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記者ほど素敵な商売はない

By Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

ジャパンタイムズ運動部記者、アメリカンフットボールライター、TV解説者のさまざまな顔を持つ生沢浩が15年間の記者生活のなかで見聞きしたこと、思ったことなどを紹介するコラムです。
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Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

Vol. 76 : 文章の推敲 その3

 約2ヵ月にわたって連載してきた文章講座も今回がいよいよ最終回です。今回は残っているメモ3)と4)を文章化したものを推敲し、文章を完成させましょう。まずは、メモ3)の文章からとりかかります。

「シミュレーションの結果、僕の携帯電話の使用状況ではDocomoからSoftbankへ会社を乗り換えても必ずしも得にならないということが分かった。日本の携帯電話会社にはもう一つauがある。僕はかねてからauの携帯電話には関心があった。
 デザインもユニークなものが多いし、色もバリエーションに富んでいる。『音楽ケータイ』や『着うた』などのサービスもauの機器が充実しているという印象があったからだ。そこで、ためしにauへの乗り換えも検討1.することになった。
 しかし、基本料金や通話料などはDocomoと大差がなく、新規契約で乗り換えてしまうとDocomoを2.長期利用しているために受けられている割引サービスが受けられなくなってしまう。具体的にはDocomoでは10年間使用しているために半額になっている3.基本料金がauでは全額払わなければならない。そうすれば、いくら新規契約で新しい携帯電話機が格安で入手できても料金で損をしてしまうことになる。やはりauも断念せざるを得なかった。
 こうして、僕の携帯電話買い換え計画はひとたび終わりを迎えたのだった。」

 1.は前回も同様な言い回しがありました。検討するのは僕自身なので、「することになった」という客観的な表現は好ましくありません。ここは「することにした」に変えます。
 2.以降の文章では「受けられ」るという言葉が1文で2回使われています。同じ言い回しを避けるために前半を変えましょう。「長期利用していることで利用可能な」としてはいかがでしょうか。
 3.では本来目的語であるべき「基本料金」が、「基本料金が」とすることで主語のような印象を与えてしまっています。すると、形式上の主語・述語は「基本料金が」→「払わなければならない」となり、意味不明です。この混乱を避けるために「基本料金」が目的語であることを明確にする必要があります。そのため、「基本料金が」の部分を「基本料金を」とします。

 続いてメモ4)を文章化したものを推敲します。

「携帯電話の買い換えを断念してから2週間ほどが過ぎたころだった。4.僕はインターネットであるニュースを見てくぎ付けになった。それは『auが新規契約者でも基本料金を半額にするサービスを9月から始める』というものだった。これは衝撃的だった。
 よく調べてみると、2年間の使用契約を結んだ場合に限り、新規契約者でも10年以上の継続ユーザーと同じ割引率が適用されるというものだった。auへの乗り換えを断念した理由が基本料金の高さだったから、この問題がいきなりクリアされたことになる。この瞬間に一度は消えたはずの買い換え意欲が、がぜん勢いを盛り返してきたことは言うまでもない。
 そこで、今度は買い換えの際に必要となる費用をシミュレーションしてみることになった。まず、携帯番号ポータビリティを使ってauに転出する場合、Docomoの解約料に2,100円(税込み)、auの新規加入手数料に2,835円がかかり、計4,935円が必要となる。さらにDocomoでの割引サービスの途中解約金が3,150円発生する。ただし、僕の場合は7月が契約更新月だったために7月中に解約するのであればこの費用は不要であることが分かった。
 そして、auは新規加入であれば最新の携帯電話機種が無料で手に入る。充電器などの周辺機器を入れても6,000円以内で収まることが分かった。つまり、僕は6,000円で新しい携帯電話を手に入れることが出来るのだ。
 この時点で僕はほぼ買い換えを決心したのだったが、やはり10年以上も使っているDocomoに愛着があるのも事実だった。そんなときだった。Docomoが僕の愛着すらも失わせてしまう新サービスを発表したのは。
 Docomoはauに対抗するためにやはり新規加入者の基本料金を半額にするサービスを行なうと発表したのだ。これで僕はキレた。これで僕がDocomoで長期ユーザーであるメリットは完全になくなってしまったからだ。僕が思うに、Docomoはauの基本料金半額サービスに対抗するために同じサービスを行なうのではなく、僕のような長期ユーザーがauへ転出しないように長期ユーザー向けのサービスを充実させるべきだった。
 Docomoに失望した僕はauへの乗り換えを決心し、その数日後には新しい携帯電話を手に入れていた。」

