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2014年3月7日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Who won? (p. 9)

誰が勝ったの?

常識はそこまで常識ではない。自国で明らかなことでも、海外では知られていないかもしれない。われわれが当然だと思っていることを外国の人が理解してくれないときはじれったいことがある。これについて、一つ話をして、説明させてもらいたい。

数年前、国際会議に出席するために、ジョージア州のアトランタへ飛行機で行った。日本からの長時間のフライトで私は時差ボケをしていたが、そのイベントに出席したかった。運良く、会議場は私のホテルから近かったので、歩いて行くことにした。そうすれば足を伸ばして、街が見られると考えた。途中で、おかしな出来事が起こった。

広々とした通りを歩いていた。遠くの方で、通りの向こうから、私に向かってくる人が見えた。背の高い黒人男性で、アトランタの地元の人のようだった。突然、私たちは道の反対側にいるにもかかわらず、彼は私の方に手を振り始めた。

「誰が勝ったの?」と彼は差し迫った口調で叫んだ。私は驚いてしまった。彼は私に話しかけているのか? 背の高い人懐こい男性のようだが、とてもイラついているようにも見えた。「誰が勝ったの?」と、彼はもう一度叫んだ。「分からないよ」と私は叫び返した。彼は驚きの表情を浮かべて、「おいおい! 誰が勝ったの? スコアはどうだった?」と繰り返した。彼は、私が知らないということを信じられなかった。

その日にスポーツの大きな試合が開かれていたことを知るのに、探偵である必要はなかった(探偵でなくても分かった)。明らかにアトランタ対そのライバルの重要な試合があったようだ。私たちが道を挟んで叫んでいる時、私は日本から着いたばかりだと説明しようとしたが、彼は私の言い訳を受け入れてくれなかった。彼にとって、私が知らないということは理解できないことだった。彼はやっと歩き去っていき、信じられないという様子で首を降っていた。

彼の思考の流れを想像しようとしてみた。今日は大事な試合がある。人々は何週間も楽しみに待っていた。その日のビックニュースだった。誰もが結果を知っているはずだ。どうしてあの人は知らなかったのだろう? あの人は異国の人か? それとも洞窟の中にでも住んでいたのか?

私のめいもニュージーランドでホストファミリーのもとで過ごしていた時に、似たような経験をしている。日本の野球選手のイチローの話を始めると、ホストファミリーの表情がぽかんとなった。「信じられなかったの。彼らはイチローが誰か知らないのよ!」とめいは説明した。「イチローは有名。いつもテレビに出ている。みんなが彼を知っているわ!そのとき、私は日本の常識は海外では当てはまらないことに気がついたの」。

どんな国でも自分の国が宇宙の真ん中だと思っている。そして、そこに住む人々にとっては、自分の国が中心だ。どの国家も、「誰もが知って」いて、当たり前に思っている人々や場所や出来事についてのニュースやうわさ話にどっぷり浸かっている。私たちはみな、文化的に隔離された区域に暮らしていて、それなのに、それが世界の全体だと思っている。

海外旅行をすることがとても大切なのはそのためだ。海外旅行をすれば、自分たちの隔離された区域を離れて、視野を広げ、ほかの世界のことを学ぶ機会を得ることができる。そして、それが国際理解への第一歩だ。

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