私の息子はカナダの大学を卒業したばかりだ。私のように、彼もまた英語の本が大好きな熱心な本の虫だ。彼はしかし、日本の田舎で日本語にどっぷり漬かって育った。彼が英語の読書家になるのを助けるのは簡単ではなかった。
妻と私は息子にアルファベットのカードと絵本から始めさせた。彼が8歳になったとき、飛躍のチャンスがやってきた。ハリーポッターの本の第1作目が出版された。英語版は長かった(320ページ!)が、魔法と龍と悪い魔法使いがたくさん出てくる素晴らしい筋だった。私がその本を息子に見せると、彼の目は輝いた。
私たちはこの本を寝る前に読んで聞かせる物語にすることにして、一晩に2ページずつ読むことにした。一緒にこの冒険に出発するのはわくわくした。
数週間後、しかし、問題があることに気がついた。息子はこの物語が大好きだったのに、私がすべてやってしまっていた。息子は受動的に座っているだけだった。父親が読み、息子が聞くという、良くないパターンに陥ってしまった。何かしなければ、この状態が永遠に続くことは分かっていた。
ついに私は戦略を決めた。ずるい戦略だ。うそと演技とだましの戦略だ。
ある夜、私たちはいつものように本を読もうと腰を下ろした。私は最初のページを読み終えた。そして突然、私はとても疲れた表情を装った。「ねぇ、お父さんへとへとだよ」とうそをついた。「もうこれ以上読めないや」と言うと、息子は驚いて私を見ていた。「いつも2ページずつ読んでいて、ハリーポッターが危険にさらされている。誰かが2ページ目を読まなければならない。君はどうだい?」と続けた。
息子はじっくり考えた。次に何が起こるのか知りたがっていた。しかし、彼は一人で読んだことがない。私を見て、本のページを見た。そして、深呼吸をした。「ネ・ク・ス・ト(次に)、ハ・リ・ー(ハリーは)ウェ・ン・ト(行った)…」と、息子は一文字ずつ四苦八苦して発音していった。そのページを読み終えるのにずいぶん時間がかかったが、彼はやり遂げた。本当に誇らしかった。
翌日の夜、同じことが起こった。私が最初のページを読んで「疲れて」、息子が2ページ目を読む。息子は日に日に、この新しいやり方に慣れてきた。父が1ページ目。息子が2ページ目。毎日息子は自信をつけていき、読むのが上手になっていった。
最後の躍進はすぐ後にやってきた。私は週末に東京で会議があった。つまり、2晩私が読むことができないということだ。私が帰宅したとき、息子は近づいてきて「お父さん、僕告白するね。お父さんが出かけている間、待てなくて、次に何が起こるか知りたかったから、一人で先に読み進めちゃった。ごめんなさい!」
私の計画はうまくいった!策略のおかげで、息子は独立した読書家になる一歩を踏み出した。1冊目を読み終えたあと、彼は次のハリーポッターの本を一人で読んだ。そして、『ロード・オブ・ザ・リング』、『ジュラシック・パーク』、『ダ・ヴィンチ・コード』と進んでいった。以来、トントン拍子にいっている。
子どもにうそをつくべきではないと言う人もいる。でも、うそが教育の方便になりうるときもある。