 4.では「くぎ付けになる」という慣用句を使っています。ところが、この慣用句は「〜にくぎ付けになる」と使用するのが一般的で、4.のように「僕は(中略)を見てくぎ付けになった」という言い回しはやや不自然な感じがします。口語ではまったく問題ないのですが、文章ではちょっと気になる表現です。ここはセオリーどおりに「僕はインターネットで見かけたあるニュースにくぎ付けになった」とします。
 メモ4)の文章では推敲が必要な部分はここだけだと考えます。

 これで、メモを文章化した個々の部分の推敲はすべて終了しました。でも、推敲はこれで終わりではありません。これまでは部分ごとに推敲をしてきましたが、文章には全体の流れというものがあり、これがまた重要なものなのです。この流れを見るために、長くなりますが、これまで推敲してきた文章をすべてつなげて見ましょう。

「僕の携帯電話の使い方はちょっと人と変わっているかもしれない。通話やメールはもちろんだが、それ以上にミュージックプレーヤーとして使用するからだ。と言っても、僕は電車の中で音楽を聴くことはほとんどない。僕の主な携帯電話の用途は動画再生だ。
 僕は週に1〜2度ジムに通って汗を流すが、マシンでランニングをする際に動画を見ながら走ることにしている。こうすると長く退屈なトレーニングも楽しいものになるからだ。  ところが、動画は大きな容量のメモリを必要とする。僕の携帯電話の5.メモリカードは512MBが限界で、これではたくさんの動画を保存することができない。そこで、より容量の大きいメモリを搭載できる携帯電話に買い換えたいと思うようになった。

折を見ては携帯電話売り場をのぞき、新製品を見て回る日が続いた。目当てとする電話は2GB以上の容量の6.メモリーカードが使える機種。しかし、Docomoユーザーの僕にとっておなじDocomoでの買い換えは非常に高価なものだった。気に入った機種は最新ではなくても1万5千円から2万円ほどの値段がついている。携帯電話にそれほどお金をかけたくない僕は一時は買い換えを断念することになった。

 そんな時、Softbankがある新サービスを発表した。基本料金が月980円という安さで、しかもSoftbankのユーザー同士では通話料金が無料になる時間帯があるという。そこで僕は、今まで考えたこともなかった携帯電話会社の乗り換えを検討することになった。

今まで携帯電話の会社を換えるなどということを考えてもいなかった僕は、早速Softbankの携帯電話の情報を集めることにした。まず、携帯電話を扱っているショップに行って機種を物色。最新の機種がDocomoで買い換えるよりも安い値段で入手できるので、新しいもの好きの僕はほとんど『買い換えモード』に入ってしまった。でも、気になるのは月々に支払う料金。そこで、パンフレットを入手して料金のシミュレーションをすることした。

まず、現在の自分が支払っている携帯電話の料金を調べてみた。月々に僕が支払っている料金は約4,000円(税抜き。以下同様)。僕が使っているプランの基本料金は4,600円だが、10年以上Docomoを使用しているために複数の割引プランが適用されて実際に払っているのは半額の2,300円。残りの1,700円が通話・パケット料金、および留守番電話などのサービス料金ということになる。

Softbankとの比較をするためにひと月の通話時間とパケット使用量を算出する必要がある。料金から逆算するとひと月の通話時間は約80分、パケットは2000バイトということが判った。利用しているプランの通話料金は1分につき36円だが、こちらも割引が適用されて実質的には1分18円相当の計算になっていた。

これをSoftbankの料金体系に当てはめてみる。基本料金が月980円のホワイトプランを利用すると仮定する。同プランではSoftbankの電話同士なら午前1時から午後9時までは無料。それ以外の時間帯は1分40円という設定になっている。Softbank以外の携帯電話とは終日1分40円である。ホワイトプランでは長期利用の割引はない。

僕の周りではSoftbankユーザーはそれほどいないので、一律1分40円でシミュレーションする。パケット料金は1パケットにつき0.2円で計算した。そうすると、僕の月々の通話料とパケット料金の合計額は40円×80分+0,2円×2000=3,600円。これに基本料金を加えると4,580円となり、なんとDocomoよりも割高になることが分かった。」

シミュレーションの結果、僕の携帯電話の使用状況ではDocomoからSoftbankへ会社を乗り換えても必ずしも得にならないということが分かった。日本の携帯電話会社にはもう一つauがある。僕はかねてからauの携帯電話には関心があった。
 デザインもユニークなものが多いし、色もバリエーションに富んでいる。『音楽ケータイ』や『着うた』などのサービスもauの機器が充実しているという印象があったからだ。そこで、ためしにauへの乗り換えも検討することにした。

