2000=3,600円。これに基本料金を加えると4,580円となり、なんとDocomoよりも割高になることが分かった。」

 6の「することにする」はくどいですね。単に「する」に直します。7では「する」が連発されています。さらに、6で訂正した部分にも「する」が使われていますからちょっと煩雑です。文章のリズムを変えるために、語尾を変化させましょう。7を「計算した。そうすると」と書き換えます。

 推敲の終わった文章は以下のとおりです。

 「今まで携帯電話の会社を換えるなどということを考えてもいなかった僕は、早速Softbankの携帯電話の情報を集めることにした。まず、携帯電話を扱っているショップに行って機種を物色。最新の機種がDocomoで買い換えるよりも安い値段で入手できるので、新しいもの好きの僕はほとんど『買い換えモード』に入ってしまった。でも、気になるのは月々に支払う料金。そこで、パンフレットを入手して料金のシミュレーションをすることした。

 まず、現在の自分が支払っている携帯電話の料金を調べてみた。月々に僕が支払っている料金は約4,000円(税抜き。以下同様)。僕が使っているプランの基本料金は4,600円だが、10年以上Docomoを使用しているために複数の割引プランが適用されて実際に払っているのは半額の2,300円。残りの1,700円が通話・パケット料金、および留守番電話などのサービス料金ということになる。

 Softbankとの比較をするためにひと月の通話時間とパケット使用量を算出する必要がある。料金から逆算するとひと月の通話時間は約80分、パケットは2000バイトということが判った。利用しているプランの通話料金は1分につき36円だが、こちらも割引が適用されて実質的には1分18円相当の計算になっていた。

 これをSoftbankの料金体系に当てはめてみる。基本料金が月980円のホワイトプランを利用すると仮定する。同プランではSoftbankの電話同士なら午前1時から午後9時までは無料。それ以外の時間帯は1分40円という設定になっている。Softbank以外の携帯電話とは終日1分40円である。ホワイトプランでは長期利用の割引はない。

 僕の周りではSoftbankユーザーはそれほどいないので、一律1分40円でシミュレーションする。パケット料金は1パケットにつき0.2円で計算した。そうすると、僕の月々の通話料とパケット料金の合計額は40円×80分+0,2円×2000=3,600円。これに基本料金を加えると4,580円となり、なんとDocomoよりも割高になることがわかった。」

 推敲の手順が分かってきましたか?次回は残りの文章を一気に推敲し、全体の流れを見ていきます。

次回予告:文章の推敲 その3

 残りの文章を推敲したのち、すべての文章を再び見直します。これまではメモを作ったパートごとに推敲してきましたが、今度は全体像を見つつ、パートごとのつながりを自然なものへとしていきます。

英語のニュース |  英語とエンタメ |  リスニング・発音 |  ことわざ・フレーズ |  英語とお仕事 |  キッズ英語 |  クイズ・パズル
留学・海外就職 |  英語のものがたり |  会話・文法 |  執筆者リスト |  読者の声 |  広告掲載
お問い合わせ |  会社概要 |  プライバシーポリシー |  リンクポリシー |  著作権 |  サイトマップ