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2014年8月22日&29日合併号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Remembering WWI (p. 8)

第一次世界大戦を忘れない

日本の夏は暑くて、湿気が多い。それでも、地元の祭りやビーチへの旅行、高校野球に浴衣姿の女の子たち、アイスクリーム、花火、夏の恋と、夏は素晴らしい季節だ!

しかし、今年の夏は特別だ。なぜかって? なぜなら、第一次世界大戦の勃発から100年を迎えるからだ。最初の世界大戦は1914年に始まり、1918年に終わった。あの戦争は、ヨーロッパを破壊し、一世代に心の傷を負わせ、1600万人を死に至らせたとんでもない悲劇だった。

なぜ私たちは100年前に起こった争いのことを気にしないといけないのだろうか? ずっと昔の戦争が今ここで21世紀を生きる私たちと何の関係があるというのだろうか?

過去が重要なのは、現在を形作っているからだ。もっと良い明日がほしいなら、昨日の出来事が今日にどのような影響を与えているかを理解しなければならない。過去の戦争から学ぶことで、私たちは平和な未来に向けて行動することができる。

第一次世界大戦は、複数の原因で起こった不必要な戦争だった。その原因は、国々を大惨事に向かわせた攻撃的なナショナリズム、領土問題、出費のかさむ軍拡競争、偏見、被害妄想、軍事的な社会、邪悪なリーダー、複雑に絡み合った条約などだ。

1914年8月に戦争が勃発した時、何百万人という若い男性が戦場に送られ、国のために戦い、殺し、殺された。その一人が私の祖父だった。

ハロルド・イニスはカナダの小さな農場で田舎の少年として人生を歩み始めた。政治学や経済学、歴史が好きな探究心を持った賢い若者だった。たくさん勉強し、苦労もし、犠牲も経て、彼はどうにか大学へ進学し、大学の教授になることを夢見ていた。その全ては、第一次世界大戦で変わってしまった。

祖父はドイツと戦うためにフランスに送られた。彼の人生はすぐに、銃と爆弾、恐怖と死、有刺鉄線と毒ガスという、生き地獄になってしまった。現場の兵士として、彼は友人が殺されるところも、仲間がケガをするのも、生き残った人々がボロボロになった身体と打ち砕かれた人生とともに祖国へ送られるところも目にした。

ついに、彼の番が来てしまった。ドイツの爆弾が爆発して彼はひどいケガを負った。驚いたことに、友人は彼を「運の良い奴め! ケガはしたけど、生きているじゃないか。俺たちはここに残って死ななければならないが、君は戦争を去ることができる。うらやましいよ!」と言った。

祖父は病院で8カ月過ごした。傷が癒えるのに7年かかった。しかし、彼の友人は正しかった。彼は運が良かったのだ。ほかの多くの人々が生き残ることができなかったときに、彼は第一次世界大戦を生き残ったのだ。

祖父は残りの人生はずっと、戦争を嫌った―無意味な暴力、罪のない人々の命を奪う破壊行為、友人たちの意味のない死、年のいった男たちが若い男たちを「名誉」と「栄光」のために死ねと送り込む愚かしさ。

戦争の後、祖父は夢を追求して大学教授になった。彼はその後、カナダで有名な学者になった。しかし、戦争の恐怖を忘れることは決してなかった。そして私たちも忘れてはいけない。

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