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2015年5月29日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

A Bloomsday breakfast (p. 9)

ブルームの日の朝食

1904年6月16日はたぶん、イギリス文学で最も有名な日で、その最も有名な朝食で始まる(その朝食についてさらに詳しくはもう少し後で書いている)。

その日は、ジェームズ・ジョイスの『ユリシーズ』の物語が起こった日だ。ダブリンでは毎年この日を祝ってブルームの日の文学祭が開かれる。ブルームの日はその小説の中心人物レオポルド・ブルームにちなんで名付けられた。

ジェームズ・ジョイスは、アイルランドで最も偉大な著作家と思われているが、興味深いことに、アイルランドのノーベル文学賞受賞者4名には入っていない。しかし、東京のダブリナーズ・チェーンを含め、世界中のアイリッシュパブの名前がジョイスと彼の作品にちなんで名付けられている。そして恐らくジョイスは、このような人気の方が、ノーベル賞をとるよりもうれしいだろう。彼の作品はあまりにも難しくて、ほとんど誰も読む忍耐力がないくらいだから。それでも、ウィリアム・フォークナーから村上春樹に至るまであらゆる人の著作にジョイスの痕跡があり、彼は20世紀で最も影響力のある著作家の1人だと考えられている。

ジョイスがノーベル賞を取らなかった理由の一つは、『ユリシーズ』の性的な内容がものすごいスキャンダルを起こしたという事実かもしれない。その本はアメリカで禁止になり、アメリカの郵便局はこの本を焼却処分した。英文学の伊東栄志郎岩手大学教授は、検閲による問題で、『ユリシーズ』は、アメリカやアイルランドの多くの人々が英語で読む機会を得る前の1930年代に、日本語に3回翻訳されることになったと指摘している。

日本は1904年にロシアと戦っていた戦争の中で『ユリシーズ』に取り上げられている。登場人物の1人がこう言う。「ロシア人は、日本人にとっては8時ちょうどの朝飯でしかないさ」。

これは、難しくない挑戦である何かを意味する表現の変形だ。「管理側は労働者を朝飯に食べようとしている(簡単に打ち負かそうとしている)」と言えば、それは労働争議について1つしか結果を予想していないという意味になる。

しかし、レオポルド・ブルームは1904年6月16日の朝食に何を食べ、ダブリンを訪れた人々はブルームの日に何を期待できるだろうか?

その小説では、ブルーム氏は朝食に臓物―腎臓、肝臓、心臓などの内蔵―を夢見ていたが、肉屋から豚の腎臓だけを持って戻ってきて、「かすかな尿の香りのいい風味」を気に入ったと書いている。気持ち悪い、ですよね?

たぶん、イカとカニみそと梅干しという旅館の朝食をとる人々にとってはこれは問題でないかもしれないが、多くの人はブルームの日の朝食はちょっとキツイだろう。

ホテルではたいてい、ブルームの日の腎臓をヒツジか鳥の肝臓と一緒に出している―もちろん、ブラック・プディング(ソーセージの一種)も出てくる。ブラック・プディングはデザートではなく、玉ねぎ、オートミール、大量の豚の血で作った分厚いソーセージだ。さあ、召し上がれ。楽しいブルームの日を!

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