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2015年7月17日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Everyone's a sport (p. 9)

誰でもスポーツマン

シンガポールは、さまざまなことで知られているが、運動での優れた能力はそのなかに入っていない。

しかし最近、6月5日から16日まで開催された第28回東南アジア競技大会が開かれ、私たちの小さな都市国家に素晴らしい瞬間が何度かあった。

シンガポールは、これまでも東南アジア競技大会で最高のパフォーマンスをしてきて、金メダルは84個、銀メダル73個、銅メダル102個を獲得している。メダルの数では、タイの金メダル95個に次いで2番目になった。

シンガポールのスター水泳選手、ジョセフ・スクーリング選手は、記録を破る泳ぎで感動を与えた。大会に9回出場して9個金メダルを獲得し、33年間破られたことのなかった国内記録を含め、あらゆる競技で記録を破った。

こうした輝かしい瞬間は、祝う価値があるが、私と多くの友人が最も鼓舞されたのは、メダルをとらない選手だった。

マラソンのアシュリー・リウ選手は、42キロのレース中に50メートルリードしていた。彼は、競争相手たちが誤ったルートを進んでいることに気付いた。

先頭を突き進むのではなく、リウ選手は、速度を落として、競争相手が追いつくのを待った。地元の新聞「トゥデイ」のインタビューで、彼は「この状況を利用してもいい気分になれる気がしなかった」と語った。

彼は、仲間のソー・ルイ・ヨン選手が以前に似たことをしたのを思い出した。リウ選手は、シンガポールで開かれた2011年のアーミー・ハーフマラソンで転倒し、ソー選手が彼を待っていてくれたのだ。

リウ選手は、「メダルのことばかりがいつも大事とは限らなくて、その間にすることも大事だ」と語った。

メダルはないが、私たちは本当のスポーツマンシップを目にした。

スポーツマンシップを示すのは、選手だけではない。最近あった2018年ワールドカップ予選でのシンガポール対日本戦でのように、ファンや観客にもスポーツマンシップは見られる。衝撃的な結果で、シンガポールは日本に対し、0対0の同点だった。

日本のツイッターの世界では、多くの人々がシンガポールのゴールキーパー、イズワン・マーバッド選手をほめていた。埼玉スタジアムでのにぎやかな群衆からのプレッシャーにも関わらず、彼は全部で18セーブを果たした。

日本のファンたちは、一選手の優れたパフォーマンスを認め、その選手が自分たちの国と敵対してプレーしていたこともお構いなしに、丁重な称賛をして、スポーツマンシップを示した。

スポーツは勝つことだけではない、そうではないだろうか?

記録や勝利、奇跡を祝うのと同じくらい、もしかするとそれ以上に、私たちの心を動かすのは、人間の精神の尊厳だ。それは、国境も、文化的な境界線も越える。というのも、最善を追求するなかで、私たちは同じ高揚感や失望、同じ笑いや涙、同じ夢や希望を味わうからだ。

オリンピックのモットー“Citius, altius, fortius”(もっと速く、高く、強く)が思い浮かぶ。強さとは、確かに身体的な強さだけではなく、精神的な強さと、本当のスポーツマンシップを私たちが認めることにも関わっている。

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