シンガポールでは、毎年2回新年を祝う。
1回目は1月1日の元旦だ。ほとんどの人が家族や友人と美味しいものを食べる。島中で、ライブ音楽などのパフォーマンスや花火とともにカウントダウンイベントが開かれる。
2回目は旧正月だ。太陰暦に従うので、毎年日付が異なる。今年は1月31日がその日にあたる。
伝統に従うと、旧正月は15日間続き、毎日に違った意味がある。シンガポールでは最初の2日間だけは祝日になっている。香港や台湾、中国など、中国人が大多数の地域では、3日から7日の間、仕事や学校を休む。
旧正月で最も重要な伝統は、新年の前に行なわれる。新年の前日に家族が年夜飯(あるいは昼食。何時に食べるかによる)に集まる。名前が示す通り、家族全員が出席する方がいい。だから、海外で働いたり、勉強したりしている人たちも、帰省するように努める。
旧正月の準備は大変なことだ。一番骨の折れる仕事は、家中の大掃除だ。窓は拭かれ、目につかない隅々も掃除され、過去1年間で溜まったガラクタの山を処分しようとする。大掃除は、訪れてくる親戚や友人のために家をちり一つない状態にするというだけではない。心理的なデトックス(毒出し)のようなもので、過去1年間のわだかまりに別れを告げ、心機一転のスタートに備える。
心機一転のスタートには、かなりの買い物もある。家の飾り(たいてい赤くする)、ネコヤナギやミカンなどおめでたい植物や、新しい服と靴などだ。
おっと、食べ物もだった!旧正月は特徴的なごちそうがなかったら全く違うものになってしまう。シンガポールでは、人気の高いものに、バクワ(炭であぶって乾かされたしっかりした味付けの豚肉のスライス)、パイナップルのタルト、サクサクした春巻き、クィ・バンキ(ココナツミルクの崩れやすいクッキー)などだ。そのリストは延々と続く。有名店からごちそうを手にするためだけに何時間も並ぶ人もいる。
中国系シンガポール人の多くと同じように、私は旧正月を祝うまで新年がちゃんと始まった気がしない。おそらくそれは、旧正月にはたくさんの準備がいるからだろう。元旦よりもたくさんの慣習もある。それがどんなに骨の折れることでも、新年を2回祝えることは恵まれていると感じる。それに、新年の抱負を決めて守るチャンスが2回ある。