「ST」は紙名を新たに「Alpha」として2018年6月29日より新創刊しました。 Alpha以降の全訳はこちら
「ST」は紙名を新たに「Alpha」として2018年6月29日より新創刊しました。 Alpha以降の全訳はこちら

記事全訳

2014年1月24日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

A fishy story (p. 9)

魚の話

私は魚が大好きなので、魚が食べられない日本人と結婚したことは残念だと思っている。ハムが大嫌いなスペイン人、チーズが我慢ならないフランス人女性のようなものだ。

私の妻が悪いのではない。妻は魚の味は好きなのだが、魚にアレルギーがあるのだ。面白いことに、この状態(アレルギーのこと)はエビやホタテ、カニ、ウニ、イカ、牡蠣などその他の魚介類にまでは当てはまらず、妻はこれらをおいしそうに食べる。しかし、ひれやうろこが付いたものだと、どんなものを与えても、顔が腫れてフグのように膨れ上がってしまう。

だから、妻が友人と夕食に出掛けるときはいつも、私と2歳の息子にとって魚のごちそうを食べる時だ。

いつか私の地中海料理の本に載っていたあるレシピを作ってみるチャンスをずっと待っていた。アンコウをハマグリやアサリ、ムール貝と一緒に、世界一高価なスパイス、サフランで漬け込んだ料理だ。

イスタンブールで有名なスパイスマーケットに立ち、それにいくらかかるか計算しようとしていたことがある。リラをユーロに換算すると、サフランはトルコでも―トルコの平均賃金はアイルランドの3分の1だ―アイルランドで買うのと同じくらい高くつくことが分かった。それで代わりにピスタチオを買った。

だから、同僚の一人が休暇でインドに行くと言い、お土産が欲しい人がいるかと聞いたとき、私はそのチャンスに飛び付いた。

「あまり高過ぎなかったらサフランを買ってきてくれないか」と私は言い、きっと彼女は忘れるだろうと思っていた。

3週間後、6ユーロ(850円)で安売りになっていたと彼女が言うほんの1グラムを持ってカシミールから帰ってきた。

アイルランドは島国なので、魚が不足することはないから、贅沢な魚介類のシチューのための全ての材料がそろった。少なくとも、私はそうだと思っていた。

私の魚屋は深刻そうに外の天気を指さして、その週内にアンコウとカニは入りそうにないと言った。嵐のせいで漁師は港に残り、天気が和らぐまで思い切って海に出ようとはしそうになかった。

アイルランドには台風はないが、大西洋の嵐が大規模な被害をもたらすことがある。私が魚料理の夕食を計画していた数日前も、自動車を運転していた人が倒木に当たって亡くなり、駅では屋根が崩壊した。

私の家のバルコニーにも植木鉢が飛んできたが、アンコウがないだって? とんだ災難だった。魚屋のアドバイスに従って、替わりにタラを買って帰った。

鍋にタラを入れるや否や、電気が切れた。どうやら通りの電線に木が倒れたらしい。

その夜、私たちはチキンのサンドイッチを食べた―サフラン・マヨネーズを添えて。

Top News
Easy Reading
National News
World News
Business & Tech
This week's OMG
Essay
  • 魚の話

サイト内検索

2018年6月29日号    試読・購読   デジタル版
目からウロコの英文ライティング

読者の声投稿フォーム
バックナンバー