「ST」は紙名を新たに「Alpha」として2018年6月29日より新創刊しました。 Alpha以降の全訳はこちら
「ST」は紙名を新たに「Alpha」として2018年6月29日より新創刊しました。 Alpha以降の全訳はこちら

記事全訳

2014年7月18日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

The order of summer (p. 9)

夏に使う言葉の順序

私のアパートに夏は早くやって来た。しかも、うろたえた巨大なゴキブリという形で夏がやって来たのだ。目に入るところで素早く走り回り、戦うか逃げるかという本能のせめぎ合いの中で、驚いて二度見させられる大きな昆虫(ゴキブリのこと)みたいに、日本の夏を知らせるものはほかに類を見ない。

しかし、この特殊な憂うつにも希望の兆しはある。夏に関連する日本語の語彙の練習ができて、新しい単語と漢字を覚えた。6月末ごろ、「殺虫剤」や「害虫駆除剤」、「ゴキブリ用捕獲器」のような語を認識して、店で買い求める方法を覚えなければならなかった。これまでの人生で見たこともない恐ろしくて新しい虫を表す言葉も調べた。何かがどれくらい大きいかを表すさまざまな表現方法も知った。

英語で何かを表すことは、一連の形容詞をただつなげればいいという問題ではない。それでも、言いたいことは伝えられるし、伝わると思うが、最も自然に響くようにするには、形容詞を使う順番が実はある。ときに例外もあるが、順番は通常、意見、大きさと形、年齢、色、生まれや国籍、素材や形式または目的の順だ。だから、単にゴキブリを見たとも言えるし、それは今まで見たことがある中で最も醜く、大きく、黒々とした日本のゴキブリだったとも言える。同じように、殺虫剤の缶の場合、単に缶を探すようなことはしないで、最も効果的で低臭性で日本で作られた缶を求めることができるのだ。

しかし、日本の夏は、はい回る虫だけではない。衣類や電化製品、一般的な商品などの品々が店頭で売り出され、どうやって人を涼しくしてくれるか、さわやかな香りに保ってくれるかが宣伝される。夏に綿を着ることが、冷静さをなくして少し変な臭いがしてくる最短の方法だとを知ったのも、日本でのことだった。軽くて、すぐ乾く、合成繊維の衣類を探さなければならなかった。

形容詞を使う順番は、人の描写にも及ぶ。このことは、夏のビアガーデンで、もう一杯飲んだらぐでんぐでんになるので避けるべきだと思う人物を特定したいときに、特に役に立つかもしれない。例えば、ふらふらした、背の高い、脇の下に盗まれたタヌキを抱えた語学の教師、などだ。とはいえ、夏のビアガーデンでは、筋の通った文章をつなげられる人はいないだろうから、たぶん直接指さすのが最適な方法だ。

猛暑に打ち勝つ一つの方法はそれについて話すこと、しかも頻繁に、と言う人がいる。それでこの夏は、片手で額を拭い、もう片手で風を送りながら、自分で観察したことと感じたことを可能な限り生き生きと表現することに挑戦してみてはどうだろうか。暑さから気をそらしてくれるかもしれない。

Top News
Easy Reading
National News
World News
Business & Tech
This week's OMG!
Essay
  • 夏に使う言葉の順序

サイト内検索

2018年6月29日号    試読・購読   デジタル版
目からウロコの英文ライティング

読者の声投稿フォーム
バックナンバー