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2013年4月12日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Planning for mankai (p. 9)

満開のための計画

「今年はいつ桜が満開になるの?」

シンガポールにいる私の家族と友人は、私が日本で働きはじめてから数えきれないほどこの質問をしている。春が近づくにつれて、質問が増える。シンガポール人の多くは日本で満開の桜を見ることを夢見ている。だから、満開と同時になるように日本への旅の計画を立てようとする。

彼らは、私が日本に住んでいるので桜がいつ満開になるかを感じ取ることができると思っているのではないかと思う。私のことをそんなにも高く評価してくれるのはとても光栄だが、私は自分の直感と桜観察を頼るのではなく、律儀にヤフージャパンの開花予想をチェックしている。

私は開花予想の情報を伝えるとき、いつもこう但し書きをつけることにしている。これらは単なる予想であって、実際の日にちは予想されたものよりも少し前後する可能性がある。いつの飛行機を予約するかは、彼らがとるべきリスクだ。

考えなければならないことはとてもたくさんある。いつ休みをとろうか? 満開を見るチャンスを最大にするには日本のどの辺りに滞在したらよいか? どのくらいの期間滞在したらよいか? 彼らは計画に努力を惜しまない。しかし、どれだけ作戦を練ろうとも夢が叶う保証はない。

以前、友人が満開を2日逃した。彼女は、晴れ渡った日にちょうど桜が一斉に花開いて満開になったときには、すでにシンガポールに戻っていた。私は彼女に写真を送った。彼女は、自分の目で満開を見るまでは毎春日本を訪れると誓った。

昨年、別の友人が京都の嵐山を訪れ、ちょうど桜が満開だった。彼女は次の日にまた同じ場所を訪れたが、前の晩の強風でほとんどの花が地面に散らされていた。薄いピンク色の花は、地面にあっても枝にあるのと同じくらいかわいらしかった。彼女は、満開も満開の後に起こったことも両方見ることができて幸せに思った。

私は、日本人の友人に「あなたは日本に住んでいてとても幸運ね。日本を出ない限り、毎年満開が見られるもの」と言った。

彼は笑って「日本にいたとしても、いつだって満開を楽しめるほど運がいいわけではないよ。一日中働かないといけないかもしれない。休みだったとしても、雨か曇りかもしれないし」と言った。

彼はしばらく考えてこう言った。「日本人は一生に何回満開が見られるだろうか? 70回かな? 80回かな? だから1回1回の満開がとても貴重なんだ。」

彼の言葉は私の心に残っている。春、桜の木を通り過ぎるたびに、一番美しいものは計画ができないのだということを思い出す。私たちはしたいように計画を立てるが、結局のところ、おそらく重要なのは、期待を楽しみ、1回1回の満開の瞬間を大切にすることなのだろう。

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