日本の田舎で過ごした2年の間、アメリカ人の友人と私とでよく話したのは、どんな和食以外のレストランをこの町に魔法でつくって出現させたいかが主だった。「あのアパートの隣の空き地にメキシコ料理店をつくれるし、電器屋の近くにハンバーガー屋を建てられるよ」。
こうした一連の空想は、特に辺ぴで小さなところに住んでいるとときどき起こる退屈に触発されていた。それでも、私たち2人にとって、共通の母国の食べ物がいまや簡単に入手できなくなってしまったことに耐えるための方法だったとも思う。もちろん、今や私たちはおいしい和食に囲まれているが、ときどき大きなアメリカンバーガーやテックスメックスのブリトーが食べたくなるものだ。
今私は東京に住んでいて、東京は日本のどこよりも国際的な食事の選択肢を誇る。過去1年に、人気の食べ物の選択肢の新しい波がこの地に出現した。今年の春、アメリカのファストフード店タコベルが渋谷に店舗を構え、国外に住むアメリカ人の心を踊らせた。
それでもタコベルは、アメリカでは最も安いがおいしいとは言えない食べ物と考えられていて、この首都(東京のこと)の食事の背景への変化には例外だったかもしれない。今年開店したレストランのもう一つの波は、マグノリアベーカリーやルークスロブスターなどニューヨークのしゃれたレストランだ。アメリカで人気を高めている「ファストカジュアル」の店の進出も相次いだ。ファストフードのレストランがスピードと低価格を強調する一方で、ファストカジュアルは、食べ物はすぐに出てくるが、高級でより高い値段のものを提供している。
最近、お腹の空いている消費者たちがもっと早くてカジュアルな店を選ぶようになり、マクドナルドやバーガーキングのような昔ながらのファストフードチェーンは、アメリカで事業が低迷している。日本でも同じことが起こっているようで、マクドナルド・ジャパンは、食に関するさまざまなスキャンダルの後に売上が急落し、フレッシュネスバーガーやモスバーガーなどの日本のチェーン店が特別でより高級な店舗をアメリカのファストカジュアルを真似して東京にオープンしている。
最近あった最大の進出は、明治神宮外苑の公園でこの11月に、愛されるニューヨーカーのハンバーガー店シェイクシャックが日本の第1号店を11月13日にオープンしたことだ。これはファストカジュアルの考え方を行動に移した好例の1つだ―マディソン・スクエア・ガーデンの近くで1店舗から始まったが、今では世界中に店舗を誇っている。
東京が、特にアメリカからやってきたファストカジュアルレストランを受け入れることで、結果として、新年にむけてアメリカの味が恋しくなる人々にとってより品質の良い食事の選択肢を提供するすべにつながった。私はこうした場所でいつでも食べたいというわけではないが、懐かしい気持ちが起こり始めたときに頼りになる場所がいくつかあるとうれしい。