前回の記事でアイルランドでは日本がどれだけめったにニュースにならないかに触れた。そしたら、何が起こったと思う? 安倍晋三がダブリンを訪れて、それが日本の首相による初のアイルランド訪問だったのだ。
日本とアイルランドにはあまり共通点がない。どちらも島国で、どちらも政府債務残高の対GDP比ではトップ20カ国に入っている。きっともっと(共通点が)あるはずだが。
アイルランド経済の詳細を語ってあなたを退屈させたくはない。しかし、アイルランドは巨大な不動産バブル、倒産した銀行、通貨(ユーロ)危機、多数の失業者を抱えてきた。政府はインフラと賃金をカットしている。
アベノミクスは異なるアプローチだから、日本の首相が話すべきことはきっとアイルランドのメディアが関心を持つだろうと思うかもしれない。しかし、考え直した方がいい。安倍首相はほとんどの新聞でほんの数行しか報道されなかった。
それは、同じ日にミシェル・オバマと2人の娘がアイルランドを訪問した記事が何ページも何ページもあったからだ。
安倍首相とバラク・オバマ大統領は、先月G8の世界首脳会議に出るため、北アイルランドに滞在していた。彼らが一生懸命仕事をしている間、ミシェルと娘たちはダブリンに来て、ボノとランチをし、アイリッシュダンスやアイルランド音楽を取り混ぜた舞台作品のリバーダンスを見に行った。
お許し願いたいが、アメリカのファーストレディの方が安倍さんよりも写真写りがいい。
しかし、過剰に報道されたのは、アイルランドとアメリカの文化的そして歴史的な繋がりにも関係している。詰まるところ、バラク・オバマはアイルランド人なのだ。少なくとも、アイルランドから1850年に移住した高祖父の父のファルマス・カーニーはアイルランド人だ。
アフリカ系アメリカ人とアイルランド系アメリカ人との間での異なる人種間の結婚はよくあることだと言えば言い過ぎかもしれない。この人種間の関係は難しいことも多かった。アメリカ南部から解放された奴隷は、飢餓から逃れようとしていたアイルランド人と、北部の都市で同じ低賃金の職を取り合うことがよくあった。自分たちはアイルランド系だと言う3600万人のアメリカ人の大多数は白人だ。ジョン・フィッツェラルド・ケネディは恐らく最も有名なアイルランド系アメリカ人だろう。フィッツェラルドもケネディも、アイルランドでは一般的な姓だ。
旅行産業を助けるため、アイルランド政府は、2013年を「集まり」の年に指定した。1億人の集団移住した強固なアイリッシュ人たちの何人かが、「帰郷」して、アイルランドでいくらかお金を使ってくれることを期待している。ハリウッド俳優のガブリエル・バーンはダブリン生まれで、これをぼったくりと呼んだけれど、アイルランドの街や村の人々は熱心で、世界中から長らく消息不明だった親戚たちにあいさつをする用意をして待っている。
アイルランドから集団移住した人々のほとんどは北アメリカ、英国、オーストラリアにいる。願わくは、この夏、みんな同時に「帰郷」はしないでもらいたい。