「ST」は紙名を新たに「Alpha」として2018年6月29日より新創刊しました。 Alpha以降の全訳はこちら
「ST」は紙名を新たに「Alpha」として2018年6月29日より新創刊しました。 Alpha以降の全訳はこちら

記事全訳

2013年11月15日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Journeys & destinations (p. 9)

旅と目的地

上空何千フィートで金属の缶(飛行機のこと)の閉じ込められて座っていると、きっと、人生でいいこととはなんだろうかと考えさせられるのではないだろうか。眠り、食欲、空間のような物事について。体を伸ばして横たわることもいい。実際に味わうことのできる食べ物もそうだ。このうち長距離の飛行で手に入るものは、私の予算では1つもない。人生とは旅のようなものだ、目的地ではないと言う人もいるが、私の場合、同意しかねる。

飛行機に8時間以上も乗っていると、目的地に着いたとき、私はひどいありさまになっている。好きなことの2つ―眠ることと食べること―が長時間できないので、見た目も感覚も人間らしくなくなる。入国審査官が私が入国できると判断するのは驚きだ。

私をだまして飛行機の旅が楽しいと思わせるために、空港は空港そのものを目的地に変えようとしている。シンガポールのチャンギ空港など、中にはそれに成功している空港もあり、週末に地元の人々が空港をぶらぶらするためだけに特別に旅行でやってきたりする。どこまでもひねくれた飛行機旅行者の私には、しかしながら、見るものは全て値段が高過ぎるし、食事は味気なく、買う興味がないブランド品ばかり、そして、すでに飛行機で何千とは言わないまでも何百もお金を払った私からさらにお金を巻き上げる方法ばかりだ。"duty free"(免税)に真の意味でのfree(自由)はなく、セキュリティチェックを受けても安全からは程遠いと感じるだろう。

スタートレックがそれを正しく捉えている。ある場所から別の場所へ一瞬で運ばれるという考えが大好きだ。私が今も待ち望んでいる空飛ぶ車のように、現実の技術はまだSFの世界に完全に追いつくにはしばらくかかりそうだ。それに多分、そういう機械が旅の始まりでも終わりでも私たちの体の分子を正しく安全に分解して再構築することを信頼するのは、行き過ぎた頼みかもしれない。

ある意味では、飛行機での旅行は私にとって、自分で元に戻さなければならないことを除いては、すでに自分自身を引き裂かれるようなものだ。恐らく、人生とは目的地の連続だと見るべきなのかもしれない。その目的地の間の旅は、たいていそこからくたくたになってはいるが生きて現れる必要な不快として捉えるべきなのかもしれない。

私にとって、目的地は確かに重要な場所だ。目的地とは、私が人々や食べ物、文化を好きになる場所だ。私の今の目的地はミカンの国、愛媛だ。そして私はすでに愛媛県のさまざまなキャラクターのうちの1つに惹きつけられている。地元の都市のマスコットはハムスターとタヌキと太鼓を合わせたようなものだ。好きにならずにはいられないではないか。

人生とは本当に旅のことなのだろうか? それについてはわからない。転送ビームで私を転送して到着させてくれるだけでいい。

Top News
Easy Reading
National News
World News
Business & Tech
This week's OMG
Essay
  • 旅と目的地

サイト内検索

2018年6月29日号    試読・購読   デジタル版
目からウロコの英文ライティング

読者の声投稿フォーム
バックナンバー