農業をしている友人が最近、彼が農場内を歩いていて遭遇した見た目の変わった鳥について話してくれた。両横がシマウマのように白黒で、頭と首は赤褐色、頭のてっぺんには派手なとさかを冠していたという。
ジェームズは暮らしのほとんどを大自然の中で過ごしているが、このようなものは以前に見たことがなかった。この予期せぬ来客はヤツガシラで、アフリカと地中海に原生する鳥だ。名前の由来は、カッコウなどの擬音語に由来する種のように、鳴き声からつけられた。
私はカナリア諸島の1つ、ランサローテ島で1度ヤツガシラを見たことがある。ヤツガシラは簡単には忘れない。派手なとさかのおかげで、その鳥は、リオのカーニバルのダンサーのように見える。だから、ジェームズが家のそんなに近くで珍しくそれを見たと私に話してくれたとき、私は少しうらやましかった。
私は少年時代、鳥類学者のようなものだっただけに、一層そうだった。それは1980年代のこと、ファミコンも、携帯電話も、インターネットも現れる前のことだった。私が少年だったとき、アイルランドの田舎にはすることがほとんどなくて、野原を何時間も散歩していて遭遇した最もありきたりの鳥について細かいメモを作っていた。ぞんざいなスケッチの横に本物の専門家のようにラテン語で“Corvus frugilegus”(ミヤマガラス)とメモをつけていた。「カラス。色:黒。性別:不明。特異な行動:なし」のように、皮肉と退屈に負けたときは書き添えた。
しかし、私のノートに登場した鳥のいくつかを一目見るためなら、今ならなんでもする。アオカワラヒワ、チョウゲンボウ、シギは今では絶滅危惧種の鳥となってしまった。
原生種の鳥のいくつかが、私の生まれ育った田舎からほとんど姿を消したようだが、一方で、ヤツガシラのような南方からの予期せぬ来客を受けることが多くなっている。
ユリウス・カエサルとローマ人たちは、アイルランドをヒベルニア―冬の土地―と呼び、わざわざ侵攻するには寒過ぎる場所だと考えていた。しかし、ヤツガシラは明らかに、ここは十分に温暖だと思ったようだ―そして、このことを私は心配している。
自然は適応できるところに適応し、科学者たちは動物たちが気候変動に対処しようとして北へまたは高度の高いところへ移動しているケースを報告している。オオカミはアイルランドと日本ではずっと昔に狩猟により絶滅したが、地球温暖化は人類の生態系破壊を、今までにないレベルにまで引き上げている。科学者の多くが今の時代を第6次絶滅期と呼ぶほどだ。第5次絶滅期は6500万年前の恐竜時代の終わりのことだ。
ヤツガシラは美しいが、たぶん、アイルランドではヤツガシラを見ないのが一番だろう。恐れているのは、ヤツガシラが、ちょうど恐竜と同じように、忘却への道の途中にあるのかもしれないということだ。だが今回は、悲劇は人類が作ったものなのだ。