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2013年7月19日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Teacher or student? (p. 9)

先生か生徒か

私たちは人生のほとんどの時間を睡眠か仕事に費やしている。これを踏まえて、買うことができる範囲で最も心地よいベッドと、楽しめる仕事に誰もが投資するのは理にかなっている。少なくともこのうちの一つでもきちんとしておくことが重要だ。夜ぐっすりと眠ることは、仕事でよりよい働きができるということ。そして、よい仕事なら、朝ベッドから出るのがそんなにつらいことではない。

もちろん、完璧な仕事なんてない。どんな仕事にもストレスはつきものだ。私は最近、生徒に仕事のリストをストレスが多いと思う順にランク付けしてもらった。警察や消防の仕事など、危険な要素を伴うものの場合は上位に来ていた。しかし、一番ストレスの少ない仕事はどれかについて激論が交わされた。少数の生徒が「生徒」をリストの下位に置いた。「でも、いつも勉強しなきゃいけないじゃない!」と叫ぶクラスメートもいて、彼らは「生徒」を上位5位に入れていた。「でも」と一人から反論が上がり、「勉強さえしてたらいいんだよ」と言った。

興味深いことに、生徒であることが人間ができることの中で一番ストレスの少ないことだと考えていた生徒は、教師だった経験もある人たちだった。この同じ生徒たちは、授業で教える喜びでもある。彼らはここに学びに来ているのだ。私の生徒のリストのほとんどで、少なくとも教師であることは生徒であることよりもストレスの尺度では少し高くランク付けされていた。

もちろん、教師なら警察官のような身近に迫る危険はないかもしれない。医師のように過失によって人を殺してしまうこともないだろう。しかしそれでも、教師は生徒の人生に影響を与えることがある。そして、このことはストレスの多いことになりうる。良い教師は、生徒の最高の出来を引き出したい、教えようとしているどんなスキルでも使えるように励ましたいと思う。良い教師は良い生徒でもある―自分自身が学ぶことが好きなのだ。

教師であることのこの側面が、私が自分のしていることを楽しませてくれる。少し前に豊かさについての考えをベトナム出身の生徒を話していたとき、私は教師であるということは大金は稼げないということだと話した。「でもいつでも行きたいときに、世界中の友人を訪ねることができるから、お金持ちになるのはいいことかもしれない」と私は言い添えた。ベトナム出身の生徒は、私に世界中に友だちがたくさんいるのかと聞き、私はそうだと答えた。彼は私が言ったことをじっくり考えてから、「じゃあ、もうすでに豊かですね」と言った。

彼の言葉は私の心に響いて、彼の観察力に深く感動した。今生徒だったのは誰?毎日、人々はそれぞれ違った理由でやる気になって、ベッドから出て、仕事に行く。私にとってそれは、あのベトナム人の生徒と味わったような瞬間で、そのおかげでベッドから―心地いいベッドでも―出ることがずっと楽になっている。

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