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2014年5月30日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

The smoking debate (p. 9)

喫煙をめぐる議論

ディベートは全ての学生が身に付けるべき重要なスキルだ。初めてディベートを見た時のことを今でも覚えている。小学生だったころにさかのぼる。当時10歳だった。

題材は「喫煙は禁止されるべきだ」だった。1チームは喫煙は良いことだと主張し、もう1チームは喫煙は悪いと主張するように、先生が2チーム指名した。両チームには準備に1週間与えられた。

ついに重要な日がやってきた! 喫煙に反対するチームが先に答弁した。自信の笑顔で演台に立った。彼らは簡単な仕事だと分かっていた。喫煙が悪いことは誰だって知っている! それでも、準備を十分にしてこなかったことは明らかだった。彼らの主張は単純で繰り返しだった。彼らは「喫煙はあなたによくない」、「理由は喫煙が悪いからだ。それがあなたが喫煙すべきでない理由だ」と言った。 

次は喫煙に賛成のチームの番だった。静かな決意とともに演台に上がった。彼らが宿題をたくさんやったことは明らかだった。彼らは「タバコは主要な産業で社会を支えている」と話を始め、「タバコの販売から得られる税金は我が国の経済を支えている。何千人もの労働者がタバコ産業に頼っている。もし喫煙を禁止したら、彼らは失業し、彼らの家族は貧困に陥るだろう」と言った。とても説得力があった!

弁論の後で、一番上手だった弁士を選ぶ決を採った。喫煙に賛成するチームが楽に勝った! 先生は弱々しく抗議した。「喫煙賛成のチームが勝った」と先生は認め、「でも、喫煙は悪いこと。どうかタバコを吸わないで!」と言った。その日、私は貴重な学びを得た―説得力のある話者は、どんな話題であれ、とても納得させることができるということだ!

私にとって、このディベートは単なる授業の活動を超えるものだった。実は、父は医者だった。父は医学雑誌や会議で喫煙とガンについての研究を何年も追い続けていた。父は毎週、地元の病院で肺ガンで亡くなる喫煙者を見ていた。喫煙の危険性を生で知っていて、自分の子どもたちに劇的な方法で警告したがっていた。

ある夜、父は大事な話があると言って私たちをリビングに呼んだ。片手に父はタバコを持っていた。もう一方の手にはマッチがあった。

「子どもたち。君たちにタバコを吸うように、もうすぐ誰かが誘うか、けしかけるだろう。そういう人たちはタバコはカッコイイと言う。しかし、それは間違っている。君たちが吸ってみたい気持ちになる前に、私はこのタバコを私の目の前で今ここで吸ってもらいたい」と父は言った。

父はドラマのようにタバコにマッチで火をつけた。私たち子どもたちに火のついたタバコを手渡し、吸い込ませた。私たちは全員、鼻と喉に入ってきた吐き気のする感じから急に咳き込んだ。「カッコイイかい?」と父は聞いた。私たちはかっこ良くないと認めた。とても効果のある教え方だった。私たちの誰もそれ以来タバコを吸ったことはない。

世界保健機関によると、タバコは毎年600万人の命を奪い、受動喫煙だけで60万人が亡くなっているという。毎年5月31日は世界タバコ撲滅デーだ。喫煙の賛否を議論するのに良いタイミングだ!

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