 しかし、基本料金や通話料などはDocomoと大差がなく、新規契約で乗り換えてしまうとDocomoを長期利用していることで利用可能な割引サービスが受けられなくなってしまう。具体的にはDocomoでは10年間使用しているために半額になっている基本料金をauでは全額払わなければならない。そうすれば、いくら新規契約で新しい携帯電話機が格安で入手できても料金で損をしてしまうことになる。やはりauも断念せざるを得なかった。
 こうして、僕の携帯電話買い換え計画はひとたび終わりを迎えたのだった。

携帯電話の買い換えを断念してから2週間ほどが過ぎたころだった。僕はインターネットで見かけたあるニュースにくぎ付けになった。それは『auが新規契約者でも基本料金を半額にするサービスを9月から始める』というものだった。これは衝撃的だった。
 よく調べてみると、2年間の使用契約を結んだ場合に限り、新規契約者でも10年以上の継続ユーザーと同じ割引率が適用されるというものだった。auへの乗り換えを断念した理由が基本料金の高さだったから、この問題がいきなりクリアされたことになる。この瞬間に一度は消えたはずの買い換え意欲が、がぜん勢いを盛り返してきたことは言うまでもない。

 そこで、今度は買い換えの際に必要となる費用をシミュレーションしてみることになった。まず、携帯番号ポータビリティを使ってauに転出する場合、Docomoの解約料に2,100円(税込み)、auの新規加入手数料に2,835円がかかり、計4,935円が必要となる。さらにDocomoでの割引サービスの途中解約金が3,150円発生する。ただし、僕の場合は7月が契約更新月だったために7月中に解約するのであればこの費用は不要であることが分かった。
 そして、auは新規加入であれば最新の携帯電話機種が無料で手に入る。充電器などの周辺機器を入れても6,000円以内で収まることが分かった。つまり、僕は6,000円で新しい携帯電話を手に入れることが出来るのだ。
 この時点で僕はほぼ買い換えを決心したのだったが、やはり10年以上も使っているDocomoに愛着があるのも事実だった。そんなときだった。Docomoが僕の愛着すらも失わせてしまう新サービスを発表したのは。

 Docomoはauに対抗するためにやはり新規加入者の基本料金を半額にするサービスを行なうと発表したのだ。これで僕はキレた。これで僕がDocomoで長期ユーザーであるメリットは完全になくなってしまったからだ。僕が思うに、Docomoはauの基本料金半額サービスに対抗するために同じサービスを行なうのではなく、僕のような長期ユーザーがauへ転出しないように長期ユーザー向けのサービスを充実させるべきだった。
 Docomoに失望した僕はauへの乗り換えを決心し、その数日後には新しい携帯電話を手に入れていた。」

 部分ごとのつながりはひとまずいいようです。ただ、5.と6.で示したところには問題があります。5.で「メモリカード」としているにもかかわらず、6.では「メモリーカード」となっていて、文言の不統一が起こっています。これはどちらかに統一しましょう。ほかの部分で「メモリ」という言葉を使っているので、5.の「メモリカード」で統一します。

 さて、最後の段落で僕はいよいよ新しい携帯電話を入手したことを述べて文章を完結させています。ところが、ここで一つ問題があります。そもそも僕が携帯電話の買い換えを考えたのは、従来使っていた機種が動画再生に必要なメモリカードを使用できないことが理由でした。新しい携帯電話を手に入れたのはいいけれど、この問題が解消されたのかどうかは触れられていません。これではせっかく書いた長文も画竜点睛を欠くことになってしまいます。
 この問題は部分のみを推敲していたのではなかなか見つかりません。全体を通して読んでみて初めて指摘できるものです。だからこそ、全体の流れをつかむことが必要なのです。  問題を解決するために、最後にもう一文付け加えましょう。
 「その携帯電話で使用できるメモリカードの最大容量は2GB。これで好きな動画がたっぷりと楽しめるようになったのだった。」
これを末尾に付け加えれば文章の整合性も取れるし、長文に結論をつけることができます。

次回予告:気になる日本語

 コラムを通常のスタイルに戻しましょう。以前に日本語というのは実は難しいというテーマでコラムを書きました。次回はその続編です。ちょっと気になる日本語の使い方について考えます。

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